退職金制度は年功序列のバロメーター


月曜日のスーパーJチャンネル、ちょっとだけインタビューで登場予定。
また30秒くらいだろうから、全容はここでフォローしておきたい。
テーマは退職金制度だ。
最近、制度の見直しに踏み切る企業が増えているというもの。
理由は単純に、維持が困難になってきたからだ。

退職金と言うのは意外に歴史が新しくて、一般的に普及したのは戦後のこと。
長く勤めればお給料が上がるだけでなく、定年退職時にはこれだけ一括で支払いますよ
というサービスで、年功序列制度の一種のオマケである。
当時はそれだけどこの企業も人手が欲しく、しかも熟練労働者を欲していたわけだ。

ところで、そういう時代に退職金規定の多くは作られているため、当然ながら
かなり大甘な数字を基にしている。
業績や金利が低下する一方で、逆に(終身雇用が浸透することで)退職金額は増加。
そもそも当時と違い、今も変わらず「お願いだから定年まで残ってくださいね」
なんて考えている企業がどれほどあるだろうか。

というわけで、退職金制度もその役目を終えつつある。
一番ポピュラーでフェアなのは、ある時点で精算し、勤続年数に応じて分配する形だろう。
大手電機などのように、新入社員に「従来型の積立式か、給与に上乗せ支給式か」
を選ばせる会社もそう。
なんのことはない、同じように給料もリアルタイムに上乗せして支払え
というのが、僕がいつも言っていることだ。
退職金改革は、年功序列制度維持のバロメーターだ。

もっとも、「年功序列制度はもう全然ダメなので止めますね」なんて言っちゃうと
大騒ぎになるので、支給規定が明文化されている退職金だけ先に手が打たれるのだろう。
「将来出世させますよ」なんて年功序列のルールは、どこにも明文化されていないのだ。
こうして日本企業は「騙された!会社一筋で奉公してきたのに!」
というおっちゃん達の憤りを内包しつつ、また新たな若者を人柱として
迎え入れ続けることになる。

どんなにイヤだイヤだと駄々をこねたところで、既にレールの無い時代は始まっている。
素直に人柱になるか、それとも荒野に道を見出すか。
決めるのは自分自身だ。

リストラするにも金はいる

5月号のVoiceで、一部の大手電機の苦境が取り上げられている。ちなみにタイトルは
「事業再編すらできない日立」
内容は日立だけでなく、電機全般の話だ。
(実際には日立は営業黒字だし、もっと危険な会社が他にある)

要約すると、新興国の工業化で総合電機なんて立ち行かなくなるのは明らかだったのだから
とっとと大リストラして選択と集中しておくべきだったのに、バカなトップが手を汚すのが
イヤでやらなかった。リストラしようにももう金が無い。事業売却しようにも買い手がいない。
06年が最後のチャンスだったが、もうお先真っ暗、という話。
もうこれでもかってくらいにこき下ろしている。
余談だが、今週号のダイヤでも同じ筆者が日の丸半導体をばっさり切り捨てていて、
要約すると「エルピーダくらいしか残らない」。
いやもう、明るい光が全然見えないんですけど。
本当の辛口とはこういうものを言うのだ。

でも、まったくもってそのとおりだろう。3年以内に電機は大再編するはずだ。
前回の一連の再編も、00年前後の平成不況の底で行なわれた。
あの時は半導体中心に行なわれただけだったが、今回はより大規模に行なわれるだろう。

付け加えるなら、経営者がアホだったのはそうだろうが、痛みを伴う改革を嫌がったのは
労組も同じであり、結局のところそのツケをみなで仲良く払うことになるのだろう。
あ、でも団塊世代はギリギリ逃げ切れたか。

本書では、終身雇用・年功序列型組織(いわゆる垂直統合型の組織だ)で発展した
日本がいつの間にかガラパゴスと化し、緩やかに衰退していく様が描かれる。
特に電機に就職を希望する若い人にはオススメしたい。
電機だけを取り上げた書ではないが、IT化によって技術蓄積が無力化していく様子が
よくわかる。
「数年前まで下請けメーカーだった台湾企業が、一躍世界シェアトップに躍り出る時代」に
もはや年功序列は何の価値も持たない。




ガラパゴス化する日本の製造業
宮崎 智彦
東洋経済新報社

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民放労連の取り組み

民放労連が下請け格差解消のために配慮を見せ始めたようだ。

最初の一歩ではあるが、最低賃金協定など、目の付け所が良い点もある。
もっとも、課題は多い。
まず、労組の使命である「昇給賞与獲得」とこれら下請け待遇向上は、真っ向から
矛盾するものだ。それをどうクリアしていくのか。

クリアする気がないから「そういうのは全部経営者が悪いんですよ」
なんて誤魔化そうとしているのが連合やその御用政党なわけだ。
少なくともそういう姿勢は見られないので、どうも民放労連は連合とは違う
メンタリティなのかもしれない。

ちなみに、最終的な課題は、同一労働同一賃金の実現である。
というと原資を全人数で頭割りして均等支給するようなイメージがあるが
そりゃ共産主義だ。仕事内容によって待遇差が生じるのは当たり前の話。
格差自体が悪だなんて言ってるやつはとっとと北朝鮮にでも行けばいい。

僕が言っているのは、その業務内容によって生じた格差に、合理的な
理由があるかどうか。なければそれは単なる身分制でしかない。


つまり最終的なゴールとは、担当する業務内容ごとにある程度の相場が形成され、
身分によらずに上下できるシステムの整備だ。
その上で最低賃金を設定するなら、テレビ局なら2000円くらいには設定できるだろう。
(今の最低賃金ラインは身分制の枠内での話なので、抜本的な解決ではない)
そうすれば製作現場のワープア問題なんて解消され、それなりの待遇と
(昇給昇格があるので)やりがいのある業界に再生でき、人手不足も解消するはず。
テレビを再生したいなら、まずは職場に夢を取り戻さないと。
今の時代、既得権防衛だけでなく、そういった前向きな取り組みも必要であるということは
労組自身もよくわかっているはずだ。

『オルタナ No13』


環境やCSR関連のビジネス情報誌オルタナ13号、
「U-40が日本の政治を変える」コーナーに、モノ言う若者の会のメンバーである
寺尾美香嬢が登場しているのでご紹介。
もしも若者の投票率が上がったら…というお話。

留学生が採用されない理由

留学生のエンジニア採用が低調であるとの調査結果。
新刊でも触れていることなので、簡単にフォロー。

留学生、特にアジアからの留学生受け入れについては、国も重要性を認識して
いろいろと支援策をとっている。高等教育の質は、競争と多様性によって磨かれることは
この分野におけるアメリカの一人勝ちの状況を見れば明らかだからだ。
グローバリゼーションの進む中、高等教育の重要性はますばかりだ。

と、ここまではいい。問題はここからで、当の日本企業の側がいまひとつ採用に乗り気
ではないのだ。大きく分けて、理由は2点。

まず、留学生と企業の労働観の違いが大きい。
日本企業、特に製造業は保守的な傾向が強く、今でも終身雇用至上主義な風土を
残している企業が少なくない。要するに、新卒で学校推薦で入社して、30年以上
滅私奉公して、最後は「わが生涯に一片の悔いなし」と言ってくれるような
若者が理想なわけだ。
当然、そんな変態は日本人にしかいないので、そういった企業は留学生を敬遠
する傾向がある。

そしてもう一つの理由は、いつも言っている“年齢”問題。
韓国以外のアジア諸国にはそもそも年功序列と言う発想がないので、いくつかの大学を
遍歴したり、あるいは一時的に企業で働いたりして、博士課程なのだけど30歳
なんて人が結構いる。

「学ぶことそれ自体に年齢は関係ない」というのは世界的常識なのだが、ここ日本
は年功序列というまったく別の価値観が支配する国。人間の価値は年齢で決まるのだ。
「終身雇用までは求めない、若い間だけ頑張ってくれればいい」という寛大な企業でも、
さすがに30近い学生を採ることにはアレルギーを感じてしまう。

まあ、要するに受け入れ側の企業内の流動化を図らずに、いくら高等教育、専門教育
の拡充を叫んでも、効果は限定的ということだ。
日本人の高学歴者がフリーターをやっている現実も、根っこは同じである。


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城繁幸
コンサルタント及び執筆。 仕事紹介と日々の雑感。 個別の連絡は以下まで。
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