サルでもわかる「終身雇用がブラックを産む」わけ

昨日「過労死も長時間残業もぜんぶ終身雇用の副産物なのでそれを死守しようとしている立憲民主党や共産党はブラック企業撲滅どころかさらにブラックを蔓延させるぞ」というビジネスマンなら当たり前の常識をつぶやいたところ1500以上RTされたようでだいぶ日本社会のリテラシーも上がってきたなと感心しましたが、

まだ「政府が規制さえすれば夢はぜんぶ実現する」式の付加価値の低そうな方々による頭の悪いクソリプも結構飛んできたので、まとめてサルでもわかるように解説しておきます。

筆者は他人は他人と割り切ってる派なんで頭の悪い人がどんどん貧乏になったり長時間残業したりしてても別にどうとも思わないんですが、困ったことに彼らも選挙では同じ一票持ってるわけですから。


・過労死がなんで終身雇用と関係あるの?

日本は終身雇用なので、残業時間で雇用調整します。具体的にはこんな感じです。

一般の国:「忙しい!よし、人を雇おう!」→「暇になったな。誰かをクビにしよう」
日本国 :「忙しい!みんなで徹夜だ!」→「暇になったから定時で帰ろう」


だから残業は別に会社がやらせてるわけじゃなくて労組と協定結んでやっているわけです。
イヤだったら断ればいいんですけど、断って会社の業績悪化すると(終身雇用で定年までお世話になる)労組も困るから徹夜するわけです。


・日本の労基法がザルだからだ!

残業時間に実質的に上限が無いのは、上記のように労使に終身雇用を守らせてあげるためという面もあります。


・すき家のワンオペとか終身雇用と関係ないじゃん

そもそもホワイトカラーの話なんでバイトがきつい話とかは関係ないんですが、一応言っとくと、すき家はバイトに長時間残業やらせようとしたらバイトが逃げて本社の正社員が駆り出されてそれでも回らなくて営業時間縮小に追い込まれたという話です。流動性こそが労働者の最大の武器という好例です。


・じゃあなんで自民党は安だけ長期間政権とっときながら長時間残業減らせないの?

本気で残業時間に上限作るんだったら終身雇用辞めて解雇しやすいルールにしないとムリです。で、連合や共産党や立憲民主党あたりが大反対しているわけです。文句があるならそっちに言ってください。


・そもそも終身雇用を保証出来ている会社なんて一部の大企業だけでしょう?

法例ってたとえば中小企業に「おまえんとこは終身雇用っぽくないから残業上限は月50時間な?」とかなってましたっけ?中小企業に「おまえんとこは終身雇用じゃないっぽいから、解雇してもいいけどするときは半年分の基本給払えな」とか金銭解雇ルールありましたっけ?ないですね。大企業と同じルールが適用されます。

終身雇用そのものは無くても、同じルールを適用されてるわけです。こういうのを「やらずぼったくり」と言います。

あ、ちなみに金銭解雇ルールが出来れば、今まで割と勝手にクビ切られてた中小企業の従業員は(上記の例でいえば)半年分の補償が貰えるわけです。実は解雇規制緩和って大多数の労働者にとっては規制強化なんですよ。
まあ早期退職応募で一億円近く貰える朝日新聞の社員は発狂するでしょうけど。

なので、解雇の規制緩和には「従業員クビにするのにいちいちお金なんか払いたくないよ」という中小企業の経営者と「辞めるにしても2年分くらいの割増退職金がもらえる従来のシステムがいい」という連合がタッグを組んで反対してたりします。








なぜ新人を過労死させても罰金50万円だけで済むの?と思った時に読む話

今週のメルマガの前半部の紹介です。新入社員に月100時間を超える残業をさせ過労自殺させた問題で起訴されていた電通ですが、先日、罰金50万円という求刑通りの判決が下されました。厚労省と検察が本腰を入れて追及し、結果的に裁判にまで持ち込まれた本件には、多くの人達が注目していました。

「二度と悲劇を繰り返さないためにも、悪の大企業をやっつけろ」
「裁判をきっかけに日本の悪しき慣習をなくそう」

そういう期待をしていた人も多かったように思います。

が、出てきたのは罰金50万円ぽっきり。きっと驚いている人も多いはず。
なぜ違法な行為で人を死なせておきながら50万円で済むんでしょうか。
そもそも、なぜ電通の過労自殺問題はここまで注目を集めることとなったのでしょうか。


最初から落としどころは決まっていた

結論から言うと「長時間残業自体が違法というわけではなく、その手続き上の問題だったから」ということになります。最初からこの程度の罰金刑で終わることは決まっていたわけです。

日本には実質的に残業時間の上限がなく、労使が決めた範囲内ならいくらでも残業することが可能です。実際、普通の大企業なら月100~150時間まで残業可能と取り決めている企業が大半で、実際ちょくちょく過労死は発生しますが事件にはなりません。電通はなぜか月70時間と控えめに上限を設定し、そして見直しもしていなかったからアシがついたわけです。

月150時間残業できるようきっちり手続きしておく会社の方がエライとは、筆者にはとても思えませんね。

「でも、電通をこれだけイジメておけばよその大企業にもよい教訓になるんじゃないか」
と思う人もいるかもしれません。教訓にはなるでしょう。事務手続きに漏れがあると大変だ、という教訓が。だから、そういう事務周りのコンプライアンスは(少なくとも同種の問題が起きればメデイアで取り上げられる)大企業で今後ガッチガチに厳しくチェックされるでしょう。それで労災そのものが減るとはとても思えませんが。


なぜ残業上限が存在しないのか

そもそも、なぜ日本では残業に上限が無いんでしょうか。

普通の国なら、繁忙期になれば経営者は
「人手が足りない。もっと人を採用しよう!」
といってどんどん従業員を採用するし、人手不足ならどんどん賃金も上がっていきます。

一方、従業員は従業員で残業なんかに付き合う義理はないわけで
「仕事がまわらない?それは経営の責任だろう。定時になったから帰るわ、そんじゃーね!」
といって勝手気ままに振る舞います。経営者でも株主でもない労働者なんだから当然ですね。それで会社が傾いたら転職すればいいだけの話。労働者には何の関係も責任もありません。

ただし。ここ日本においては、そうしてしまうと経営者も従業員も非常に困ったことになります。経営者は仕事量に合わせて人を採ってしまうと暇になった時に誰かをクビにしないといけませんが、終身雇用の日本ではそれは認められていません。

従業員も好き勝手やって会社が傾いたらサクッと転職できる人もまあいないではないですが、やはり終身雇用ベースの日本では新卒カード使って入った会社が傾いたら困るという「経営者以上に経営目線な人」が大半でしょう。

というわけで、
経営「忙しいけど月150時間くらい残業して頑張って。あ、賃上げも将来分かんないから我慢してね」
労組「任せてください週1日でも2日でも徹夜しますから。賃上げ?いいですよそんなムリしなくて」
という具合にお互い支え合い、氷河期だなんだと言われてるそばで年収600万くらいの普通のサラリーマンが過労死し、人手不足が叫ばれるようになってもぜんぜん賃上げされない摩訶不思議な日本国が回っているわけです。

残業時間に上限が無いのはこういう構造的な背景によるものです。だから、そういう構造的な事情にメスをいれる(解雇規制緩和と残業上限をセットで導入)ことなく残業に上限だけ作ろうとしても骨抜きになるか、サービス残業が増えるだけのオチでしょう。






以降、
電通をぶっ叩いてトクをした人、損をした人
若い世代は「手の抜き方」も覚えた方がよい







※詳細はメルマガにて(夜間飛行)









Q:「サラリーマン的に消費税増税はどうとらえるべき?」
→A:「フリーターやニートの皆さんのために、僕たちサラリーマンが天引きされます、って言うんなら反対でいいんじゃないですかね」



Q:「65歳以降に役立つスキルはなんでしょうか?」
→A:「最後は人を見ることですね」







雇用ニュースの深層

あっという間に民進党分裂、政界再編へ

希望の党がモノになるかどうかは以下の3つのチェックポイントで確認しましょう。


内部留保バブル再び!

「お上は何をやっているんだ、俺以外の誰かからとれ」という人がいる以上、内部留保課税説は不滅です。


神戸製鋼よお前もか

終身雇用型の日本企業からはときどきメガトン級の不発弾がぽろっと出てきます。







Q&Aも受付中、登録は以下から。

・夜間飛行(金曜配信予定)







日本の“リベラル”はただの冷戦期保守派

筆者は民進党にも希望の党にも別に期待はしていないが、民進党の希望の党への身売りを巡る一連のドタバタを見ていると、いろいろなことが分かって興味深い。


1.有権者はリベラルには厳しいが保守には甘い

都議選を見ても明らかなように、民進党の底抜けの原因は、野党協力を優先して左寄りに路線転換した結果、無党派層の支持層を失ったことだ。

一方で、無党派層は政策も綱領も不明な希望の党には大らかに見える。一都民からすると、都知事でやらかした豊洲を巡るドタバタみたいなものを全国区で繰り返されると非常に危ないと思うのだが、そこは大して問題視されていないように見える。


2.多くの民進党議員は、政策にはこだわっていない

あれだけ安保法制反対だの憲法違反だの言っときながら「安保に賛成しないと公認しない」という踏み絵をサクっと踏んで希望の党に滑り込もうというセンセイ方を見ていると、彼らが特に個別の政策にこだわりがあるわけではないというのがよくわかる。

実のところ彼らがやっていたのは「悪の独裁者アベをアピールすることで、それに立ち向かう正義のヒーロー」というポジションを作り、自らを押し込んでいただけなのだろう。

と思っていたら、朝日新聞がいいことを言っている。
「危機をあおって敵味方の区別を強調し、強い指導者像を演出する。危機の政治利用は権力者の常套手段である」っていうのは、まさに最近の野党側の姿勢だろう。


さて、一つだけ疑問が残る。
なぜ、ちょっと共産党と仲良くしただけで野党第一党が底抜けするほどに、リベラルは不人気なのか。

戦前のように日本はもともと保守色が強いからか。それともアメリカ以上に自己責任の考え方がしっかりしているためか。それともなんだかんだ言っても国民が幸福で困っている人がいないからか。

筆者はどれも違うと思う。もっと単純に、彼らの中に未来に対するビジョンが完全に欠落しているというのが理由だろう。

「安保法制反対」にせよ「憲法改正反対」にせよ、過去の何かと比べてダメだレベルの議論であり、現状を踏まえてこれからどうしていきましょうという議論ではない。何十年も前に出来た法がどうだから絶対にダメだ死守すべきだなんて言われても筆者はぜんぜんピンとこないし、多くの若い世代もそうではないか。

たぶん実際のリベラルへのニーズというのは、社会保障の世代間格差の是正とか大企業正社員以外をカバーするユニバーサルな社会保障とか、そういう部分にあるのだけれども、そこをガン無視した挙句に「変なところでワーワー騒いでるおっかない連中」というのが、大方のリベラル評ではないか。

そういう意味では、いま自分で“リベラル”と名乗っている人たちというのは、冷戦期の旧東側陣営にシンパシーを感じているだけの人たちで、その時代をよしとする実質的な“保守派”なのだろう。

そういえば保守の中にも「高度成長期バンザイな保守」「戦前の日本バンザイな保守」「武士道バンザイな保守」とかいるから、そういうのの仲間として「冷戦期の東側バンザイな保守」って位置づけでいいんじゃないか。

たぶんこれから社民党と共産党が連携して「リベラルを灯を守れ」とかなんとか言いだすだろうけど「冷戦期保守派がなんかぶつぶつ言ってるな」くらいにスルーしといていいだろう。

本当のリベラルは今は保守系とされる政党の中で、安全保障や経済政策では現実的なバランスのとれたスタンスを維持しつつ、大きな政府をしっかり主張するグループの中に出現するだろうから。※

その点、「安全保障関連法や憲法改正への賛同」を踏み絵とするのは、スタート地点として筆者は悪くないと思う。これからの左右はそこを出発点とすべきだから。



※書き終わって今気づいたが、それって安倍さんそのもののような(笑)





日本だけが「AI仕事革命」に乗り遅れる、致命的な欠点が見えた

先日のイベントのダイジェストが現代ビジネスにアップされたのでご報告。

別に論戦はしてないけど(苦笑)


日本だけが「AI仕事革命」に乗り遅れる、致命的な欠点が見えた



あの人ってどうしてあんなに華麗な経歴なのにパッとしないの?と思った時に読む話

今週のメルマガの前半部の紹介です。
世の中には、目を見張るような華麗な経歴や資格を持つ人材が稀に存在します。たとえば難関資格の代表である医師国家試験や司法試験を両方合格しているような人が典型ですね。

一方で、そういう人が経歴に恥じぬ立派な活躍をしているかというと、必ずしもそうではありません。上記の例でいえば、むしろ医者とも弁護士ともぜんぜん関係ない分野で働いていたりするケースが多いように思います。


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※写真はイメージです。本文とは関係ありません。








なぜ目を見張るような華麗な経歴の人が、必ずしも目を見張るような華麗な活躍をしていないんでしょうか?そこには、キャリアとは何かを考える貴重な教訓が含まれています。

何でもできる人ほど実は何にも出来ない

経歴の華麗すぎる超ハイスペ人材というのは、実は大手の中途採用面接で結構遭遇したりするものです(理由は後述)。で、そういう「何でもできてしまう華麗な人」を観察してみると、たいてい以下のような特徴がみられます。


1.能力的にはきわめて優秀

当たり前ですが、なんといっても優秀な人が多いです。3分話しただけで地頭の良さがわかります。お勉強のできる人にはジックリ取り組んで答えを出すタイプも多いんですが、この人たちは決まって頭の回転が速いタイプです。


2.常に他者と競争するか、目標に向けて努力していないと落ち着かない

また、非常に競争心が強く、常に他者との競争に参加しているか、分かりやすい目標を掲げていないと不安なタイプが多いです。止まっちゃうと死んじゃうマグロみたいなもんです。資格をいっぱい持っている人はまずこのタイプですね。フォローしておくと、これはとても素晴らしい資質の一つだと思います。人に言われるまでもなく常に前向きに成長する原動力となるわけですから。


3.半面、何をどうしたいかといったビジョンは驚くほど薄い

一方で、面接などでやり取りをすると、本人が具体的に何をどうしたいのかといったビジョンが極めて曖昧、もしくはまったく欠落しているのが大きな特徴です。彼らは過去の経歴や資格については饒舌に語ってくれますが、これから何をどうしたいか尋ねると途端に口が重くなるものです。

まとめると、超ハイスペ人材というのは高い能力を持ち、競争や明確な目標(=難関資格取得など)には夢中になって取り組むけれども、具体的なキャリアのビジョンが非常に弱いかまったく無い人たちだというのが筆者の見立てです。

たとえば、医師国家試験に合格できる人はたぶん本気になって取り組めば8割くらいは司法試験にも合格できるはず。でも普通はそんなことはしません。単純に彼の志望するキャリアに必要ないから。でも、常に戦い続けねば気が済まない人はチャレンジしてしまうわけです。

とはいえ、超ハイスペ人材は真面目に実務経験を積むということが苦手なので、実際に良い職に就くことは稀です。組織に就職しても「きみ、医師と弁護士の資格両方持ってるから役員ね!」なんて抜擢されるわけでもなく、せいぜい弁護士資格に対して資格手当が支給されるくらいのもんです。

自然、なんとなく「ここは自分のいる場所じゃない」と感じ、超ハイスペ人材は自分を探す旅に出ます。だから中途採用市場で、そういう自分探し中の超ハイスペ人材によく邂逅するわけです。

筆者の経験でいうと、

「常人の2倍の能力があるけれども、自分のやりたいことがよくわかってない人」

「能力的には平々凡々だが、やりたいこと、実現したいことを強く意識している人」

を比べると、大成するのは圧倒的に後者だと思います。ホント、人間ってよくできてるなあと感心しますね。頭の良さって持って生まれたものでだいたい決まってしまいますけど、どれだけ仕事にコミットできるかで白黒つくんだったらもうそれこそ誰にでもチャンスはあるわけです。ぜったいそっちの方が社会は発展しますから。

ひょっとすると、そのことを誰よりも深く理解しているのは超ハイスペ人材自身なのかもしれません。彼らが旅に出るのは、より華麗な経歴を身につけることで、己の胸の中の空白を埋めようとしているような気もします。





以降、
超ハイスペ人材が政界に集うワケ
何でもできる人より、合わせ技で一本取れる人に







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Q:「メンタルトラブルを予防するにはどんな方法がありますか?」
→A:「無風状態が長く続かないような工夫が必要でしょう」



Q:「消費税上げて教育費無償は若い世代にとってアリですか?」
→A:「高齢者向けの給付削ってやるか、素直に財政再建しろよと思います」







雇用ニュースの深層

IBMが挑む終身雇用の壁


たぶん日本IBMは「終身雇用の壁にあいた穴」を探り当てようと頑張っているんでしょうが、その穴は特定の条件を満たした時にしかあかず、またそれを事前に予測するのは不可能でしょう。




人づくり革命成功のカギは労働市場改革を含めるかどうか

一億総活躍、働き方改革、そして人づくり革命。安倍政権は矢継ぎ早にスローガンを掲げているものの、まるで本丸の周囲をぐるぐるまわって足踏みしているようにも見えます。






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3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代


若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来
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城繁幸
コンサルタント及び執筆。 仕事紹介と日々の雑感。 個別の連絡は以下まで。
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