ダイバーシティの実現に必要なもの


前回のメルマガのQ&Aに読者(本書の著者さん)から興味深い提言をいただいたので許可をいただいたうえでご参考までに紹介したい。女性の社会進出というととかく「手厚い支援」「男性とイコールに」的な意見が多いが、個人的にもそれはかえって女性の排除につながると思う。女性側からの貴重な意見だ。




サラリーマン・キャリアナビ153号
Q:<ダイバーシティの実現には何から着手すべきでしょうか?>
についての私見を述べさせていただきます。

1.「周囲の理解と配慮(≒我慢と無料奉仕)」は悪手

女性活用の有識者(笑)が主張する「ママ社員は残業・営業・外勤もダメ。子どもが病気で休むのは当然。でも、給与・昇進は年齢相応に。不平を言うのはマタハラ。」的な対応は、周囲の不平・不満が蓄積し、いずれ破綻する。

複数の部下を持つ場合、「ママ社員・病気持ち」部下が事実上優遇されてしまい、れ以外の部下に不公平感が残らないような制度が理想的である。

仕事とは基本的に報酬と引き換えに行うものであり、会社は仕事の場である。「妊娠・育児・病気・高齢」などで、0.5人前しか働けない者は0.5人分の給与、その穴埋めで1.5人前働いた者は1.5人分の給与が得られ、結果的には同期で3倍の給与差が生まれても当然と考えるべきある。

2.業務のスリム化・ネット化・クラウド化を推進

インターネットを活用した会議やスケジュール管理システムは日進月歩であり、本気で洗いだせばムダな朝礼・会議はかなり減らせる。資料・報告書・日報・会議録などもクラウド化の余地はあるはずだ。社員を社内に留置く時間が最小限になるよう、業務を見直す。

3.2と共に、就業時間のフレックス化・在宅勤務を推進

多くの中小企業にとって、大企業を上回る報酬体系を従業員に提供すること困難だが、大企業を上回る自由度のワークスタイルを提供することは比較的容易である。「給料同じでも、ラッシュ時の電車に乗るのは週一回程度」という企業への転職は、首都圏会社員にとって魅力的だと思う。ワークスタイルの自由化は、非ブランド中小企業が優良人材を確保する有力な方策である。

また、パワハラ・セクハラ・うつ病など職場に蔓延する人間関係の悩みも、赤の他人が狭い部屋に連日長時間閉じ込められるから深刻化するのであり、「週二回3時間ずつ」しか顔を会わせないばあいは、多少ソリが合わなくても何とかなるものである。

一方、「正社員は定時に出退勤し、早退や在宅勤務の権利は上司の慈悲によって与えられるもの。同年齢職員の給与は、ほとんど同一。」式の職場では、「産育休時短」する職員が複数現れただけで現場は破綻する。むしろ「面倒だから弊社で女子社員は採らない」と考える経営者を増やし、かえって女性の社会進出を阻害するだろう。

「女性活躍推進」とは「女性を甘やかせて、周囲は我慢する」ことではない。真の解決とは、職員全体のワークスタイルの自由度を向上させて、「クラウド・フレックス化を推進したら、自然にダイバーシティが進んでいた」となるべきである。

4.「係長→課長→部長」よりも「有期のチームリーダー制」

昭和的な「係長→課長→部長」という一方通行の昇進システムは、出産・育児等のライフイベントの多い女性には不向きである。また、男性でも「3ー40代はバリバリ働いて、50過ぎたからボチボチしたい」「夜間MBA行きたい」「実家の農業を手伝いたい」という人材に対応しにくい。

社内の組織を柔軟にして、役職はプロジェクト毎に「マネージャー、リーダー、サブリーダー、メンバー」のような数年単位の肩書きとして、役割に応じて上下できるものにする。女性の場合、「就職~妊娠まではバリバリ働き29才でリーダーに昇進→その後に産休→子育て中はメンバー→子供が小学校に入ったのでサブリーダー」的なキャリアパスを可能にする。

5.「基本給は少なめ、成果に応じたボーナス部分が多い給与体系」

4に伴って、結果に応じて上下できる給与体系が望ましい。不動産関係ならば、結果に応じたボーナス体系も整備しやすいと思う。

6.社内アルバイト、フリーランス(個人事業主)

「残業上限100時間」のような規制ができつつあるが、対応に悩んでいる現場も多い。特に不動産ということは、土日夜の仕事も多いと思う。こういう土日夜の単発仕事は、社内クラウドで「ゴールデンウィークのイベント補助、日給80000~15000円」的に社内よりアルバイトを募ってはどうか?「通常の給与口座とは別口座に振り込みます」とすれば、小遣い制オヤジが応募してくれると思う。時間外労働に対して、社員を個人事業主として発注すれば、「残業100時間制限」はクリアできる。

決算前・新卒採用などの季節変動の大きい業務のみならず、不祥事対応のような突発的な業務急増も、社内フリーランスの応援があれば、担当者の(サービス)残業や過労死を予防できる。

社内フリーランスの対象者は、現役社員だけでなく、育休中や退職まもない元社員も含める。育休中社員が自宅で、「大量に集まった学生のエントリーシートを読んで、得点化する」→「採用担当者は得点を参考に、面接に呼ぶ学生を選ぶ」のような活用も可能である。






東芝ってどうして今さら自社株を社員に買わせてるの?と思った時に読む話

今週のメルマガの前半部の紹介です。先日、経営危機で上場維持の危ぶまれている東芝が、自社株の購入を従業員にすすめていることが話題となりました。先行きの全く見通せない中で新たに買わせるとはどういうことかと従業員も怒っているそうです。そりゃそうですね、既に持ってる分も大損でしょうし。

【参考リンク】東芝、社員に自社株購入呼び掛け 下落で含み損…「モラル疑う」と反発

ただし、会社として悪意があったかというと筆者はそうは思いません。まして社員に買い支えさせるとか何かの踏み絵にするなんて意図も皆無でしょう。では、なぜこのタイミングで自社株買いの呼びかけをしたのか。単に「何にも考えてなかったから」というのが答えでしょう。

今回の件からは、大組織が陥りやすい体質的な問題がうっすらと浮かんで見えます。そしてそれは、個人のキャリアデザインとも直接的につながる重要なテーマでもあります。良い機会なのでまとめておきましょう。

大組織によくいる「何も考えずに行動する人たち」

大組織には「頭を使って考えずに仕事をする人たち」というのが一定数存在します。と書くと「犬や猫じゃあるまいし、そんなの無理だよ」と思う人もいるかもしれませんが、ここで言う「頭を使う」というのは、新しいこと、まだ起きていないことについて考える、思いを巡らせる、くらいの意味です。

たとえば、こういうことです。毎月、社内の関連部署から数字を拾ってエクセルに突っ込んで、いつも役員に提出しているレポートの数字と日付だけちょろっと更新して部課長のハンコもらって提出する仕事は、上記の定義で言うと「考えない仕事」になります。たぶん二日酔いや風邪で頭ふらふらでもできますし、アシスタントに30分くらいレクチャーすればやってもらえるでしょう。

一方、「〇〇事業部は異常に残業時間が多いから面談して体調チェックしつつ、長時間残業発生の原因も調査して対策を講じる」とか「社内で40代のメンタルトラブルが急増しているため原因の調査と対策を考える」なんて仕事は、これから手を付けないといけないから上記で言う「考える仕事」なわけです。

営業でいえば、既存の取引先を回ってお茶飲んで帰る仕事が前者、見積書を作って新規開拓を目指して飛び込み営業するのが後者になりますね。その人の業務の中でどれくらい考えない仕事が占めるのかは人によりますが、筆者の感覚で言うと、大組織の業務の半分くらいは、考えない仕事、いわゆるルーチンワークが占めているように感じます。

フォローしておくと、通常業務がルーチン化されているというのは素晴らしいことでもあります。その会社の技術力や看板といった要素が高く評価されている証拠ですから。ただし、変化に対して、時にそうした組織は脆弱さを露呈します。今回の件も、先行きも全く読めない中で自社株買いの募集をかければどうなるのか想像しないまま、本社管理部門が決められた手順にのっとっていつものようにルーチンワークしてしまったというだけの話でしょう。この業務に関しては誰も「考えてなかった」ということです。

ではなぜ、人は組織の中では考えることを辞めるのでしょうか。実は終身雇用というのはそれ自体、考えないまま決められたやり方でひたすら前例踏襲する人材を量産する装置でもあります。大きなリターンもクビになるリスクもない環境では、それがもっとも合理的な行動だからです







以降、
大企業病の正体とは何か
無風組織の中でいかにして活力ある人材であり続けるか






※詳細はメルマガにて(夜間飛行)







Q:「海外勤務で人材価値を高めるポイントは?」
→A:「とりあえず日本人以外と苦労することです」



Q:「最低限の仕事ができるかどうか面談でチェックする方法は?」
→A:「コミュニケーション能力や協調性の有無を感じ取ってください」







ショートショート「40年後の日本」







Q&Aも受付中、登録は以下から。

・夜間飛行(金曜配信予定)











「小さな巨人」は第二の半沢になるか

録画しておいたTBS日曜21時~のドラマ「小さな巨人」が非常に面白かったので紹介。

警視庁のエリート刑事だった香坂(長谷川博己)はちょっとしたミス(というより上司にハメられて)所轄の芝警察署に左遷。これまで馬鹿にしていた地回りの所轄の一課長として、泥臭い現場を足で回る立場になる。顎で使っていた連中に混じって、自分が顎で使われる側になったわけだ。

というのが第一回。

練りこまれた脚本と実力派で固めたキャストで、組織と個人の葛藤、因縁の上司との対決が描かれる。書いててそのまんま半沢直樹である。プロデューサーも同じ福澤さんだし。

というか、香川照之がまったく同じ役どころで出ている(笑)

普通、よほどの自信がないとこういう被りはしないでしょ。アレと比較されるわけだから。というわけで間違いなく今期一番の注目作品だろう。


で、もう一つ気づいた点。

筆者はいろいろドラマやら映画やら見ていて、なぜか岡田将生を3本に1回くらいは目にする機会があって、なんだか知らないけど売れてるあんちゃんだなあくらいの感想しかなかったのだが、本ドラマを見てなんとなく理由がわかった。

重厚な脚本と実力派キャストで固めればある程度のクオリティは維持できるだろうが、若年層が見ないとスポンサー枠が埋まらない。といってアイドルばっかりで固めると数字が爆死するはめになる。若手イケメン枠かつベテラン勢に混じっても存在感の出せる岡田将生は、作り手からすればとても使い勝手の良い役者さんなのだろう。


書評「大鮃(おひょう)」

大鮃(おひょう)
藤原 新也
三五館
2016-12-21




物語は、主人公が精神科医のカウンセリングを受けるシーンから始まる。

31歳になる主人公はオンラインゲーム中毒で、休日には20時間以上ぶっ続けでパソコンに向かうほどの重症だ。本人はそうなってしまう理由として、自分に対する自信の無さを挙げる。自立した男としての自覚も自信もなく、31歳になっても異性と良好な関係が築けない。かつて人生で一度だけ付き合った彼女からは「あなたの優しさは強さからくる優しさではなく、弱さからくる優しさだと思います」と捨て台詞を残されて去られてしまったほど。

そういう実社会での弱さをカバーするために、ゲームでの過酷な戦いを重ね、男としての強さを取り戻そうとしているのだと、おぼろげながら感づいているためだ。

そして、カウンセリングを通じ、その弱さの原因は主人公の中の父親像の欠如にあることが明らかとなる。6歳の頃に父親と死別して以来、主人公は父親という存在を知らぬまま成長してきた。

そうした傾向は、現在の青年層に顕著にみられるものだとカウンセラーは述べる。

「いや個人主義というものが集団の中で機能している西欧の場合と日本とでは異なります。戦後にあっても日本型の集団はかつての家族主義や武家社会の滅私奉公の遺伝子を色濃く引きずっており、ひとたび集団に帰属すると、そこでは個人が抹殺される傾向にあります。日本の雇用制度が長い間、終身雇用、年功序列だったことがそのことをよくあらわしています。
(中略)
そういう日本独自の就労環境の中で男性が男性性を維持することが難しくなったということです」



カウンセラーは主人公に「どこかに実際に旅をしてみれば、ゲームでは見つけられなかった強さを見つけられるかもしれない」とアドバイスし、旅の目的地として、父親の出身地である英国オークニー諸島をすすめる。

スコッチ好きなら「ハイランドパーク蒸留所のある島」として名前くらいは聞いたことがあるだろう。逆に言えばそれくらいしか見所のない、北風のふきすさぶ寂れた島だ。

あらかじめ手配していたガイドに会った主人公は、その異様な風体に不安を抱く。よれよれの服を着て、一見するとまるでホームレスにすら見える80代の老人だったからだ。この老人に本当に一週間のガイドがつとまるのだろうか。
不安を抱きつつ、老人の運転する60年もののオンボロ車に乗って、青年の自分探しの旅が始まる。

島での様々な非日常的体験を通じ、徐々に主人公の心境に変化が生じていく。そんな彼に、老人は自身の意外な過去について語り始めるのだった。


筆者の周囲にも「子どもと遊ぶより一人でゲームしている方が楽しい」と言って一人ゲームに向かう同世代は何人もいるから思い当たる節はある。どうやら幼少時の経験というのは自身が子育てに回る際に影響してしまうものらしい。そういう意味では本書は、企業戦士として人生を全うした最初の世代である団塊と、その子供たちである団塊ジュニアをイメージしているようにも思われる。

子育てに悩める世代におススメしたい一冊だ。



40年後の日本は案外楽しい国になっているかもしれない

永江氏の「誰でも想像できる40年後の日本はこんな感じ・・・」がなかなか興味深く、各所で話題となっているようなので何点かフォロー。

こういった将来は以前から指摘されていることなので恐らく不可避だろう(筆者も以前に書評で同じテーマに触れたことがある)。


ただ、個人的には以下のような理由から、それはそれでそんなに恐れおののくほどのことでもないんじゃないかと考えている。


・とりあえず職には困らない

働き手と養われる側がほぼ一対一という人類史上初の人口構成になるため、極端な労働力不足が慢性化することになる。確かに景気は悪いだろうが失業率も異様に低い状態が続くだろうから、食うには困らない。というか、もうそういう状況は出現しつつあるように思う。ほら、今だって「バブル期並みの求人倍率!自殺率も低下!」って大本営発表してるけどほとんどの国民は景気がいいなんて実感しちゃいないでしょ?ある意味、退屈な平和ともいえる。


・動けなくなって野垂れ死にするのは生物としては普通

「でも、年金も生活保護も無くなったら老後は野垂れ死にしちゃうじゃないか!」と思う人もいるだろうが、そもそも体動かなくなったら野垂れ死にするのは生物としては普通のことだ。人間が動けなくなっても病院でチューブにつないでもらって心臓が動く限り延命してもらえるようになったのはここ数十年の話だから、心配はいらない。ちょっと昔の生活に戻るだけの話だ。


・考えようによってはワクワクするような暮らしが可能

東京とか名古屋とか大阪とか福岡とか、そういう一部の大都市に人口が集約し、その周辺に都市内部には住めない貧乏老人がスラムを作って暮らし、その他の地方はほとんど人の住まない廃墟になると思われる。

でも、そういう生活も考えようによっては悪くはない。筆者はまだ体が動くうちにそういう事態になったとしたら、たぶん八ヶ岳あたりに夏用の、静岡か高知あたりに冬用の別宅を買って、畑仕事や釣りをして余生を満喫すると思う。

「そんな余生が送れるのは一部の富裕層だけだろう」と思う人もいるかもしれないが、そんなことはない。地方の空き家なんて二束三文で手に入るだろうから、築古の民家を買って10年くらいで使い捨てにすればいい話。犬でも猫でも飼い放題だ。そこまで極端な場所に行かなくても、ぎりぎりインフラが通っている郊外に安い庭付きの家を買い、半自給自足的生活を送る人たちは若い世代の中にも出てくるのではないか。

もう一つ、意外に未来が明るいんじゃないかと思う理由もある。あるのかないのか分からん社会保障の破たんが明らかになったら、子孫の有無がすごく重要になってくるから出生率も回復するかもしれない。

「結婚なんてメリットないもん」とか「結婚は人生の墓場」とか斜に構えてた老人が路上でばたばた野垂れ死んでるのを見た未来の若者たちは、せっせと婚活に励んでくれることだろう。





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城繁幸
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