学生の“内定辞退率”を企業に提供したら何がどう問題なの?と思ったときに読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが、学生の求人閲覧情報などの個人情報をベースにAIを活用して内定後の辞退率を予測したデータを企業に提供していたことが発覚し、波紋を呼んでいます。

【参考リンク】リクナビ「内定辞退率」提供、人事は「のどから手が出るほどほしい」


学生への説明が十分ではなかったと個人情報保護委員会から指摘されたため現在はサービス休止となっています。※

同意を得ずにサービス利用者の個人情報を一方の利用者である企業に有償で提供することは論外ですが、本件は日本の就活市場を象徴するような出来事だというのが筆者の率直な印象です。

また、そこに目をつけて有償サービス化しちゃうリクルートは本当に商売上手だなと思います。というわけで、今回は内定辞退率サービスから見えてくる就活の裏側についてまとめておきましょう。


実は双方にメリットのある内定辞退率サービス

人手不足による売り手市場の過熱化により、内定辞退問題は企業にとって頭痛の種となっています。

「人気業種で業界首位の大企業」なんかだと辞退なんて下々の問題にすぎないかもしれません。でも大手であっても業界5番手以降なら辞退で内定者3割減なんて普通ですし、無名の新興企業や中小企業なら内定者の8割辞退なんてことも珍しくない状況です。

といって内定を乱発しすぎても内定取り消しなんて普通は出来ない(やったらニュースになってバッシング発生)ので、そうした企業の採用責任者は頭がハゲるほどに懊悩することになります。

ほとんどの企業の採用責任者は、こう思っています。

「応募者が内定辞退する確率がわかりさえすればこんなに悩まずに済むのに!」

はっきり言ってこのリクルートのサービス、精度が上がってある程度辞退率が見えるようになったら、ほとんどの日本企業が導入すると思いますね。それくらい就活においては企業の方が学生より力関係が弱いんです。

学生は入社するまでいつでも辞退可能な一方で、企業は内定後は入社させて65歳まで面倒見ないといけないという変則的な契約関係ですから。

「でもそんなことしたら学生が困るだろ!」と思う人もいるかもしれません。結論から言えば、辞退率が数値化されることで学生も企業の側も誰も困りません。なぜかというと、“辞退”という無駄な工程が減ることで全体の生産性が上がるからです。

たとえば、超優秀なAさんとまあまあ優秀なBさんがある企業の枠1名の選考を受け、ともに「御社が第一志望です」と申告したとします。普通の採用担当なら迷わずAさんに内定を出し、Bさんにはお祈りメールを送ることでしょう。

ただし、Aさんが内定を辞退した場合、企業は採用活動を延長してあらたな求職者を集めねばなりません。おそらく採用できたとしてもAさんどころかBさんレベルの人材確保も難しいはずです。

もし最初から「超優秀なAさんに内定辞退率90%」「普通に優秀なBさんに内定辞退率10%」という数字がついていたらどうでしょうか。筆者の感覚ではほとんどの企業は最初からBさんに内定を出すと思います。

Bさんはめでたく第一志望の会社に入社でき、企業は辞退を防いで採用担当はさくっと秋休みが取れ、双方ハッピーな結果となるわけです。

Aさんですか?内定辞退率90%のAさんにとって最初からこの会社は肩慣らし程度の存在だったわけで落とされても屁とも思っちゃいないでしょう。「第一志望です」って言わないと内定がもらえないルールなので仕方なくそういっただけで、本音では第6志望くらいだったはずです。

AIを活用したスコアリングは金融機関の融資などで既に実用化されていますし、HR分野でも従業員の配置や離職抑制で導入が始まっています。それで「個人情報が悪用されて不利益を被った!」なんて騒いでいる人はいませんよね?

内定辞退率予測も同じことで、今まで人事の職人が予想していたのをAIに任せるというだけの話です、個人的には“内定辞退率”という名前がファンキーすぎただけで、“入社確率”とかにしとけば問題視されなかったのでは?と感じています。

まとめると、現状の日本の就活においてはルールによる縛りの多い企業側に内定辞退率への強いニーズが存在し、そしてそれは言うほど悪いものでもないということになります。

むしろ社会としては、

・新卒採用がその後の人生を左右するような重要すぎるイベントになっている
・(学生も企業も)嘘ついてでもその場をしのいじゃったもの勝ち
・“第一志望”以外を口にできない硬直した選考


という構造的な課題に目を向けるべきなんじゃないでしょうか、というのが筆者のスタンスです。

※8月5日付報道でサービス廃止を決定したとのこと





以降、
そもそも受ける会社すべてでなんで第一志望と言わないとダメなのか
「御社は第二志望です」と言えるビジネスパーソンに






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Q:「大変そうですがそれでも管理職になるべきでしょうか?」
→A:「なっておいた方が後で転職するにしても選択肢が増えます」



Q:「大手からベンチャーへの転職で注意すべきことは?」
→A:「情熱をもって働くことです」



Q:「もし山本太郎のブレーンになったら何を提言しますか?」
→A:「ズバリ、金銭解雇の導入です」






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派遣社員の時給ってどうして正社員より低いの?と思った時に読む話

厚労省が、派遣労働者の時給を勤続年数に応じて引き上げさせることを指針としてまとめたようです。

【参考リンク】派遣社員、3年勤務なら時給3割上げ 厚労省が指針

そもそも“同一労働同一賃金”というのは担当する業務グレードで時給を決める仕組みなわけでそこに勤続年数の入ってくる余地はないんですが、厚労省の中の人が何を考えているのか筆者にはさっぱり理解不能ですね。

【参考リンク】派遣賃金「勤続3年で3割増」がむしろ労働市場改革に逆行する理由

そもそも、なぜ派遣労働者をはじめとする非正規雇用の時給は正社員より著しく低いのでしょうか。普通に市場メカニズムが働いていれば、クビになるリスクの高い非正規雇用労働者の方が時給が高くなるというロジックも成立するはずです。

というわけで今回は正規と非正規の時給のメカニズムについてまとめておきましょう。

法律でがちがちに規制された結果

現在、派遣労働者は3年を超えて一つの職場で働くことは出来ません。引き続き同じ職場で働くには派遣先が直接雇用に切り替えるしかありません(派遣元で無期雇用されている人は除く)。

また、民主党政権下で成立した有期雇用5年ルールという滅茶苦茶な法律のせいで、その他の有期雇用労働者も5年経過して労働者が申し入れれば企業は無期雇用に転換することが求められます。

直接雇用や無期雇用にすると解雇のハードルはとんでもなく上がってしまうので、やむを得ず多くの企業では派遣さんやその他の非正規雇用の人を3年や5年で雇止めにしたり別の部署に移したりしてぐるぐる回しています。

余談ですが、最近5年ルールで非正規雇用の人達が日本中で切られまくってるというニュースがたまに出ますけど、なぜか今の政府のせいにされてたり法律守らない企業が悪だみたいな論調になってたりするんですが、はっきり言いますが犯人は民主党政権ですから。

共産党もバリバリに推進した悪法のせいで被害が拡大しているのに、他人ごとのように報じる赤旗はさすが貧困ビジネスの老舗という感じです。

【参考リンク】独立行政法人 5年働いても 無期転換9400人ない恐れ

一方、正社員については原則として65歳までよほどのことが無い限り雇わねばならないという超長期の雇用期間が設定されています。

さて、仮にあなたがある企業の事業責任者だったとします。会社にノウハウを残したいような重要な仕事、付加価値の高い仕事を誰に任せるでしょうか。ほとんどの人は「ずっと会社にいてくれる正社員」を選択するはずです。

そして、そのアシスタント的なサポート業務や、マニュアル化して誰でもすぐに引き継げそうな付加価値の高くない作業は、数年で人の入れ替わる非正規雇用に任せるでしょう。

jikyu














これが、正社員と(派遣をはじめとする)非正規雇用の賃金格差が大きな理由です。ですから賃金格差を本気で是正しようと思うのなら、正社員の解雇規制緩和と派遣を含む非正規雇用の雇用期間の上限を撤廃すべきでしょう。

そうすれば雇用形態にかかわりなく、やる気と能力のある人にはよりグレードの高い仕事が割り当てられ、どんどんリスクをとってチャレンジする人の時給がそうでない人を上回ることでしょう。

たまにプログラマー等の技術系の派遣社員で年収が1千万円超の人がいますが、あれは正社員として高い専門性を身に着けつつ2番へ自主的に移動したタイプの人材ですね。専門性さえ身に着けるチャンスがあれば、ちゃんとリスクに応じたリターンが上乗せされて正社員より高い報酬を受け取れるわけです。

【参考リンク】ハケンの「別格」 年収1000万円も

非正規雇用の上限を撤廃するだけでも、同様に非正規雇用キャリアで専門性を身に着けて2番に昇格する人が増えるはずです。

まとめると、「付加価値の高い役割を優先的に与えられる正社員」と「付加価値の低いサポート的な役割しか与えられない非正規雇用」という具合に規制によって分割されていることが、両者の賃金格差の本質的な原因ということです。

そういう市場メカニズムを無視して政府が「3年で3割賃上げね」と言うだけでは、雇止めする企業がさらに拡大し、正社員と非正規雇用の格差がより固定化されるだけでしょう。

って、まさか最初からそれが狙いじゃないですよね厚労省さん?(苦笑)






以降、
正社員の2極化が始まった
「新時代の日本的経営」が予測していなかったこと






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Q:「残業を減らしたら『残業できないなら辞めます』という社員がいます」
→A:「減った残業代は還元すると理解させることが重要です」



Q:「技術系から人材開発はアリですか?」
→A:「超オススメです」



Q:「〇〇〇〇さんてどんな人なんですか?」
→A:「昔はすごい人でしたね」





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「いよいよロボットに仕事が奪われる時代の到来か!」と思った時に読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。昨年のメガバンク各行の万人単位のリストラに端を発するように、大手日本企業の大規模なリストラが続いています。そしてそのほとんどのケースでRPAという業務自動化ツールが活用されており、その存在がにわかに注目されているようです。

【参考リンク】三井住友FG、業務削減量を上乗せ 5千人弱分に
【参考リンク】損保ジャパン、4000人削減 国内損保、RPA活用進む


筆者自身、「RPAってそんなにすごいものなんですか?」的な質問はよくされます。

結論から言うと、RPA自体は以前からあるありふれたツールであり、あくまでルーチンワークを入力して自動化するだけのものです。AIのように判断能力があったりディープラーニングで新たなものを生み出すようなものではありません。

今回のリストラ大流行の背景に何があるのか。従来のそれとは何が違うのか。いい機会なのでまとめておきましょう。


企業に一連の大リストラを決断させたもの

今回のリストラの背景には、企業内で“働かないオジサン”が増加しすぎたことが理由としてあります。これは以前も述べた通りですね。

【参考リンク】どうしてオジサンたちはやる気無いの?と思った時に読む話

終身雇用制度は、年々組織が成長して(=ポストが増えて)かつ、定年が55歳という前提で設計された制度です。組織が大きくなるどころかスリム化するのが当たり前の時代になり、年金の都合で実質的な定年が65歳に延長されるなんて、制度設計した人たちは夢想だにしてなかったはずです。

当然、組織内にはいろいろな歪みが生じます。その最たるものが“働かないオジサン”問題です。

40前半で幹部選抜を終えて一生ヒラが確定した従業員は、その後の20年以上を消化試合モードで過ごすことになります。そして、50代前半で役職離任した元・管理職もそこに合流し、働かないオジサンは今や社内の一大勢力となりつつあるのです。

既に大卒総合職の過半数がヒラのままというデータもあるので、下手をすると社員の半数近くがその予備軍であるともいえます。こうなると彼らの面倒を見る余裕は、もはや企業にはありません。

と書くと、たぶんこんな疑問を持つ人もいるでしょう。

「だったら、65歳への段階的な引き上げが始まった2013年前後からリストラを進めなければいけなかったはず。企業はこれまで何をしていたの?」

実は、日本企業の多くは65歳に雇用が延長されてもなんとかなるんじゃないかと甘く見ていた節があります。というのも、従来の役職に就けなかったオジサンたちは一生懸命に頑張る人ばかりだったからです。たとえば、

「あの人はヒラだけど地力は凄い」
「部長と同期らしいから困ったときにはあの人に頼もう。ぺこぺこするだけの課長よりよほど頼りになる」

みたいなポジションを得るために必死に努力していたわけです。でも、それは職場にそうしたオジサンが独りぼっちだった古き良き時代の話。

職場に2人も3人も出現するようになると、オジサンたちは開き直るんですね。職場全体が残業している中さっさと飲みに行ったりするなんていうのは可愛い方で、仕事を振られると「お断りします」と公然と(年下の)上司に反抗する人もいると聞きます。

まとめると、一定数を超えた働かないオジサンが現状に甘んじるようになったことが、企業に重い腰をあげさせた最大の動機だということです。RPAはあくまでもその補助的なツールとして使われているだけであり、そんなものが無かったとしても企業は何らかの形で同じアプローチを実施したでしょう。





以降、
従来の配置転換と何がどう違うのか
働かないオジサンを待ち受ける過酷な現実






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Q:「終身雇用制度の始まりと終わりは共に人手不足がカギにみえます」
→A:「今はどちらかというと双方にメリットがなくなった感じです」



Q:「重箱の隅をつつくのは日本企業の弱点?」
→A:「重箱の隅をつついてると仕事してる気になるんですよ」



Q:「サラリーマンがリターンマッチできる時代は来るでしょうか?」
→A:「好きな仕事に挑戦する人が増えれば社会はもっとよくなるでしょう」






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山本太郎って何が凄いの?と思った時に読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。各種調査によると、2019年の参院選東京選挙区ではやばやと山本太郎に当確サインが出ているようです。寄付金も1億6千万円ほど集まっており、3億円突破は時間の問題だろうとのこと。

【参考リンク】来月の参院選、山本太郎議員が“台風の目”に…各党がその動向に戦々恐々の理由
【参考リンク】参院選東京の順位予測 3位吉良氏2位山口氏、音喜多氏は?

組織票のない議員一人の政治団体でこれはちょっとした社会的現象と言っていいでしょう。いったい氏の何が評価されているのか。そして、そもそも誰が氏を必要としているのか。いい機会なのでまとめておきましょう。

山本太郎が流行るわけ

その前に、ちょっとだけ日本の社会情勢のおさらいをしてみたいと思います。今から10年ほど前に筆者自身も参加するワカモノマニフェスト作成委員会の有志で「仮に、現在の社会保障制度を今後も維持し続けるとして、そのために消費税はいくら必要か」を試算したところ、30%という数字が出ました。その前後に複数の研究者やシンクタンクも似たような数字を出しているので、今でも割と正確な数字だと考えています。

【参考リンク】消費税は30%引き上げが望ましい

この数字は震災前のものであり、当時はまだ子供手当もなかったため、現在の数字はもっと厳しいものになっているはず。また引き上げを1年遅らせるだけで必要な消費税が0.8%上がるという試算もあります。現在は「少なくとも30%」くらいの認識が必要でしょう。

「いい加減にしろ!そんな払えるわけないだろ!」という声が聞こえてきそうですが、筆者もそんなに払えるとは思えません。なので、実際にはこんな感じで社会保障カットが順次行われるはずです。

【参考リンク】参院選後に「年金受給68歳引き上げ」本格議論へ 生活費不足分は3000万円に


高齢者が今もらっている年金を取り上げると暴動が起きそうですけど、何十年か先に1千万円減らすからねと言われても実感ないから現役世代はデモ一つ起こさないわけです。ほんと、上手いとこついてくるなと感心します。

上記のように年金支給開始68歳引き上げで団塊ジュニアは老後2千万円の年金不足に追加でさらに1千万円ほど不足が積み上がり、マクロ経済スライドでさらに2千万円ほど減るので年金だけでトータル5千万円不足する状況になるわけです。年金だけでこれだけ目減りするわけですから、医療や介護も含めると頭がくらくらしてきます。

余談ですが、高齢者の社会保障を少しくらいカットしろ、なんていうと「高齢者に死ねというのか!」なんて脊髄反射してくるバカが結構多いんですけど、彼らの言うところの「高齢者の取り分をちょっとでも削ると死ぬ理論」に従うなら年金だけで今より数千万円削られている団塊ジュニア以降の世代は絶滅確定ですね(苦笑)


まあそんな具合に、消費税引き上げと社会保障カットを組み合わせて「消費税30%分の負担」をこれから日本社会はしていくことはもはや確定事項なわけです。恐らく最後は消費税20%前後で社会保険料がもう少し上がって、不足分は給付カットという感じではないでしょうか。

あ、それとたまに「実質賃金が下がって生活が苦しくなったから安倍政権は悪政だ」みたいなことをおっしゃる方がいますが、アホですね。民主党政権は(実質的なサラリーマン税である)社会保険料と消費税の引き上げで対処しましたが、安倍政権はそこに物価上昇によるインフレ税をミックスさせただけの話です。

【参考リンク】2018年度の一般会計税収60.4兆円、バブル期超え最高に


物価上昇による税収増がなければ別の形で国民が負担していただけです。はっきりいって立民だろうが共産党だろうがどこが政権とってもこの流れは変わりません。国民の負担は年々上がり続けます。アンチビジネスで雇用流出させてないだけ安倍政権の方がよっぽどマシでしょう。

処方箋ですか?それはただ一つ、自分で稼ぐことです。高い成果を上げ続けて同僚の2倍のボーナスをもらい続ける。今いる会社がそういう人事制度のない年功序列企業なら、完全実力主義の会社に転職する。そうやって国に取られる以上に稼ぎ出せる人だけが、従来以上の暮らしを享受できるでしょう。

でも、みんながそうできるわけではありません。むしろそうやってがんがん稼げる人は少数派でしょう。出来ない人にとっては、状況はけっこうしんどいと思います。年々負担だけが増え続ける一方で、自分には一切メリットはないからです。

増え続ける負担は現行の社会保障を回す燃料として消費されるだけ。挙句に将来自分が受け取る社会保障は今よりずっと低いわけですから。絶望的な状況と言ってもいいでしょう。

そんな状況で、こんな声が聞こえてきたらどうなるか。

「自国通貨建ての国債はいくら刷っても大丈夫。消費税は引き上げじゃなくて引き下げか廃止!どんどん借金してみんな豊かに!」

たとえそんなこと言ってるのが昔パンツ一丁でメロリンキューと叫んでいた男だとしても、マトモな経済学者は全員反対してるとしても、人間というものはそこにわずかでも希望があるならすがりつく生き物です。「見たいものしか見えない人」というのは、他に希望のない可哀想な人でもあるのです。これが山本太郎旋風の正体でしょう。

実は、10年以上前から似たようなバラマキ主義者は普通に存在していました。「政府の借金は国民の資産」という珍フレーズや(政府にくわえて企業、個人まで全部ぶちこんだ謎の)“日本国のバランスシート”なるものを作ってバラ色の未来をアピールする面々です。

でも、彼らはいずれもネットの一部の界隈で影響力を持つだけであり、実社会では少数の情報弱者に本を売りつけて小銭を巻き上げるだけの存在でした。

むろん、山本本人の努力や能力も影響力に関係あるでしょう。とりわけ役者としての地力は街頭演説でフルに発揮されているように見えます。でも、やはり社会全体に蔓延しはじめた閉塞感こそ、彼を押し上げている原動力だと筆者は考えています。

最近、山本太郎を初期のヒトラーに似ているという人をちらほら見かけます。演説が上手く、大衆受けするバラマキ政策をひっさげてすい星のごとく現れた点などがそう見えるようです。

ただ、筆者はどちらかというと、戦間期のドイツと現在の日本社会の方に共通点を多く感じています。第一次大戦後のドイツは天文学的な賠償金の負担に苦しみ、多くの人々が希望を失った状態でした。いくら負担しても負担しても、それは外国への支払いに充てられ、自分の生活はまったく向上しないわけです。

年々重くなる負担に苦しみつつも、それは上の世代の給付に消費され恩恵の感じられない日本の状況と通じるものがありますね。





以降、
政策をよく見るとわかる太郎のポジション
山本太郎は内閣総理大臣の夢を見るか






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Q:「小さな企業で職務給化は可能でしょうか?」
→A:「とりあえず管理職のマネジメントを見直すだけでも効果大です」



Q:「障がい者もリストラ対象に?」
→A:「法定雇用率が決められているので普通はないでしょう」



Q:「仕事に対するモチベーションを保つには?」
→A:「プロになることです」





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カネカ転勤問題はなぜバズったの?と思った時に読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。先日、大手化学メーカー・カネカの男性従業員が、育休明け早々に転勤を命じられ、やむを得ず退職に至ったという話が公となり、ネット上でちょっとした炎上騒ぎになっています。

【参考リンク】「育休復帰、即転勤」で炎上、カネカ元社員と妻を直撃


この手の話は双方の言い分をしっかり聞かないと何とも言えないのでどっちがどうだと言うつもりはありませんが、それにしても今という時代を象徴するような出来事だと筆者は痛感しましたね。本件は単なる転勤ネタだけではなく、いろいろな論点が含まれています。

というわけで今回はカネカ転勤問題についてまとめておきましょう。


バズった3つの理由

以前も述べたように、転勤制度というのは余剰人員を人手不足の事業所に回すことで雇用を維持させる“民間版ハローワーク”みたいなもので、終身雇用を維持するためには不可欠なツールです。

だから「会社の転勤命令に従わなかったら解雇OK」という判例もあるし、労組も転勤を嫌がる組合員には逆に説教するくらいです。

基本的に全従業員が対象となりますが、所帯持ちでなかなか辞められない従業員がよく狙われます。昔から「ローン組んでマイホーム買ったらすぐに転勤になった」という話がありますが、あれなんか典型ですね。

近年はそうした個人事情を考慮してくれる会社も増えていますが、「個別対応すると前例になるので一切考慮しない」という頑固な会社もまだまだあります。カネカはたぶん後者だったんでしょう。

さて、ここまではよくある話ですが、本件には以下3つの要素が加わることで炎上案件となりました。


1.よりによって育休取得者だった

現在、政府は2020年の男性育休取得率目標13%を掲げ、企業に猛烈にはっぱを欠けている最中です(2018年度は6.16%)。足を引っ張ったら政府に何を言われるかわからないので、大企業はどこも一生懸命に男性従業員の育休取得実績を作ろうと汲々としています。

そういう空気に公然と反旗をひるがえすがごとく、よりによって育休明けしたばかりの従業員を転勤対象にし、結果的に退職に追い込んでしまったというのは管理部門的には最悪のチョンボだと思いますね。対外イメージも最悪です。


2.共働き世帯だった

転勤制度というのは、女性が専業主婦もしくはいつでもさくっと辞められるパート程度の形で働いていることが前提です。夫について全国を回るイメージですね。「専業主婦は社畜の専属家政婦」という言葉すら存在します(上野千鶴子・東大名誉教授談)。しかし、本件の場合は配偶者も他社の正社員であり、転勤についていけなかったことが退職の直接的な理由となりました。

でも、はっきり言っていまどき共働きなんて普通です。旦那一人働くだけで家族全員を養っていけるだけの給料を払い続けられる企業の方が珍しいですから。当然、どの家庭でも一度はこの「転勤になったんだけど、おまえ、仕事どうする?」問題には直面しているはず。

つまり、幅広く問題意識が共有され、共感も得られる土壌が既に存在していたわけです。


3.SNSで愚痴った

とはいえ、うっかり配偶者が他社で正規雇用されている育休明け間もない従業員を転勤候補に選んでしまったとしても、誰にも知られなければ「あ、そう」で済んだ話です。実際、筆者自身、同じように「会社都合で人生振り回される人たち」は無数に見てきました。

問題は、上記のように可燃性ガス充満状態で、SNS上で不特定多数に向けてつぶやかれてしまったことです。「あるある!ひどいよね転勤制度って!」みたいな形で共感されまくり、まるで多段式ロケットのごとく拡散が加速していく様は、きっとつぶやいたご本人もさぞビックリしたことでしょう。

ご本人的にはたぶん少数の知人に向けて愚痴ったつもりが、気が付けば渋谷のスクランブル交差点に止めた街宣車の上から拡声器で繰り返し告発するような結果になったわけです。ホント恐ろしい時代だと思います。

日本企業は終身雇用という独特の風習を維持し続けた結果、内部には社会常識とかけ離れた“ムラ社会の掟”がいくつも存在してきました。たとえば労基法で定められた労働時間の上限を外し青天井で残業できるようにすること。有給は与えられても全部使っちゃダメなこと。そして、辞令一枚で全国転勤すること(=嫁は家庭に入ってそれを支える側に回ること)等です。

カネカの出したリリースを見ると、全体から「え?なんでダメなの?別に違法じゃないし他の会社も同じようなことやってきたでしょ?」感が全体からにじみ出ているのがわかります。

【参考リンク】当社元社員ご家族によるSNSへの書き込みについて


でも、もうそういう本音と建て前を使い分けるようなやり方は、今後は通用しないでしょう。すでに流動化しはじめている従業員は矛盾に満ちたムラの掟に従うメリットはなく、矛盾はいったん暴かれればSNSを通じて一瞬で炎上してしまうためです。

企業は真正面から、組織内に抱えた矛盾と向き合うしかありません。





以降、
人事部vs事業部の仁義なき戦い
中央集権的人事の限界




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Q:「長期間の育休取得はアリ?」
→A:「本人の仕事との向き合い方次第ですね」



Q:「卒業と同時に就職するメリットは?」
→A:「年功序列だと入社日もそろえないといけないんですよ」






ショートショート「確定申告」





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若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来
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コンサルタント及び執筆。 仕事紹介と日々の雑感。 個別の連絡は以下まで。
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