商工にっぽん4月号


特集「働かない中高年」問題をどうするか
『企業は年齢給を廃し、人材流動化を促進する他ない』寄稿。

まあいつも言っていることなのだが、注目すべきは

『次代の子供たちのために、いま生産性の低い中高年を切る』

と言う刺激的なタイトルの論。舩木氏という若い経営者のものだ。
素晴らしい。
「年齢は関係ない」だとか、「適所適材だ」とかきれいごと言う前に、規制を緩和
しろという意見で、もう何も付け加えることはない。
もっとこういう若く果敢で聡明な論者が増えてくれることを望む。
解雇規制の撤廃を含む、徹底した人材流動化以外に、格差是正も成長も
ありえないのだから。


「椅子の取り合いは良くないと思います」という意見は、小学生レベルの言い訳
なので無視しておいて構わない。

『世界金融崩壊』


最悪のタイミングで出てしまった本である。
アメリカ型の金融資本主義はダメだ、だから対米追従しか眼中に無かった構造改革も
全部ダメだ、日本型経済のよさを見直そう、というのが本書の主張なわけだが、
そのダメの本丸であるアメリカより、当の日本が大コケしている最中、
とっても説得力がない。


著者が前半で言うように、確かに米国の金融依存体質に問題があったのは事実だが、
それに国ぐるみでおぶさっていたのは日本や中国といった輸出主導型の国も同じわけだ。
先進国入りを目指す中国はしょうがないとしても、とっくに世界第二位の経済大国に
上り詰めた日本が同じビジネスモデルにしがみつくのは無理がある。

その無理が表に浮かび上がったものが、19世紀イギリス炭鉱労働者並のワークライフバランス
の悪さであり、正規と非正規の格差であり、長期の経済停滞であり、社会保障と財政の悪化
であり、そして金融危機を加速した円安バブルだ。

そもそも、外国人が買ってくれないと一万円すら越えられないのが日本の株式市場
の実情なわけで、そんな国で「外資を制限しよう」と提案する感覚が理解できない。

この手の主張は割と50代以上から聞くことがあるが、共通しているのは
将来へのビジョンがまるで欠落していることだ。
財政危機をどう乗り越えるのか、そして経済をどう成長させるのか。
ノスタルジーだけで語られても、若者は困るのだ。

ちなみに著者は最後の一文で、実にシンプルな対策を書いてくれている。
「まずは、世界を直視することだ」
だってさ!

移民議論は時期尚早

移民議論はあちこちで書いているが、重要なことなのでまとめておきたい。

出生率が上がらないので移民を持ってくるというのは、典型的な対症療法に過ぎない。
根本的な原因は
�@労働市場の歪みから若年層に負担が集中し、晩婚化
�A女性の出産と仕事の両立が困難で、出産に伴う世帯の機会損失が莫大であり
 完結出生児数まで低下中
�B社会保障制度の実質的破綻

の三つで、これをメンテせずにいくら移民を入れたところで、
大穴のボコボコ開いたバケツに水を入れるようなものだ。
「移民自体イヤだ」なんて保守派な意見を言うつもりは無いが、まずは構造的な対策を
採るべきだろう。
それでも出生率の向上に限界があるのなら、そこで議論をすればいいだけのことだ。

ちなみに、上記�@�Aとも、背景には年功序列制度が直接的に関係している。

だから雇用流動化だけでもかなりのインパクトはあるはず。
保守派の中には「年功序列は日本の美徳」なんて頭の悪いことを言う人もいるが、
わけのわからない美徳と、外国人移民が大挙流入する事態と、どちらが日本にとって
望ましいのか、冷静に考えてみるべきだ。

ところで、かんぽ騒動では
「ハゲタカ外資から日本国の資産を守ろう」とバカ丸出しな陰謀論
ではしゃいでいた民主党が、一転して移民問題では
「日本国は日本人だけのものではない」
なんて発言するほどリベラルな姿勢を見せる点はちょっと理解できない。
政権が見えてきてちょっと浮き足立ってるんじゃなかろうか。
政権与党を目指すのなら、何でも批判すればいいってもんじゃないですよ。

退職金制度は年功序列のバロメーター


月曜日のスーパーJチャンネル、ちょっとだけインタビューで登場予定。
また30秒くらいだろうから、全容はここでフォローしておきたい。
テーマは退職金制度だ。
最近、制度の見直しに踏み切る企業が増えているというもの。
理由は単純に、維持が困難になってきたからだ。

退職金と言うのは意外に歴史が新しくて、一般的に普及したのは戦後のこと。
長く勤めればお給料が上がるだけでなく、定年退職時にはこれだけ一括で支払いますよ
というサービスで、年功序列制度の一種のオマケである。
当時はそれだけどこの企業も人手が欲しく、しかも熟練労働者を欲していたわけだ。

ところで、そういう時代に退職金規定の多くは作られているため、当然ながら
かなり大甘な数字を基にしている。
業績や金利が低下する一方で、逆に(終身雇用が浸透することで)退職金額は増加。
そもそも当時と違い、今も変わらず「お願いだから定年まで残ってくださいね」
なんて考えている企業がどれほどあるだろうか。

というわけで、退職金制度もその役目を終えつつある。
一番ポピュラーでフェアなのは、ある時点で精算し、勤続年数に応じて分配する形だろう。
大手電機などのように、新入社員に「従来型の積立式か、給与に上乗せ支給式か」
を選ばせる会社もそう。
なんのことはない、同じように給料もリアルタイムに上乗せして支払え
というのが、僕がいつも言っていることだ。
退職金改革は、年功序列制度維持のバロメーターだ。

もっとも、「年功序列制度はもう全然ダメなので止めますね」なんて言っちゃうと
大騒ぎになるので、支給規定が明文化されている退職金だけ先に手が打たれるのだろう。
「将来出世させますよ」なんて年功序列のルールは、どこにも明文化されていないのだ。
こうして日本企業は「騙された!会社一筋で奉公してきたのに!」
というおっちゃん達の憤りを内包しつつ、また新たな若者を人柱として
迎え入れ続けることになる。

どんなにイヤだイヤだと駄々をこねたところで、既にレールの無い時代は始まっている。
素直に人柱になるか、それとも荒野に道を見出すか。
決めるのは自分自身だ。

リストラするにも金はいる

5月号のVoiceで、一部の大手電機の苦境が取り上げられている。ちなみにタイトルは
「事業再編すらできない日立」
内容は日立だけでなく、電機全般の話だ。
(実際には日立は営業黒字だし、もっと危険な会社が他にある)

要約すると、新興国の工業化で総合電機なんて立ち行かなくなるのは明らかだったのだから
とっとと大リストラして選択と集中しておくべきだったのに、バカなトップが手を汚すのが
イヤでやらなかった。リストラしようにももう金が無い。事業売却しようにも買い手がいない。
06年が最後のチャンスだったが、もうお先真っ暗、という話。
もうこれでもかってくらいにこき下ろしている。
余談だが、今週号のダイヤでも同じ筆者が日の丸半導体をばっさり切り捨てていて、
要約すると「エルピーダくらいしか残らない」。
いやもう、明るい光が全然見えないんですけど。
本当の辛口とはこういうものを言うのだ。

でも、まったくもってそのとおりだろう。3年以内に電機は大再編するはずだ。
前回の一連の再編も、00年前後の平成不況の底で行なわれた。
あの時は半導体中心に行なわれただけだったが、今回はより大規模に行なわれるだろう。

付け加えるなら、経営者がアホだったのはそうだろうが、痛みを伴う改革を嫌がったのは
労組も同じであり、結局のところそのツケをみなで仲良く払うことになるのだろう。
あ、でも団塊世代はギリギリ逃げ切れたか。

本書では、終身雇用・年功序列型組織(いわゆる垂直統合型の組織だ)で発展した
日本がいつの間にかガラパゴスと化し、緩やかに衰退していく様が描かれる。
特に電機に就職を希望する若い人にはオススメしたい。
電機だけを取り上げた書ではないが、IT化によって技術蓄積が無力化していく様子が
よくわかる。
「数年前まで下請けメーカーだった台湾企業が、一躍世界シェアトップに躍り出る時代」に
もはや年功序列は何の価値も持たない。




ガラパゴス化する日本の製造業
宮崎 智彦
東洋経済新報社

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城繁幸
コンサルタント及び執筆。 仕事紹介と日々の雑感。 個別の連絡は以下まで。
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