雑感@経済危機対策

10日発表の政府の経済危機対策について。
環境対策、資源政策などで見るべき部分もあるが、全体的にはなんというか、玉虫色である。
とくに雇用は新味がほとんどない。一言で言えば、単なるバラマキだろう。
バラマキが何でダメなのかというと、それが本質的な改革につながらない対症療法に
過ぎないからだ。
火事になっているのに火を消さないでエアコンつけようとしているような
ものだから。それで喜ぶのは、もうすぐ寿命のお爺ちゃんだけだ。

ツケの先送りと言ったほうが、若い人には琴線に触れるか。

たとえば雇用調整金をばらまいて、それが労働市場の流動化につながるだろうか。
はじき出された人はむしろ参入のハードルが上がるだけ。極論すれば、次世代の負担で
逃げ切りたい人の背中を押してあげるようなものだ。
再就職のための職業訓練にしたって、そういうことは日本は以前からそれなりに力を入れて
いる。問題は送り出す側でなく、受け入れる企業の側だ。
価値観が硬直しきっているため、「若くてしかも職歴アリ」みたいなものすごい
ストライクゾーンの狭い球にしか手を出そうとしない点にあるのだ。

ついでに言うが、少子化対策で「子育て応援特別手当を一年間だけ拡大」というのもひどくて
一年間だけばらまいてどれだけ意味があるというのか。
本質的な問題は、日本が先進国中最大の男女間賃金格差があり、非正規雇用比率が
高いこと。
つまりここでも、賃金基準が昭和型に硬直していることが原因なのだ。
今回の対策には、こういった本質に迫るものが(少なくとも雇用・少子化に関しては)
まったく見えてこない。
そういう意味で、個人的にはとても残念に感じている。

我々が二十歳の頃。「公共事業をやればやるだけ社会はよくなるんです」と主張する人達が
大勢いて、実際盛大にばらまいた。気が付いたら財政は危機的状況に陥り、しかも構造的な
課題は何一つ解決しておらず、むしろ悪化している。
勝ち組といえば、そういったバラマキを主張し、そして無事に逃げ切った当時の50代だけだ。

もう日本には後がないのだから、90年代の教訓を忘れるべきではない。
ただのバラマキではなく、次代につながるような構造的改革にこそ、最後のカードは切るべきだ。

天地人

先日のエントリーに関連して、今月号の「月刊The21」。
大河ドラマ「天地人」などの題字で有名な書道家の武田双雲氏のインタビューが面白い。
氏は新卒で入社した会社を3年で辞めているのだが、きっかけの一つが
「通勤ラッシュがいやだったから」だそうだ。
(最後は自腹でグリーン車で通ってたらしい)

「この軟弱ものめ!」とかなんとか上司に言われてそうだが、その後のご本人の活躍を
みるに、少なくとも上司たちよりは果敢に見える。
ちなみに、氏のいた会社はよりによってNTTである。
いやあ、合わないだろうなあ(笑)

余談だが、氏とは不思議な縁がある。
実は僕の名刺は、氏に書いてもらったもの。
昔、まだそんなに出ずっぱりにならないころに依頼して書いてもらい、気に入って今でも
使っている。もちろん、3年でNTT辞めているとか、3年で辞めた若者~なんて本を
後で書くとか、そんなことは互いに知るよしもない。

たまに「達筆ですねぇ」なんて言われることがあるが、僕自身はかなりの悪筆なので
あしからず。

社会起業が流行る理由

今週号のダイヤモンドは「社会起業家特集」だ。
定義は難しいのだが、一定の社会貢献と収益を両立させたビジネスモデルを持つ
起業のことで、NPOと営利企業の中間的な存在と考えればいい。
一昨年あたりから話題になっている企業形態だ。いや、価値観というべきか。
こういう価値観の登場は、やはり昭和的価値観の凋落とリンクしているように思う。

90年代末以降、日本社会では2つのメッキが剥げ落ちた。
一つは企業というメッキだ。これについては特に説明は要らないだろう。
出来るだけ大きな会社に入って長く勤めた方が得だという価値観は、ある程度の
リテラシーのある人なら既にもってはいないはず。

そしてもう一つのメッキが、東京だ。
昭和の時代とは、企業の時代でもある。野口悠紀雄氏の言うように高度国防国家の
枠組みだけが生き残って高度成長国家となり、生産を軸とした社会作りがなされてきた。
雇用面でこれをサポートするのが終身雇用というフレームであり、労働者は企業に
縛り付けられ、イニシアチブは完全に企業側に握られた。総合職男子中心主義、
残業・転勤地獄といった日本名物は、企業による統治の副産物だ。

そして、それらを体現した都市こそ東京だ。企業活動のみを重視し、通勤インフラ、
労働環境などすべて犠牲にした企業都市。個人的には、あの通勤電車の詰め込みぶりこそ
昭和的価値観の象徴だと思う。

さて、2つのメッキが落ちた以上(少なくともそれに気づいた人は)もうそれらに
惑わされることは無い。企業戦士以外の生き方を、東京以外の地ですればいい。
そういった出発点から生まれた様々な生き方の一つがロハスであり、スローライフ
であり、社会起業なのだ。

本特集では、そういった若者たちのいろいろな活動が紹介される。雑誌なので網羅的
だが、興味のある人にはコチラをお進めしたい。

社会起業家に学べ! (アスキー新書 69)
今 一生
アスキー・メディアワークス

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困った時の○○頼み

本日、日経の春秋欄に「創業家のメリット」について書かれている。
不況時に錦の御旗で乗り切ろうという解説だ。
面白いので人事的に解説。

言うまでも無く、こういう話題が出るくらいだから、上場企業のほとんどは
内部昇格社長である。つまり、サラリーマンの出世競争でタイトルを手にした
キング・オブ・サラリーマンというわけだ。

彼らは堅実で合理的と言うサラリーマンらしい長所を持つが、同時に
「組織の論理に弱い」というサラリーマン的短所も強烈に持っている。
そりゃそうだろう、年功序列という連続性の中で勝ち上がってきたわけだから。
結果、先輩の顔に泥を塗るような改革や、元上司に引導を渡すようなリストラは
やりたがらない。

それに、サラリーマン生活の最後のご奉公として社長を務めている人が大半なので、
汚れ役をするよりは先送りで誤魔化そうとする人が多いのも事実。

その点、年功序列と別の論理で昇格してきた創業家出身者は、上下とのしがらみが
少ない存在だ。さらにいえば、今でもちょこっとは一族で株を持っているものなので
ゴーイングコンサーンを意識した経営をする傾向がある。
もちろんアホだとしょうがないので、一族の中でそれなりの選抜と教育を行なっている
ことが大前提だが。

ところで、こういった創業家の駒を持たない企業は、危機に際してどう手をうつのか。
外部から年功序列的しがらみの無い人材をスカウトしてきたのがソニーであり、
年功序列的しがらみの最上位に位置するベテランを引っ張り出してきたのが日立と
いうわけだ。

製造業派遣規制の是非

以前、議論になっていて引き取った「製造業への派遣禁止問題」について。
つまるところ、プロセスの問題ではないかと感じている。
派遣自体を規制してから同一労働同一賃金の議論をするか、その逆か。

確かに「既得権見直しは難しいので、ただの現状追認にしかならないんじゃないか?」
という声もある。
だが、そういう人は「失業者を100万人単位で増やせば、雇用改革の後押しになる」
と言っているようにしか聞こえないのだが…
僕には、派遣労働者の多数が“それ”を望んでいるとはとうてい思えない。
当の派遣労働者のユニオンも、再規制には反対の立場だった。

たとえば、である。工場の前で解雇撤回を求める人たちや、派遣村に集まった人たちに
「クビを受け入れろ、正社員でしか働くべきではないのだから」
と言えるだろうか?僕はちょっと言えない。

余談だが、件の派遣村は途中から明らかに“迷走”したように思う。
当初、彼らは安易な解雇に反対し、「雇用の維持」を求めていた。
これは関係者があちこちのメディアで言っていたことでもあり、僕もまずはそれが
筋だと思う。

理解できないのは、なぜか途中から逆方向に流され出し、「派遣禁止」自体を
アピールしはじめたことだ。
まあ好意的に解釈するなら、善意のグループに政治的利用をもくろむグループが
合流し、流れを変えてしまったのだろう。

僕は賃金制度のゼロリセットを主張しているが、世の中には、規制の秩序すべてを
ゼロリセットしようとする勢力がいるということに留意すべきだろう。
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「10年後失業」に備えるためにいま読んでおきたい話


若者を殺すのは誰か?


7割は課長にさえなれません


世代間格差ってなんだ


たった1%の賃下げが99%を幸せにする


3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代


若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来
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城繁幸
コンサルタント及び執筆。 仕事紹介と日々の雑感。 個別の連絡は以下まで。
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