山井センセイとの思い出

twitterでボソっとつぶやいたらそれなりに反響があったので備忘録がわりにメモしておこう。

いつどこでだったか記憶にはないけれども何かの番組収録かシンポジウムの時にご一緒して、合間に名刺交換とかもするわけですよ。で、「ご著書はだいたいよんでますよ。確かにもうそういう時代なのかもしれませんねー」みたいなことを言われるので、あー意外に勉強されてるんだなと。

で、いざカメラがまわりはじめるとぜんぜんキャラ変わるわけですよ(笑)

まあそれはいいんだけれども。
記憶に残っているのは、たしか派遣で働くシングルマザーみたいな人が現場に呼ばれていて「急に法律が変わって雇い止めになってしまった」とか「長年働いていた派遣先に今回で最後だから」と言われたみたいな話を披露されていて、合間になると山井センセはせっせと足を運んで名刺交換しながらこんなことをしゃーしゃーとおっしゃられるわけですよ。

「さっきのお話、大変ですねえ。我々民主党も日々みなさんと共に戦いますよ

っていやいやいやいや、26業務適正化(26業務の解釈を厳格化する通達を出した結果、微妙なところにいた派遣労働者が10万人規模で雇い止めになった)だの26業務も含め派遣の上限を3年にしたのってあんたたちでしょ、なに他人事ぶってんだよ(笑)

時期覚えてないから民主党のせいでその派遣さんが切られたかどうかまでは分からないけれども、少なくとも規制強化の方向でごり押ししてきたあんたらが言っちゃいかんだろう。

という強い印象を持ったわけです。

結論としては、あの手の政治家は規制強化で失業率が上がるといった基本的な市場の構造はしっかり理解はしていて、理解した上で、平均よりちょっぴりお金も票も持ってる既得権層のために、一生懸命汗をかいてるフリをしてるんだなと。

もしかすると。日本でリベラルと呼ばれる人のほとんどは、その手の種類の人間なのかもしれない。そりゃいつまでたってもシングルマザーは報われませんね(苦笑)

希望の党がコケた原因と今後の展望について

希望の党で玉木新体制が発足し、小池都知事が共同代表の座を降りた。同党にとってはいろいろな意味で節目となるだろうが、いいタイミングなので先の総選挙で同党がコケた原因を考察してみたい。今後の方向性を考える上でも総括は必須だろう。

まず、同党不振の理由としてよく挙げられる小池さんの「排除発言」だが、筆者はそれはあんまり関係ないように思う。というのも、民進党が機能不全に陥ったのは民進党左派グループ(その実態は「冷戦時代の東側カッコイイ!」というだけの冷戦期保守派)の存在が原因であり、それを排除する姿勢はむしろ筆者なんかは好感を持ったほどだから。実際アレに怒っている人にリアルであったこともない。

どうも左派系のメディアは排除発言を必死に不振の原因にしたがっているように見えてならない。自分たちに似た価値観が粗大ゴミ扱いされたのが気に入らないのはわかるが、共産党なんか一言でも執行部批判した瞬間に速攻で除名、追放なんだから価値観合わないグループを排除するのは政党なら普通だろう。町内会じゃないんだから。

以下は単純な筆者の感想だが、希望の党の失速は、やはり政策のハチャメチャぶりが原因ではないか。特に「消費税引き上げ凍結して内部留保課税」というのがまずかった。あの瞬間、周囲やSNSのTL上で一気に冷めた人が多かったように思う。

フォローしておくと、中の人たちもまさか本気でそんなもんが実現できるとは思ってないはずで、むしろ選挙対策としては「よく考えたつもり」だったのではないか。というのも、残念ながら世の中の半分くらいの人は「いかに自分の負担が少ないか」で政策を選ぶ程度の知能しかなくて、実現可能性とか「ただ飯なんて無いんだから中長期では必ず自分に負担が帰ってくる」なんて発想はなかったりする。まあその手の人たちはこの先落ちていく一方なので無視しとけばいいのだが、同じ一票を持っている以上、政治家はそこも取りこぼすわけにはいかない。

だから、近年、選挙で勝ち上がって成立した政権には、目先のことしか考えられない人たちがパクっと食いつきそうな“バカキラー政策”が必ず収まっている。

例:

・霞が関埋蔵金伝説
・日銀にジャブジャブ緩和させれば物価上がって景気も良くなる説

アホらしいんでいちいち解説はしないが、上記に共通するのは「オラはなんも努力せんでもお上がきっとなんとかしてくれる」というお上丸投げの姿勢だ。筆者は、たぶん希望のブレーンも、識者に冷笑されつつも、大衆の共感を呼ぶギリギリの線を狙ってボールを投げたとみている。共産党も似たような政策を掲げているわけだし。

でも、残念ながらそうはならなかった。理由は恐らく、希望の党を支持する可能性のあった層というのは、旧民進党の中道~保守よりの支持層や、都市部の無党派層の中でも比較的若い現役世代であり、ある程度のリテラシーを備えていてバカキラー政策に引っかかるどころか失望してしまったことだろう。特にこの層には財政再建も社会保障見直しも長年放置プレイされる中、一方的に社会保険料だけ消費税の3倍スケールで引き上げられ続けてきたことへの怨念めいた思いがある。
「増税も歳出見直しもなーんもやりませーんよ、みんな、この指とーまれ!」的なことを言われるとイラっと来る人が多い層でもある。

【参考リンク】増える社会保険料が物価低迷の隠れた要因に-賃上げ抑制

そういう意味では、麻生政権時に麻生さんが「俺は郵政民営化に賛成じゃなかった」と言って無党派層にそっぽを向かれて下野した時と構図は同じだ。

そう考えると、代表選で玉木氏が勝ったことで希望の党は首の皮一枚つながったように思う。玉木氏はなんだかんだ言われつつも政策通であることに変わりはないから、旧民進党路線とは決別し、隙だらけのアベノミクスと政策論で勝負するべきだろう。社会保障改革も手つかずだ。

お茶の間で昼間っからテレビ見てる高齢者向けの「仕事してるアピール」にすぎない加計学園問題なんてあれだけ頑張ったのに民進党崩壊したんだから、自分たちを必要としてくれているのは誰なのか、なんで09年に政権交代できたのか、よくよく考えるべきだろう。

メガバンクのリストラで何がどう変わるの?と思った時に読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。
先月より、メガバンクがAIの導入により既存業務における人員配置を大幅に見直し、業界全体で3万人以上の人員削減を行うというニュースが話題となっています。みずほ銀行の削減予定人数は1.9万人でグループ全体の1/3ですから、業界激震といってもいいでしょう。“仕事消滅”の幕は銀行から切って落とされたわけですね。

【参考リンク】3銀行大リストラ時代 3.2万人分業務削減へ

銀行は90年代まではその高い報酬と安定した経営状況により、主に文系の就職先として高い人気を誇りました。今の40歳以上の銀行員の中にはその黄金の時代に入行し、今回のニュースで戦々恐々としている人たちも少なくないでしょう。

はたして銀行では、2000年前後に大手メーカーが生産拠点に対して行ったような血のにじむようなリストラ地獄が再現されるんでしょうか?また、今後銀行における個人のキャリアデザインはいかにあるべきなんでしょうか。いい機会なのでまとめておきましょう。

痛みはないが退屈なリストラ

結論から言うと、対象事業部門の従業員を選別して辞めさせたい人に辞めるまで何度も面談して追い込む等、いわゆる世間一般でイメージされているようなリストラはまずやらないでしょう。理由は2つあります。

まず、今回のメガの置き換えの主要な動機の一つが人手不足であることです。筆者の感覚で言うと、従来と同じ人材の質を維持しつつ同じだけの採用数を確保しようとすると、現在は90年代の2倍以上のコストがかかります。それくらい特に若手は人手不足なんです。なので、恐らくメガの置き換えの大部分は定年退職後に新規採用で補充しない形でゆっくり静かに10年くらいかけて進んでいくはずです。

そして2つ目の理由は、彼らが社会的信用を非常に重視するためです。銀行の人事というのは昔からよく言えばお公家さん的な、悪く言えば前例踏襲主義的な傾向が強いものです。なので、メーカーやIT系なら珍しくない「窓の無い倉庫に缶詰めにしてファイル整理」とか「すぐ生えてくる空き地の草むしり」みたいな泥臭いことはまずやらないでしょう。筆者は早期退職募集すらやらないんじゃないかと見ています。

ただし、行内の風景は一変することになるでしょう。年功序列制度は、毎年コンスタントに若い新人が入ってくることで維持されます。新規採用を削減するということは、年功序列を放棄するということですから、年功序列を維持するために従来頻繁に行われてきた(大きくなりがちだった中高年のボリュームゾーンからの)取引先への出向転籍も今後は段階的に縮小廃止されていくでしょう。

一部の会社で見られる“名ばかり管理職”みたいな部下のいないポストも、今後は減っていくでしょう。年功序列を放棄する以上、形を取り繕ってやる必要もないからです。

この手の組織改革においては本当に偉い人は保護されるので、50代で中間管理職ポジションの人、あるいはこれからいよいよ出世して滅私奉公した分を取り戻すぞ的な40代がもっともしわ寄せを食らうでしょう。

というわけで、取引先回りや支店の窓口業務等、従来は若手が目立っていた職場にも、これからは普通に50歳くらいのオジサンが第一線で働く風景が普通となるはずです。終身雇用のレール自体は途切れてはいないけれども、頑張って東海道新幹線に乗ったつもりが、気が付けば南武線でずっと往ったり来たりしているような感覚と言えばわかりやすいでしょうか。




以降、
これから銀行業界で流行るモノ
希望の無い組織でいかに希望を見つけ出すか







※詳細はメルマガにて(夜間飛行)








Q:「独立した後の顧客開拓はどうすべき?」
→A:「在職中にある程度握っておくべきです」



Q:「結婚するなら退職は当然?」
→A:「今はだいぶ変わってきてるんですが、職種によっては難しい面も……」







雇用ニュースの深層

輸出大手は最低賃金なんて興味ない

「時給1000円も払えないような企業は潰して成長産業で働かせろ」というのが輸出大手や官僚のホンネです。



非正規雇用の人は5年ごとに辞めるか半年間休まないといけないという誰得ルール

現実を見ない法改正の当然の結果です。


8割は課長にすらなれません

団塊ジュニアはむしろ氷河期で採用数が少ないからなんとかなるんじゃないか、という人も結構いたんですが何とかならなかったですね。





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書評「だから、居場所が欲しかった。 バンコク、コールセンターで働く日本人」






週刊文春11月9日発売の16日号に書評を書いたので、ブログでも簡単に概要だけ紹介しておこう。

マニラ在住のノンフィクション作家水谷氏による取材期間5年に及ぶ労作だ。
(なお筆者のコメントも一言だけ採用されている)

「バンコクの日本人向けコールセンター」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。そこでしか働けない可哀想な人たち、と思う人も少なくないだろう。実際、就職氷河期世代でずっと非正規雇用しか経験してない40代など、挫折を経験した人が多いのも事実だが、実は彼らはみな自分の意思でタイに移り住んでいる。この人手不足、贅沢言わなきゃいくらでも仕事はあるにもかかわらず、だ。

筆者は、これは結構すごいことだと思う。普通逆でしょ。いろいろ事情があって困った人やマイノリティって先進国を目指すでしょ。ドイツ人やフランス人が仕事いっぱいあるのに「なんか生きづらいから」とかいって新興国には行かないでしょ。

「そんな社会保障の未成熟な国に行って、老後はどうするんだ」という人もいるかもしれないが、じゃ日本でずっと非正規雇用やってる人は老後安泰なんですかね。ていうか、正規雇用であっても本当に65歳から現役時収入の5割分の年金受け取れるんですかね。筆者はめちゃくちゃ危ないと思うけど(苦笑)

たとえば、地方で時給900円くらいで3Kの仕事を非正規でやりつつ、近所から「あの人いい年なのにずっとパートらしいわよ。ていうかいつ結婚するのかしら」とかごちょごちょ言われるくらいなら、若く成長エネルギーに満ちたタイで、残業とか転勤無しで短パンはいて仕事してた方がよっぽど精神衛生上は健全じゃなかろうか。実際、本書にはネガティブなケースだけではなく、タイに移って10歳以上年下の彼女が出来た人や、起業してそこそこ成功した人たちも登場する。

バンコクの日本人社会やナイトカルチャーのことも分かるけれども、同時に彼らの言葉を通じて日本社会の矛盾もよく理解できる一冊。ぜひおススメしたい。


トヨタの残業代17万円保証制度ってトクなの損なの?と思った時に読む話

今週のメルマガの前半部の紹介です。先日、トヨタの「残業代17万円保証制度」なるものが話題になりました。とりあえず残業してもしなくても17万円程度(約45時間分)を支給するというもので、繁忙期にそれ以上残業してもその分はちゃんと支給しますよという制度です。いわゆる見なし残業代と呼ばれるもので、裁量労働制と違って超過分をきちんと時間管理、残業代支給するため、幅広い職種に適用できます。

【参考リンク】トヨタ 残業代保証新制度 45時間超は追加支給


同社の狙いは無駄な残業時間の削減です。たとえば、同社のバリバリの中堅社員はだいたい毎月60時間くらい残業しているとします。今までと同じように残業してもいいんですけど、こういう考えもできるわけです。

「ちゃっちゃっと働いて18時には退社して遊びに行こう」
「速く帰って空いた時間で資格や語学の勉強でもするか」

もちろん、今まで通り60時間残業してその分の残業代をちゃっかり受け取る人もいるでしょう。でも筆者の感覚だと7割くらいの人間は早く帰って浮いた時間を自分の好きなことに投資するはず。会社としては無駄に残業されるくらいなら、オフを楽しむか勉強してスキルアップでもしてくれたほうがよっぽどマシだということです。

以上をふまえれば、ホワイトカラーと残業に関して以下のことが言えるでしょう。

・会社はホワイトカラーに残業なんて要求してはいない

よく「ホワイトカラーエグゼンプションや高度プロフェッショナル制度は会社が従業員を無制限に残業させるための制度だ」なんて人がいますが、少なくともホワイトカラーに関する限りそんなこと考えている会社を筆者は一社も知りません。むしろ「いったいどうやったら残業時間を削減できるか」というのが、人事部で今一番ホットなテーマだったりします。会社が求めているのはあくまでも高い付加価値と効率的な働き方ですね。


・どういったペースでどれだけの仕事をするのかを決めるのはホワイトカラー自身

たとえばアパレルの販売員なら売り場に立っている時間に応じて成果も上がるし、工場のラインも立っている時間に応じて製品が出来ます。でもホワイトカラーはそうではありません。どれくらいの時間でどれだけの成果を上げるのかは本人次第であり、会社に出来ることはその生産性に応じた人件費を用意することだけです。

とりあえす17万一括支給するから、あとは任せたぞ、というトヨタの判断からは、そうしたメッセージがひしひしと伝わってきますね。






以降、
みなし残業や裁量労働制がいまいちパッとしないわけ
裁量労働制とうまく付き合うコツ





※詳細はメルマガにて(夜間飛行)







Q:「誰の担当かわからない仕事は誰がやるべき?」
→A:「本業のコアを設定してもらって判断しましょう」



Q:「『若手は悩んでる時間がなくなるまで働け』←これって正しいですか?
→A:「会社と運命を共にする覚悟があるなら最高のアドバイスでしょう」







雇用ニュースの深層

アベノミクスの実際の評価

今は高く評価してるという人も3年後にはがらりと意見を変えているはず。



「痛みを伴う改革」をやらないと一番痛い目見るのはサラリーマン

経団連が言っているのは「さっさと痛みを伴う改革やらんとうちの可愛い可愛い従業員があまりにも可哀想なことになるじゃないか」ってことです。








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「10年後失業」に備えるためにいま読んでおきたい話


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7割は課長にさえなれません


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3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代


若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来
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城繁幸
コンサルタント及び執筆。 仕事紹介と日々の雑感。 個別の連絡は以下まで。
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