若者ってなんで変化を求めないの?と思った時に読む話

今週のメルマガの前半部の紹介です。先日放送されたTBSサンデーモーニングで、司会の関口宏氏(73歳)がこんな感じの発言をして話題になりました。

「若者は安定よりも変化を求めるべきではないか」

なんでも、上の世代より政権支持率が高いことに苦言を呈したんだとのこと。ついでに東大の姜尚中センセイ(66歳)もこんなこと言われてます。

「未来に希望がないから、現状にしがみついている」

【参考リンク関口宏 安倍政権の高支持率を支える若者に苦言「変化を求めるべきではないか」】

個人的にはちょっとビックリしましたね。へーそういう見方も世の中にはあるんだなと。筆者はむしろ、現役世代や現政権の方がいろいろ変化させようとしている側であり、上の世代が現状維持しようとしている方だと考えてましたから。ネットで話題になっているということは、同じような違和感をもった人たちが少なからずいた、ということでしょう。

こういう世代間の認識のギャップはなぜ生じるんでしょうか。そして、なぜなんだかんだ言われつつも現政権の支持率はたいして落ちないんでしょうか。


自分たちが保守化したことを認められない老人たち


学生時代に大暴れしたけどすっかり保守化した団塊世代が典型ですが、年を取ると、人は誰でも保守化するものです。まあ保守というと右寄りの人たちとかぶるのでここでは守旧派としましょう。これまでと違う新しいことはやりたがらない、改革や規制緩和といったワードに及び腰、くらいの意味です。特に社会的に地位のある人ほどその傾向は顕著で、既に十分豊かなんだからそれらを失うリスクのあることはやってほしくない、というロジックです。

春頃にBS朝日で報道されたドキュメンタリー「あさま山荘事件 立てこもり犯の告白」で、連合赤軍の生き残りの老人が現在は自民党員やってますとおっしゃられてるのを見た時は椅子から転げ落ちそうなくらい驚きましたけど、中々正直で良いと思いますね。

一方、同じような老人の中でも、中途半端に頭が良かったりする人は、そういう自らの変化がなかなか受け入れられません。では、どうするのか。変に理論武装して「変わったのは自分たちじゃない。社会、なかんずく若い世代の方なんだ」と主張することになります。彼らのひねくりだした代表的な“理論”は以下の3つです。


1. 若者右傾化論

「若い世代はすっかり右傾化してしまい、同じく右翼の安倍政権を支持している。だから彼らの行うあらゆる改革は悪で潰さないといけないのに、若年層が右傾化してしまっているからデモも盛り上がらないのだ」というロジック。

朝日、東京新聞の社会部あたりに一般的にみられる論調で、社民、共産といった野党の基本スタンスですね(最近はなぜか民進党もこっち側に落ちてきましたが)。これなら一連の改革は右翼改革だから反対しても革新のメンツは守れるし、若者から人気なくてもそりゃあいつらが右傾化したからだよ、と言っとけば済むわけです。

ただ、ちょっと冷静に考えればわかるとおり、30歳以下の7割近くが政権支持する理由を“右傾化”の一言で説明するのはいくらなんでも無理があります。実際、田母神さんみたいなホンモノは選挙であっさり落選しちゃうし、百田センセイなんかも大学の講演会から締め出されちゃうわけですし。

そもそも筆者は、安倍政権や(同じく都市部の無党派層の支持率の高かった)小泉政権が右翼という設定に無理があると思います。トランプやルペンといったホンモノのナショナリストに比べたら、TPPも教育無償化も大好きな安倍さんなんてただの中道でしょう。


2. 若者ヘタレ論

そこで最近台頭してきたのが「若年層は草食系でやる気ないから体制に従順なんだ」という若者ヘタレ論です。今回の関口氏の意見も同じ観点に立ったものですね。最近の若いもんはヘタレだからデモもしない、目先の安定にしかこだわらない。だから自分たちの後に続いてくれないんだ、というロジックです。

ただ、現状維持を望んでいるのは彼ら守旧派老人自身であり、目先の安定にしがみついているヘタレがどっちなのかは改めて言うまでもないでしょう。

筆者は安倍政権を優等生扱いするわけではありません。むしろ、経済政策で言うなら、もっとも重要な第三の矢(規制緩和を中心とした構造改革)をほとんど実現できていないため、とても合格点は出せないレベルだと思います。それでも、まったく成長志向でない野党四党に比べればよほどマシなのも事実であり、マイクを向けられた若い世代が「とりあえず今の政権でいい、わざわざ野党に変えたいとは思わない」と答えるのはごく自然な流れでしょう。


3. 下を向いて生きろ論

もう充分お腹いっぱいだよという人もいるでしょうが、まだまだ強烈な論も出現しています。それは一言でいえば“脱成長論”とでも言いましょうか。もう成長の時代じゃないんだから、これからの若い世代は多くを望まずつつましく生きなさい、という論調です。

【参考リンク】平等に貧しくなろう 社会学者・東京大名誉教授 上野千鶴子さん

これはいったい何なんでしょうか。共産主義ですらないですね。本気で「平等に貧しくなる」んだったらそもそも既得権なんか認められる余地ないわけで、徹底した規制緩和と高齢者向け社会保障に大ナタふるって、その上で平等に再分配なり何なりしなきゃならないはず。アベノミクスや小泉改革の10倍くらい過激な改革路線を突き進む以外にないわけですよ。でも、そこは言わない。「ワシらが持ってる分は再分配しない、墓場まで持っていく。お前らは下向いて生きろ」というのが芯にあるメッセージなわけです。筆者は一種の狂気すら感じます。

まとめると、現在の経済政策を巡っては右か左かという対立軸はあんまり意味が無くて、本当の対立軸というのは成長という果実を求めて前進しようとする若い世代と、心地よい現状を維持したいという高齢者の間に存在するということです。後者の中には、一応は自分で保守だリベラルだと名乗ってる人も多いですけど、そういうのは全部ひっくるめて「時計の針を進ませたくない人たち=シルバー主義」とでも思っておいてください。

で、何かことが起こるたびに「冷戦時代のイデオロギー」というカビの生えたふりかけをかけてそれっぽく語る老知識人が群がり、サンモニみたいな化石メディア上で床屋談義してるというのが実情でしょう。




以降、
反体制運動がさっぱり盛り上がらないワケ
本物とシルバー主義者を見分けるシンプルな方法






※詳細はメルマガにて(夜間飛行)







Q:「一日インターンと一か月インターン、就職するならどっちがいいでしょうか?」
→A:「インターンやりたがらない会社というのはおしなべて社風が古いもんです」



Q:「なぜ慶應ってあんなにOB同士のつながりが強いんでしょうか?」
→A:「突き詰めればブランドですね。そしてその源泉は……」






雇用ニュースの深層

・天下りは永遠に不滅です


前川さん辞任なんてどこ吹く風、日本に終身雇用がある限り今日も元気に霞が関の皆さんは天下っておられます。


・大学院拡充しときながら博士号ゼロで教授に天下る文科省

大学院重点化とかやっときながら直近で天下った官僚15人が全員博士号持ってないというギャグみたいな官庁が発覚しました。もう解体して経産省の下請けにした方がいいんじゃないでしょうか。



他。




Q&Aも受付中、登録は以下から。

・夜間飛行(金曜配信予定)





書評「東芝解体 電機メーカーが消える日」








ややタイトルがミスリーディングだが、ちゃんと“勝ち組”企業の三菱電機の事例も取り上げてある。電機各社の浮沈は経済誌などではしばしば取り上げられるネタではあるが、こうして各社ごとにコンパクトにまとめられているのは本書だけだろう。あとがきにもある通り「総合電機版の失敗の本質」と言っていい内容だ。

日本の総合電機には、コンシューマー向け家電に軸足を置く独立系にくわえ、NTTをボスとした通信インフラを担当する電電ファミリー、東電など電力会社をボスとする電力ファミリーの3タイプに分類できる。ソニーやパナソニック、シャープは独立系で、NECや富士通は電電ファミリー、東芝と日立は電力ファミリーに軸足を置きつつ電電も兼ねるという図式だ。

電電ファミリーと電力ファミリーは、90年代までは政府にとって重要な景気調整ツールの一つだった。消費を刺激したいと思えば春闘で賃上げをさせて、その原資は電気代や電話代を引き上げて設備投資という名の栄養補給をしてやればいいからだ。電話料金なんて米国の10倍ともいわれるほど高額化したものの、それで電機産業全体を経済のけん引役に育てたわけだから、日本が「成功した社会主義国」と呼ばれたのも当然だろう。

ただし、このアングルはファミリー内の各電機に深刻な内向き体質を残した。
「新規事業で失敗しても本業にいつでも帰れる」

『偏執狂だけが生き残る』(インテル元CEO)ような国際競争の世界で、こういうスタンスでは生き残ることは難しい。ファミリー各社は半導体やテレビ、液晶といった後発事業で次第に劣勢に追い込まれ、本業の稼ぎでなんとか屋台骨を支える状態になっていった。

だが、本業とていつまでも安泰というわけではなかった。KDDIやソフトバンクとの競争がし烈化する中でNTTは設備投資を激減させ、事故により原発ビジネスは事業そのものが成り立たない事態となった。ITバブル崩壊後、NTTの下請けという祖業に回帰していたNECは15年で時価総額を1/5に減少させ、原発事業の世界展開に社運をかけていた東芝は解体不可避な状況に陥った。

富士通、日立も次の収益の柱が見えないまま足踏み状態。ファミリー系以外の独立系でも、経営判断を誤ったシャープは鴻海傘下となり、パナソニックもまだまだ次の一手が見えない状態。明るい話題が聞こえてくるのは、PS4をプラットフォームとするリカーリングビジネスに光が見えてきたソニーと、総合電機から機械メーカーに生まれ変わった三菱電機の2社くらいだ。

さて、ここからは筆者の雑感。
著者は電機各社の衰退の理由について、ファミリー系電機については国策に甘やかされた点、その他の電機については経営がリスクを取らず、変革のスピードが遅い点を挙げている。米WHという大型買収の後に事故に見舞われた東芝は運が悪かったにしても、確かに筆者も電機産業の衰退には、柔軟に変化を受け入れることのできない体質があるように思う。逆に言えば、だからこそファミリーなるものにしがみついてきたのだろう。

それは、2015年に行われたNECの社長交代の発表会見が象徴しているように思う。

それは奇妙な記者会見であり、東京・三田のNEC本社に集まった多くの記者が首を傾げた。新野に社長の座を譲り、自らは代表権のある会長に就任する遠藤信博が笑顔でこう語ったからだ。
企業で最も大事なことは継続性。自身が作った基盤を引き継いでくれる人に適切なタイミングで渡すことを、トップ自ら示したかった」

隣の新野はニコニコ頷いて聞いている。「こんな体たらくを継続しちゃダメだろう」
それが記者たちの偽らざる感想だった。

質疑応答で記者に「6年間を自己採点すると何点ぐらいですか」と問われた遠藤はためらう様子もなく「60点ですかね」と答えた。NECの株式を長期保有していた株主は、怒り心頭に発したはずだ。遠藤が社長を務めた6年間、NECの企業価値はひたすら落ち続けてきたのだから。



トップがニコニコしながら継続性こそ大事だと言い、社員もそれに黙々と従い、そういうトップに対して株主のガバナンスがきかない現状をぜんぶ変えない限り、なかなかIBMやフィリップスのような大胆な身を切る改革は出来ないのではいか。

加計学園問題って何がどう問題なの?と思った時に読む話

今週のメルマガの前半部の紹介です。
一連の天下り問題で辞任に追い込まれていた前川・前文科省事務次官が「加計学園の獣医学部新設に際し、官邸からの圧力があった」と暴露したことが波紋を呼んでいます。民進党など野党四党は氏の国会喚問を求める構えですが、与党は応じない姿勢を維持しており、籠池問題に続いてまたまた政策論議がおざなりになりそうな雲行きです。

加計学園問題の本質とはいったい何なのでしょうか。そもそも、前川氏はなぜ今になってこの問題をリークしはじめたんでしょうか。個人のキャリアを考える上でも、非常に興味深いケースだと言えるので簡単にまとめておきましょう。


筆者が前川前次官はまったく信用できないと考える理由

実は、加計学園の陰でもう一つ、とってもわかりやすい国家戦略特別区案件が認可されています。今年4月に千葉で開校した国際医療福祉大医学部です。2015年11月に公募開始で17年春にスピード開校、公募なのに手を挙げたのが一校だけ、高級官僚が学長や理事にゴロゴロ天下っているという大変分かりやすい案件です(ちなみに文科省からは2名)。

【参考リンク】天下り官僚が暗躍か 私立医大“特区”認可にデキレース疑惑

余談ですけど、朝日新聞はなぜこっちの案件は報道しないんでしょうかね。人様の命を預かる医学部案件が利権とバーターで認可されている方がよっぽど大問題だと思えるんですが。やっぱり「安倍叩き」につながらないと朝日的にはニュースバリュー無しってことなんでしょうか。それとも、ひょっとして国際医療福祉大の医療ジャーナリズム教授に再就職なさっている大先輩(元朝日新聞論説委員)に“忖度”なさったんでしょうか。※1※2

まあそれはさておき。上記の事実からは、前川氏の人物像は以下のようなものだと推察されます。

「天下りポスト貰えるなら医学部の一つくらいポンと作ってあげるけど、(獣医学部が無くて困った自治体が誘致しようとしている)四国に獣医学部作れっていう上からの圧力は絶対に認められない。正義のために断固戦う!」

書いといてなんですけど、まったくリアリティがないんですよ。ポストという「目に見える利権」と引き換えに認可を使い、さんざん行政を歪めておきながら「官邸からの圧力で行政がゆがめられた」って、この人の言うあるべき行政って何なんでしょうか。天下りポストと獣医師会の既得権だけは守る正義のヒーロー?そんなの正義のヒーローでもなんでもないです。ウルトラマンがリベートもらって特定の組織に便宜図ってたら子供泣くでしょう。

ついでに言うと、例の「出会い系バーにおける貧困の実態調査云々」も筆者は全く信用していませんね。だって、博士号取得してもポストがなく、非常勤講師やらなにやらで食いつないでいる年収300万くらいのポスドクなんてそこら中の大学にいるわけですよ。そういう困ってる人たちを踏み台にして霞が関からパラシュートで学長や教授ポストに高級官僚が降りてくる仕組みを運用してきた人間が「夜の街で貧困女子の実地調査をしていた」なんて言ったって信用できるわけないでしょう。

もっといえば、彼らポスドクを増やしたのは文科省の“ポスドク一万人計画”じゃないんですかね?あのおかげで大学院が拡充されて文科省的には予算も天下り先もずいぶん潤ったはずですが、そういうことへの反省の弁みたいなものはまったく氏からは出てこないわけです。どうも安倍嫌いの人たちは想像力を100倍くらいたくましくしてリアリティの無いヒーロー像を一生懸命前川氏にイメージされているようですが、どう考えても無理があります。いい年なんだから冷静に現実を受け止めましょう。

逆に筆者の頭には、以下のような人物像がリアルに浮かんできます。

「天下りは必要不可欠。なのになんで自分だけ天下りの責任取らされて辞任させられるのか。他の省庁だってみんなやってることなのに。え~い、こうなったら俺をクビにした連中も道連れにしてやる!」

もともと民主党鳩山政権下で最初に(加計学園を想定した)獣医学部新設に関する自治体からの特区申請が「実現に向け検討」とされていたことを考えるなら、(たとえあったとしても)官邸上層部からの圧力なるものは「民主党から引き継いだ例の仕事、なんでサボってるの?早くやらないとダメでしょ」レベルの話でしょう。サラリーマンなら日常的に上から降ってくるレベルのやり取りです。というより、内閣が決めた方針を7年間も放置していた文科省の姿勢こそ問われるべきではないでしょうか。

それを天下り問題発覚で詰め腹切らされたことを逆恨みした前次官が複数のメディアに特ダネとして売り込み、他メディアが二の足を踏む中、安倍批判につなげられると判断した朝日新聞が「志ある正義の官僚」路線に仕立てて記事にした、というのが実情のように筆者には思えますね。


問題の本質は年功序列制度にあり

とはいえ、実は筆者は前次官には同情もしています。いろいろ俯瞰的に眺めると、彼はむしろ被害者なんじゃないかとさえ思えてくるのです。筆者がそう考える理由は2点あります。

1.そもそも、官僚は「限りなく黒に近いグレーな天下り」というバクチを張らないと報われない

官僚の人事制度は極めてオーソドックスな年功序列制度であり、勤続年数に応じて少しずつ職階と賃金が上がっていく仕組みです。ただし、組織はピラミッド型なので、当然、上に行くほどポストの数は減ります。とはいえ毎年下から上がってくる後輩にもポストを分け与えて昇給させてやらねばなりません。そこでどうするか。だいたい45歳くらいから、各省庁お抱えの独立行政法人や大学といった外部ポストにどんどんベテラン官僚をパラシュート降下させていくことになります。これがいわゆる“天下り”と言われるものであり、年功序列制度を維持するために必要不可欠なものなんですね。

キャリア官僚といってもけして給料が良いわけではなく、30歳時点では民間大手に就職した同級生より2~3割くらいは給料が安いのが相場です。また長時間労働も慢性化しており、そのほとんどがサービス残業でもあります。はっきり言えば、45歳以降にそこそこの外部ポストに天下ってようやく割りがあうくらいの報酬システムなんですね。

天下りが限りなく黒に近いグレーな行為だということは前川氏自身もよくわかってはいたでしょうが、だとしても組織の長として、それを止めるわけにはいかなかったのでしょう。現に他の省庁では今でも天下りシステムは機能していますし、今後も文科省含め、足がつかない形でより巧妙に水面下で運用されていくはずです。


2.みんなわかってて、見て見ぬふりをしているだけ

そして、上記のような事情は、ある程度の規模の組織に10年以上勤めている人間なら誰だって理解している事実です。なぜなら、民間企業の多くも年功序列であり、外部ポストにベテラン社員を送り込むことはルーチンとして行っているからです。商社であればグループ企業に、銀行であれば取引先に、大手メーカーなら子会社や下請けに、部長待遇や役員待遇でパラシュート降下させています。

朝日新聞だって朝日新聞出版に、日経新聞だって日経BPや日経新聞出版に経営陣や編集長として送り込んでプロパー社員の担ぐ御輿の上で安定した余生を過ごしているわけです。そういう事実はおくびにも出さず「民意に反する天下り根絶を」なんて社説でしゃーしゃーと説教されることに、多くの官僚は強い不満を抱いています。


【参考】webロンザ 元財務官 榊原英資「公務員改革の愚」より

天下り規制も全くナンセンスです。日本の場合、雇用制度は終身雇用、年功序列が基本。民間企業の場合も官庁の場合も、同期が重役・社長に昇進するにつれ、多くの人たちは関連会社や子会社へ出向していきます。

役所の場合も公社・公団などの独立行政法人に40・50代から転職していきます。役所にとってこうした組織は関連会社であり子会社です。天下りというと何か権力を背景に出向するようですが、実態は関連組織への転職です。

日本的雇用システムのもとでは、人事をスムースに運営するためにはこうした転職は民間でも官庁でもごく自然なことなのです。それを官庁だけ根絶するというのは、現実をまったく無視した暴論です。民間企業で関連会社、子会社への出向を禁止したらどうなるのかを考えれば、答えはおのずから明らかでしょう。




まとめると、“天下り”を必要悪とせざるを得ない現行の年功序列制度こそ、問題の本質なわけです。だから本当に天下りを根絶したかったら「終身雇用と年功序列も廃止しよう」と言うしかないわけです。そういう手間のかかることはやらずに「天下り根絶!」なんて出来もしない建前を掲げさせ続ければ、前川氏のようにすべてを背負ってさらし首にされる責任者は、今後も定期的に発生してしまうでしょう。

なんといっても文科省トップですから、彼の第二のキャリアは華々しいものとなるはずでした。教授や学部長ポストが用意された上で有名校から引く手あまただったはず。年1500万くらい貰いつつ、体の動く間は悠々自適なセカンドキャリアを満喫できたことでしょう。もう人目なんて気にせず、大好きな「貧困女子の実態調査」もやり放題だったはず。でも、それらすべては露と消えました。天下り問題で引責辞任した元次官なんて、まともな大学は怖くて誰も声かけませんから。

「なぜ自分だけが……みんなやっていることなのに……」
もちろん、そんな言い訳が通用しないことは彼が一番よくわかっているはずです。

ただし、何もかも失った氏が、一つだけ起死回生の逆転ホームランを打つ方法がありました。それは“反体制”という魔法の呪文を唱えることです。その呪文を唱えさえすれば、あら不思議、天下り問題発覚後に自分を叩きまくっていた野党のみんなは、反体制のヒーローとして自分を持ち上げてくれます。

【参考リンク】野党4党の議員を大阪府の自宅に迎えた籠池泰典氏

リンク先の写真は一足先に呪文を唱えた籠池センパイですけど、野党四党の代表をバシっとしたがえてなんだか戦隊モノのヒーローみたいですね(横にピンクもいるし)。

4月に「教育行政をつかさどるものとしてはより高い倫理観が求められてしかるべきだ」と厳しく批判していた東京新聞なんて、いきなり「天下り問題で処分されたくらい部下の面倒見がよい」と手のひら返して賞賛してくれてます。

「官邸の圧力で降ろされた」と生放送で放言して鮮烈な陰謀業界デビューを飾った経産OBの古賀さんを超える大物反体制言論人の誕生です。ひょっとしたら民進党公認で次の選挙に出馬→反体制の波に乗って大勝、自身は大臣として文科省に王の帰還、なんてロードマップも思い描いておられるやもしれません。

でも、それは本当に氏が望んだことなんでしょうか。

上記のような陰謀業界にデビューするということは、今後、こういう熱烈な支持者と仲良く手を取り合って残りの人生を生きていくことでもあります。

hyodo























事務次官に上り詰めるほどの人材ですから、氏ほど頭脳明晰な人は官僚でもそうそういません。文部行政の門をたたいた若かりし頃は、きっと志も高かったはず。今、上記のような「地震兵器信者」たちの担ぐ御輿の上で、氏は何を想うのでしょうか。

もちろん本人以外には知りようがありませんけど、清々しているというよりは、鬱々とした気分でいらっしゃるように思うのは筆者だけでしょうか。



※1追記
慰安婦誤報で辞任の「朝日」前社長、大学に再就職 教える“歴史認識”

朝日新聞社の前社長も国際医療福祉大に“再就職”されているとの指摘をいただいたので、“忖度”されているかどうかは分かりませんけど追記しておきます。


※2追記その2

読売新聞からも幹部が2名教授職に再就職されているとの指摘をいただいたので、朝日との公平を期すためにも追記しておきます。



以降、
真の公務員改革とは、官をポストの呪縛から解放し、嫌ならさっさと転職しやすい環境を整備すること
個人が氏のキャリアデザインから学ぶべき教訓








※詳細はメルマガにて(夜間飛行)








Q:「こども保険はどこがどうまずいんでしょうか?」
→A:「たった数百円分すら消費税で取れないんなら本格的な税制改革なんてムリでしょ」



Q:「今期のおススメドラマはなんですか?」
→A:「小さな~とキントリと釣りバカ見てますがおススメは……」



Q:「日本人の仕事に対する熱意ってなぜ低いんでしょうか?」
→A:「要するに自分で選んだ仕事か、上から降ってきた仕事かってことですよ」







雇用ニュースの深層

ユニリーバの新人事制度が示す働き方改革のゴール


某省庁は「夜8時に消灯」なんて空襲対策みたいなことやるそうですが、目指すべき働き方改革のゴールはここです。



新政権のもと10年後退する韓国の労働政策

相手国を無視できない外交と違って国内政策では地が出ます。



AIはエントリーシートの夢を見るか

AIに仕事奪われるなんて遠い世界の話でしょ、と思っていた人事部員もびっくりです。







Q&Aも受付中、登録は以下から。

・夜間飛行(金曜配信予定)








書評「絶望老人」

絶望老人
新郷 由起
宝島社
2017-02-23




タイトルだけ見て、NHKが日曜夜に視聴者を恐怖のどん底に叩き落とした特集「老人漂流社会」を連想する人も多いかと思うが、中身はそこまでハードモード人生なものではない(というか宝島はタイトル釣りすぎ!)。

もちろん一部に絶望気味の人も出ては来るが、大半はどこにでもいるごく普通の老人たちのインタビュー集だ。

余談だが、メディアが老人とか格差社会をテーマに特集を組むときは、たいていとびっきり強烈なインパクトのケースを紹介するものだ。なぜなら、その方が視聴者に受けるから。それが悲惨であればあるほど、視聴者は自らの相対的な豊かさを実感して安心できる。「大変だなあ、可哀想だなあ」と口に出しつつも、心の底では「自分はああはならない」と分かっているから、しばらくすればきれいさっぱり忘れてしまえる。

だから、ああいう格差とか貧困の特集というのは何も解決しないし、何かの参考になるということもない。所詮はエンタメなのだ。

筆者は以前から「普通の老後を迎えた普通の老人に、今、何が起こっているのか」ということに非常に興味があったのだが、本書はそういう意味では最良の一冊と言えるかもしれない。


普通に結婚して子供も巣立った後の老人から、独身のままリタイアして一人暮らしする老人、家族はいるものの自分の意思で縁を切った老人、河川敷でホームレスとして生きる老人など、様々な形態の老人たちが登場し、現在の生活について率直な思いを述べる。

では、経済的余裕さえあれば老後は安泰なのか。
頼れる血縁者のいない高齢者はみな、憐れで、誰もが悲惨な末路を迎えるのか。
(中略)
気が遠くなるほど長く延びた老いの日々を幸福に導くもの、絶望へ追いやるものとは何か。その分岐点と、おいて生きる上で真に必要なものを問うていきたい。


と前書きにもあるように、まず意外なのは経済的余裕があっても必ずしも幸せだとは言い切れない点だ。

たとえば、銀行マンとして現役時代は仕事漬けの日々を送って出世もし、高額の退職金と豪邸を手にリタイアしたものの、妻は早々に病死。なかなか定職に就かない長男夫婦に無心されるうち、結局、退職金も家も処分するはめになった老人もいる。

また、入居一時金が3千万円を超えるような富裕層向けの有料老人ホームに入居すれば何の心配もいらないかというとそうでもない。上げ膳据え膳、栄養管理も投薬もバッチリ管理してもらえる暮らしでは、人間としての様々な能力はむしろ急速に衰えるらしい。

「衰えの進みにくい体づくりのためには人生後半の食生活が最も重要で、それには正しい知識を得た上で、自分でやれるうちは自力で賄うのが一番なのです。というのも『食事を用意する』という行為には、たくさんの高次機能が凝縮されているから。買い物に出かければ歩くし、店先に並んだ旬の食材を目にして季節を感じることもできる。(中略)様々な機能はいつも使っていれば衰えにくく、適度な負荷をかけることで老いの抑制につながるのです」
(人間総合科学大教授・熊谷修氏)


逆に、河川敷に気の合う仲間と“集落”を作って気が向いた時だけ日雇い仕事をしているホームレスの爺さんたちの話が、実はいちばん明るかったりする(笑)

キャリアも同様で、大企業の役員や先生と呼ばれる立場の人ほど、老後の新たな職場や地域の共同体などで行き詰まる人が多い。柔軟性が無く、現役時代と同じ高い地位で扱われることを望むためだ。地域のイベントなどでも手より口を動かすだけで、注意されると怒ってそれっきり顔を出さなくなる人も珍しくないという。


年を重ねるだけでは“人生の達人”になれない

コップの水が7割方入っているのを「満杯じゃない」と受け取るか「半分以上も入っている」と捉えるか。

必要なのは「足るを知る」感覚を踏まえて、生きる知恵と生活力を備えること。
「たくさんのお金がなければ生きられない」「幸せを感じられない」生活と価値観に固執せず、限られた収入のなかで生きられる知恵や工夫、方法を身につけ、その中で自身が楽しめる人生の目的と手段をえることだ。

言い換えれば長い人生経験の中で、どのような状況でも自分を“活かして”生きる力を養ってこなかった人、生きるセンスを培えずにいた人ほど、長く延びた老いの日々を苦心して送ることになる。


結局のところ、老後というのは、肩書とか誰かに与えられた役割とか、そういうしがらみが一枚一枚剥がれ落ちて行って、最後に自身が人生で培った地肌が丸裸になることなのだろう。


さて、以下は筆者のメモ。

筆者の見たところ、充実した老後を過ごすためのポイントは以下の4点だ。


1.とにかく人とのつながりを維持する

一部の人の夢を壊すようで悪いが、やっぱり“独身貴族”なんてものは幻想で、独身で老後に突入した人はほぼ絶望寄りの状況に陥っている。一人暮らしをしていても離れて暮らす家族がいるか、気の合う友人知人とある程度のコンタクトを持たないと、相当厳しい老後になることは覚悟しておいた方がいい。


2.常に新しいことへの好奇心を持つこと

老いて生きる上で一番必要なものは何だと思いますか、と問われた一人の老人は“好奇心”と答えた。

「これをなくすと一気に老け込む。年を取れば、どうしたって先行きを暗く感じたり、やりきれない思いは増える一方だと思うんだよね。だからこそ、新しいものを吸収しようとする気持ちや行動力を増やしていかないと、ひしゃげちゃう。いやなことがあっても前向きに老いていきたいじゃない。せっかく一度きりの人生なんだからさ」


これはキャリアデザインにも通じる話だ。好奇心を失うと人材は伸びなくなる。


3.何でもいいから趣味を持つこと

よく言われる話だが、仕事一筋で無趣味の人ほど、老後に一気に老け込むものだ。それを防ぐには長く続けられる趣味を一つは作っておくべきだろう。筆者がなるほどなと感心したのが、裁判の傍聴シニアの話だ。朝から公判をはしごしてほとんど終日を裁判所で過ごす人までいるらしい。

「ここではつくりもののテレビドラマなんか足元にも及ばない、本物の人間ドラマが生で見られるんだ。しかもタダで。『世の中にはこんな犯罪があるんだ』とか『こういう事情があったんだ』とか、弁護人と検察官のやり取りとか、飽きないよねぇ。(中略)テレビなんか見てるより、よっぽど面白いよ」


他にはボランティア活動なども。これなら1番も同時にカバーできる。


4.仕事も生活も、地に足のついた状態をキープしておくこと

と書くとちょっとわかりづらいかもしれないが、筆者の見たところ、老後に困っている人が直面している困難の根っこは、すべて現役時代の行いにあるように見える。たとえば仕事一筋で土日はゴルフ三昧だった男性が息子にたかられるのは、突き詰めれば「それくらいのことやってもいいだろう。なんせあのオヤジなんだから」と足元を見られているのが原因だ(ついでに言えば自身も悪いことをしたと後悔しているから断り切れない)。

老後に再就職や地域活動で行き詰まる人は、中高年になってから分相応の地位について胡坐をかいていた結果だろう。自身の分をわきまえている人、あるいは掛け値なしに本当にすごい人というのは(飾る必要が無いから)姿勢が低く人当たりも優しいものだ。

要するに、仕事でも家庭でも、求められる役割はしっかりとこなし、実のあるものにキープしておくこと。仕事を理由に家庭をおざなりにしたり、年功序列のレールの上でうとうとしながら後半生を働いてきてしまったりすると、必ず老後のどこかでしっぺ返しが来ることになるように思う。








経産省若手官僚レポートって正直どうなの?と思った時に読む話

今週のメルマガの前半部の紹介です。先日、経産相の若手官僚らが作成したレポートが公開され、ネット上でちょっとした話題となっています。

【参考リンク・PDFファイル】「不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~」

内容は多岐にわたりますが、大雑把に言うと「終身雇用や年金、医療といった社会保障制度は時代遅れで機能不全を起こしており、個人の人生における選択肢を狭めてしまっている。これらの問題を克服するにはここ数年間が勝負だ」というもので、シルバーデモクラシーによる社会保障の高齢者偏重や、貧困の再生産といったテーマもしっかり含まれています。

筆者は当初、その「経産省らしからぬ内容」にちょっと戸惑いましたが、読み進めるうちにこれはこれでアリなんじゃないかと評価する気持ちになっています。確かに、それなりに経済系の本を読んだり政策に関心のある人にとっては「そんなの、とっくに知ってるよ」レベルの話かもしれませんが、そうでない過半数の人たちにとってはインパクトを持って受け止められたはず。そして、それこそが最初から彼らの狙いだったのではないかと思いますね。

というわけで、今回は経産省レポートについて、筆者なりに読み解いていきたいと思います。それは個人のキャリアデザインとも密接につながる話です。

率直な現状認識と清々しいまでの無力感

筆者が本レポートを評価するポイントは2点あります。まず第一に「率直な現状認識」です。中央省庁といってもピンキリで、中にはこんなこと言ってる三流省庁も存在します。

「年金額が月に一円になったとしてもちゃんと払ってる以上は破綻ではない。ていうか年金だけで老後が暮らせるように保障するなんてボクたち言ったことないし」
(諸外国では本人負担としてカウントしている会社負担分をあえて除いて)「サラリーマンはちゃんと払った保険料以上に年金を受け取れるから厚生年金はおトク!100年安心!」

そんな中「現行のシステムのままじゃこれ以上もたないし、現に色々不都合なことが発生しています」と率直に認めている本レポートは一線を画すものです。実際、あの経産省が言ってるから読んでみようと思った人は少なくないでしょう。

本レポートの行間からは「早くなんとかしなきゃ」という、かつての青年将校にも似た想いが感じられますね。先輩の失政をごまかすための尻拭いに人生を捧げている三流省庁の役人にも見習っていただきたいものですが。

そして筆者が評価する2点目は「清々しいまでの無力感」です。本レポートには具体的に何をどうしろといった政策も数値目標も全く出てきません。過去の経産省の配布資料などにはだいたい「〇〇年までに〇〇産業をウン千億円規模の市場に育成する」「〇〇業界の再編を主導しGDP0.3%上積みを目指す」みたいなことがきっちり書かれていたのとは対照的です。おそらく本レポートがダメだと言っている人は、そういう過去のかちっとしたものとの比較で言われてるんだと思われます。

ただ、実際のところは、そうした国主導の産業政策で上手くいったケースというのはほとんどないんですね。当たり前の話で、公務員に有望産業を選んで実際に育て上げるなんて芸当はムリなわけです。それはあくまで民間の仕事であり、官の仕事はそれを促すために規制緩和したり、逆に暴走しないよう規制作ったりというちょこちょこした微調整であるべきなんです。無理やりやらせても単なるバラマキで終わるだけでしょう。

そういう分をわきまえつつ、もう産業政策で誤魔化す余裕なんてないからこっから先は個人が頑張るしかないんだぜ?そのためには何が必要かい?という問題提起が本レポートの本質でしょう。「経済を成長させてくれる魔法のスイッチ」なんてものは経産省にも内閣府にもどこにも無いんです。「不安な個人、立ちすくむ国家」という一見すると何が言いたいのかよくわからないタイトルは、実は彼らのスタンスを率直に言い表したものだと筆者は考えますね。





以降、
レポートに隠されたメッセージ





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Q:「障碍者雇用を社内で啓蒙していくには何をすべきでしょうか?」
→A:「サービスや制度に幅を持たせられる点をPRすべきでしょう」



Q:「30代として働く中で意識しておくポイントは?」
→A:「30代で同期出世頭みたいな人にはある共通点があります」






雇用ニュースの深層

非正規使い捨て、組合潰しの朝日新聞社OBがいい加減なこと言うんじゃないよ

朝日新聞の二枚舌にはNYタイムズ(在朝日新聞本社)もビックリしてます。



終身雇用では賃金は上がらない

厚労省の下請けで食ってるようななんちゃって学者を除いて、労働経済学者のコンセンサスも出そろった感があります。







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