『THE 21』 6月号


特集『不況をチャンスにする仕事術』
インタビュー掲載中。

内容を少しフォロー。
まあ要するに、のんべんだらりと過ごさずに、一定の自己投資もしといた方がいいよと
言う話なのだが、そういう話をするときまってされる質問がある。

「何をやったらいいのかわからないのですが…」

若手のビジネスマンだけでなく、東大生からもよく聞かれるセリフだ。
恐らく、こういう人は現状に対する認識、基礎となる土台が不足しているのだと思われる。

そこで、そういう人は、とりあえずは本を読むといい。
世の中を俯瞰するために、経済誌+ノンフィクション・経済書をプラスα。
もちろん、経済誌の代わりに最初は新聞でも構わない。
これらは世界地図となり、自分の住む世界を照らしてくれるだろう。
そして、各自の専門分野に関する書を月に数冊程度、読むといい。
これはGPSとして、自分の位置を教えてくれるはずだ。
そういうことを半年続けてみれば、なんとなく課題や方向性は見えてくるだろう。

「自分の専門分野がわかりません」という人は、とりあえずママに相談だ。

労働者を受け入れるということ

虚栄の帝国ロシア―闇に消える「黒い」外国人たち
中村 逸郎
岩波書店

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本日、テレビタックルに録画インタビューで出演予定。
テーマは移民だ。問題の構造については以前書いたとおり。移民議論の前に労働市場の
流動化、効率化が必要だという話。

さて、直接移民問題とは関係ないのだが、外国人労働者に関する書籍を一冊紹介。
労働問題を考える上で、示唆の多い一冊だ。

移民にしろ出稼ぎ労働にしろ、受け入れ側には一定のコストが発生する。出稼ぎ労働者の
未就学児童など放置していた日本も、帰国費用の負担など一定の配慮はみせている。
そういうコストを一切切り捨てた国がロシアだ。
02年、ロシアは旧ソ連邦諸国の労働者が合法的に就労する手続きを意図的に厳しくし、
結果的に彼らが不法就労せざるをえないように法改正した。
理由は、彼らに社会的なインフラを与えないためだ。
ロシアに滞在する出稼ぎ労働者は1500万人以上、なんとその9割が不法就労である。
あのアメリカで不法滞在がだいたい一千万人強だというから、ロシアは事実上の
不法就労数No1国家になったわけだ。

こうしてロシアは、労働法の枠外で安く使え、失業給付も医療保障も負担する必要がなく、
さらには不況時にはとっとと追い出せる便利な労働力を手に入れることとなった。
仕事はロシア人が嫌がる低賃金の重労働。怪我をして働けなくなったら追い出し、死んだら
こっそり埋めに行く。もうメチャクチャである。
いや、そういうところで働かせてもらわざるをえない旧ソ連邦諸国の経済状況もメチャクチャだが…。

さらにロシアは、こうして囲い込んだ“奴隷”に対し、国はもちろん社会全体でたかるのだ。
警察は摘発のかわりに毎週巡回して袖の下を集め、雇い主はピンハネし、市民は彼らに
名義を貸す。そうやって元同国人にたかって復興したロシアは虚栄の帝国に過ぎないと
著者は断言する。
不法就労という形をとることで合法的に負担をパスしているわけだ。
タジク人からみれば悪魔かもしれないが、ロシア人からすればプーチンは名君なのだろう。

同様のケースに中国がある。
中国は都市と農村部の戸籍を分け、教育や医療と言った社会インフラを(都市部では)後者
には与えず、農民工として労働力だけを使い捨てている。ロシアがやったことを、自国内で
やっているようなもので、そりゃ暴動も頻発するわけだ。

「やはり共産圏は民度が低い」と思った人もいるかもしれない。
でも、自国民を正規と非正規雇用にわけて、後者を使い捨てに
している日本も、あまり他国のことは笑えない。


人の振り見て我が振り直せだ。
移民を入れる前に、最低限、労働市場の流動化と同一労働同一賃金くらいは
実現しておくべきだろう。

アゴラ・シンポジウム第1回「創造的破壊の時代」

上記のシンポに参加させていただくことになったので、お知らせ。
5月30日(土)13:00開場 詳細はコチラ

第1セッション「大不況をいかにして突破するか」13:30~15:30
に参加予定だ。

新刊でも取り上げたとおり、日本の様々な課題の根っこには、間違いなく日本型雇用
が関係している。いや、そのものといってもいい。
たとえば少子化にしても、男性総合職、専業主婦といった昭和型家族像を中心に
あらゆるシステムが組まれている中、昇給鈍化や非正規雇用の増大といった理由で
男性の賃金が伸びず、システムが機能不全を起こしていることが原因だ。

本来なら女性の社会進出が進んで旧来型の家族像自体変化していくべきだが、
日本では労働市場が硬直しているために、その部分はいつまでたっても変わらない。
ものすごく大雑把にいえば、
「実家並みの暮らしを保証できる男を求める女性と、自分の父親との差に思い悩む男性」
といった構図か。

フランスや北欧では「女性の社会進出と(それに伴う)出生率の反転」は30年ほど前に
始まっているが、日本社会は男女雇用機会均等法の成立前と、本質的には何も変わっては
いないのだ。

こういった問題の原因療法を行なおうとすれば、どうしても雇用は避けては通れない。
そういった問題意識を発信できればと考えている。

勉強しすぎるとマイナス評価される国

ポスドク(博士号取得者)の採用に対して、国が500万を助成してくれるらしい。
間違いだとは言わないが、ものすごく違和感がある。
普通、この手の公的助成とは、労働市場で不利になるグループに対して行なわれるもので
たとえば現行のトライアル助成では、
中国残留邦人等永住帰国者、 障害者、日雇労働者、ホームレス
といったグループが対象に含まれている。
博士にその30倍もヒモを付けないと労働市場からはじき出されるという国は、
どこか狂っているとしか思えない。

ポスドク問題の原因は二点。
�@大学内の人事が硬直化しきっていてポストが慢性的に不足
�Aかといって企業は年功序列なので新卒学士というターゲットゾーンから離れるほど
 興味がない

�@は特に国立大がひどく、某国立大なんて教授ポストの任期制導入にあたり、90年代以前に
ポストについた教授は新制度の対象外というムチャクチャな内規を教授会が作った
というから笑えない。
(しかも法学部主導で推し進めたらしいから、やっぱり法学脳というのはアレだ)

もっとも、企業が高学歴者を採るようになれば結果的に大学内部も流動化するはずなので
本丸は�Aだろう。ここを崩すには、いつも言っているように年齢給を廃して流動化しかない。
端的に言えば、一定の序列以上のホワイトカラーで年俸制が主流となれば、高学歴者に
対するニーズは幅広いと思われる。要するに、年齢給×ウン十年という処遇では企業が
二の足を踏んでいるわけだ。

それにしても、専攻にもよるが、博士と言うのは育成にそれなりの税金がかかっている。
金かけておいて採用していただくのにまた金一封上乗せするなんて
年功序列は まったくもってくだらないシステムだ。

東南角部屋二階の女

テレビにありがちな浮世離れした職場も、生活感の無いだだっぴろいマンションも
出てこない。現代日本の“普通”を描いた作品だ。

メインとなる登場人物は3名。若手のサラリーマンとその先輩、そしてひょんなことから
知り合いとなった女性一人。彼らはそれぞれ、違った現実に直面し、様々な閉塞感を
抱いて生きている。
ふとしたきっかけで、3人は取り壊し寸前のボロアパートで共同生活を送ることになる。
さあ、3人とアパートの運命やいかに、というのが大まかなストーリーだ。

ここまでなら、テレビドラマでもありそうな話ではある。
ただ、3人の閉塞感と言うのが、実に実に等身大かつタイムリーなのだ。
会社内に未来が見出せない若手社員、仕事と現実の板ばさみになる女性、
三十路に入り、個人の意思を超えた責務を前にして逡巡する青年。

これらのいづれにも覚えが無いよという人は、少数派なのではないか。
いや、昔は結構いそうな気もするが、レールが崩れてしまった今となっては
各自で進み方を考えないといけないわけだ。

そういう意味でも、それぞれの結論もあくまでも等身大に徹している。
ここでは直接触れないが、あえて一人だけあげるとすれば、加瀬亮演じる若手の出した結論
が一番好きだ。
はっきりとはイメージできないけれど、書きなぐっているうちに
綺麗な絵になるかもしれない。

そんな生き方である。

「恋人にしろ仕事にしろ、彼はすべてを失ったじゃないか、やっぱり何はさておき
辞めない事こそ肝心なのだ」
なんて言う人もいるかもしれない。
でも、本当にそれがクレバーな選択なのだとすれば
今の日本はもう少し明るい社会であるはずだ。


今ふと気づいたのだが、もう一つの軸として、ボロアパートとそこに関係のある老人たち
という存在があるように思う。
彼らは昭和そのものではあるが、けして昭和的価値観に染まって生きてきたわけではない。
劇中、主人公(西島秀俊、加瀬亮)以外にも、組織で昭和的に生きる人が何人か登場するが
彼らはみな追い詰められたギリギリの雰囲気を漂わせている。
その点、老人や畳屋のオヤジといったアウトサイダーたちは、対照的なまでに朗らかだ。
今を生きようとする若者にとって、とても示唆に富む作品だろう。

東南角部屋二階の女 (プレミアム・エディション) [DVD]

トランスフォーマー

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城繁幸
コンサルタント及び執筆。 仕事紹介と日々の雑感。 個別の連絡は以下まで。
castleoffortune@gmail.com
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