外資系企業で成功する人、失敗する人

外資系企業で成功する人、失敗する人 (PHP新書)
津田 倫男
PHP研究所

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以前、どこかの勉強会で話をした時、某外資系エコノミストの方に
「びっくりしました。仕事しないマネージャーなんて、ホントにいるんですか?」
と聞かれて僕もびっくりしたことがある。
いや、大企業の場合、そっちの方が多いという意見もありますが。
少なくとも、向こうのカルチャーではそういう人は稀らしい。

そういう意味では、本書はとてもバランスが良い。
日系・外資双方に勤務経験のある著者が、どちらかというと日本人目線で外資の作法を
解説してくれる。

著者は「外資はけしてドライではない。むしろドロドロした面は日本企業以上だ」
と述べる。
確かに、絶対的人事権を握る上司への露骨なゴマすり、ピーアールしなければ手柄と
認められず、ばれなければ失点とされないカルチャーは、一見すると日本企業よりも
ウェットだと感じる人もいるだろう。

ただし、やはりそれはドライなのだ。
職場という日常空間において、すべて目に見える形でドラマが進行するのだから。
本当のドロドロは、表には出ない裏に溜まるものだ。

日本企業では人事権の所在が曖昧であり、評価の基準は誰にもわからない。
人事部が一定の人事権を握っていることは事実だが、彼らはどちらかというと評価の分布を
作ったり、「10年目で昇級は○割」という内規を作ったりするだけで、個人の顔は
わからない。

つまり一従業員からすると、なんとなく勤続年数に応じて給料が上がり、30代のどこかで
幹部になる人なれない人の分岐点が訪れる世界だ。
それはとても閉鎖的で、ウェットな空間である。
たとえば、雇用調整の際。
アメリカ人に
「やあケンジ、君の仕事が無くなってしまったよ。まあ次の会社でも頑張れよ」
と言われるのと、上司から
「自己都合で辞めてくれ。断ると山口支店に行って貰うよ」
と言われるのと、どっちがドロドロだろうか?
そんなもんである。

著者は本書を読んで、合わないと思った人は外資への転職は控えたほうが良いと総括する。
その通りだろう。
ただ、今後は望む望まないに関わらず、日本企業自体もドライな方向に進むだろう。
ドロドロは、年功序列という暗黙ルールの下、終身雇用というひどく風通しの悪い空間に
溜まったよどみだ。それらが崩れていく中で、徐々に湿気も失せていくと思われる。

そういう意味では、転職リトマス試験紙というよりも、
若手にとってはキャリア必読書というべきなのかもしれない。

次世代のことなんて何も考えちゃいないモリタク

先日もちょっと書いたが、今月号の『The21』で、またまたモリタクが暗躍している。
リアルタイムで森永卓郎の二枚舌ぶりが見られるのは良い機会なので紹介。

まず、つい先月末、森永は日経BPの連載で、与野党の景気対策についてこんな風に
総括している。要約すると、

自民党は15兆円に抑え、一回こっきりの緊急対策だが、民主党は恒久的な対策である。
自民案には多くは望めそうに無いが、民主案は財政負担が大きすぎるからリスクも大きい。
よく考えて投票しましょうね。

という、当たり前だがなんとも締まりの無い駄文である。
この中では以下の部分が、本人の正直な感想だろう。

はたして、リスクを避けてまずは日本経済の止血をするのがよいのか、
それともいっそのこと大手術をしたほうがよいのか。
正直言って、わたしには判断がつきかねる。


ところが、ほぼ同じ時期に書いたと思われる『THE21 六月号』の連載コラムでは、
同じテーマで全然違うことを言ってのける。
(以下要約)
日本経済全体のGDPギャップを考えて、最低40兆円はばらまくべきなのに
麻生政権は実行力に欠けるからできない。
しかも選挙後は税制の抜本改革をやるといっているから、きっと増税するだろう。
自民政権だといづれツケが回ってきますよ。

正直、同じ人物が同時期に述べた言説とは思えない。
最大の違いは“バラマキ”に対する全面的な肯定だろう。
民主代表選で両候補が国債依存を強く戒めていたこととは、正反対だ。

さらに凄いのはここからだ。
森永はそのバラマキ財源として、埋蔵金や政府紙幣など、国債同様にツケが先延ばし
できるものばかり提示してみせる。その一方で、
「自民党はすぐに増税しますよ、だから皆さん自民に入れると損ですよ」と総括してみせる。

要するに、森永卓郎が主張しているのは、
「民主党のほうがいっぱいバラマいてくれますよ、痛みを伴う増税や
構造改革なんてもってのほか、ツケはすべて若年層に払わせましょうね」

ということだ(民主は別にバラマキを良しとしているわけではないのだが)。

これらの発言のブレから見えてくるのは2点。
やはりこの人にはなんの理念も理想もなくて、その場その場で空気を読み、受けそうな風呂敷を
広げているだけなのだろう。民主が好きだから応援しているというわけでもない。

「後先考えるな、50兆くらいばらまけ!」なんて日経で書くとさすがに仕事干されるので
曖昧な状況分析で誤魔化しつつ、若手読者の多そうな『THE 21』では勢い良く
塩をまいてみせる。バカにされているわけだから、編集者も読者も怒ったほうがいい。

そしてもう一点は、中でも若者視点というものはカケラも持ち合わせていないということ。
以下のセリフには、彼の醜い本性がにじみ出ている。

では、なぜ日本はそういう思い切った経済対策をやらないのか。それは、
今の麻生内閣には、財務省の意向が強く働いているからである。(中略)
不況で苦しむ国民を救うよりも、財政を健全に保つことのほうが、
財務官僚にとっては重要だというのだから、呆れてものが言えない。


この経済学者いわく、既得権者に報いるためなら、財政規律は放棄すべきらしい。
彼の頭の中では、とりあえず2、30代は国民ではないようだ。
森永はよく「派遣さんやフリーターは可哀そう」と同情して見せるが、そのくせ流動化は
もちろんのこと、いかなる改革にも反対で、ツケはその若者に払わせろ
と説くのだから、もうこのおっさんには呆れてものが言えない。

彼が興味があるのは自分の商売、お金儲けのことだけなのだ。
格差問題も、美味しいネタくらいに考えているのだろう。

一ついえるのは、少なくとも“20年先”を考えている人間にとって、
森永卓郎は明白な敵であるということ。
テレビも本気で若い視聴者に戻ってきて欲しいなら、いつまでもこんな人間を
ありがたがって使うのは止めるべきだ。


貧困化するホワイトカラー

貧困化するホワイトカラー (ちくま新書)
森岡 孝二
筑摩書房

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先日ちょっと書いた「規制強化ですべて解決」派の一冊。
まあ別にお勧めではないのだが、労働時間に関する話のたたき台になるので紹介。

タイトルにあるように、全編ホワイトカラーの受難振りが延々と続く。
低賃金、重労働、中でも労働時間に関するものが多く、過労死や名ばかり管理職問題も
続き、そしてそういった問題に取り組む様々な支援活動も紹介される。
で、派遣法は再規制し、労基法違反はきっちり取り締まっていこうねで終わる。

ぱらーっと流し読みした後で著者が経済学部の教授と知ってびっくり。
なんというか、すごく新聞的というか法学部的である。
要するに、なぜ上記のような問題が起きるのか、そしてどうやって解決していくのかという
視点が完全に欠落しているのだ。
「法律さえ制定すれば、問題はすべて解決!」と言っているわけだこの経済学者は。

一応フォローすると、著者の言うように日本のホワイトカラーの労働時間が先進国で
一番長いのも、特にフルタイム勤務者のそれが過去15年間下がるどころかむしろ増えて
いるのもそのとおりだ。
だが、その理由は、クリントンやサッチャーの陰謀などではなく、単に終身雇用では
雇用調整ができないから、企業が基本的に残業で対応しようとする点にある。
多少の需要が増えても採用増より残業でカバーすることを選び、不況になれば新卒採用を
打ち切ってさらに正社員の残業を増やす。景気の良し悪しに関わらずサラリーマンは
残業漬けになるわけだ。

今後、新興国との競争が強まる中、コストカット圧力は増すだろうから
男性正社員の残業はさらに伸びるに違いない。

しかも80年代以前みたいに、そのうち管理職になって一線を抜けるなんてことはないから
定年までそんな調子で行くわけだ。
そのうち新入社員研修で“葉隠”とか読ませる企業が出てきそうだ。
といって、現在の雇用システムのままでは、それしか手が無いんだからしょうがない。

日本においても、解雇規制を緩和すれば企業が新規採用を増やすという調査結果がある。※
イデオロギー抜きで、真剣にワークライフバランスと雇用状況の改善を図るなら、
流動化に舵を切るべきなのは明らかだろう。

最近、職場の派遣さんが切られて仕事が増えたと嘆く人がいるが、それも理由は同じ。
フルタイム勤務で過労気味の人間が溢れる一方で、仕事にあぶれた失業者が列を成す。
で、どっちも少子化につながると。
これこそ、日本の労働市場の持つ非効率性の真髄だろう。
正規と非正規、どちらも苦しませている壁が、昭和的価値観であるのは言うまでもない。



※99年、慶応大学産業研究所調査。
 整理解雇が容易になれば従業員を増やすと解答した企業が減らすと回答した企業の三倍近い。

雑感@民主党代表選挙

先週、民主代表選について、月曜日発売のアエラにコメントしたので
ここでも簡単にまとめておきたい。
それにしても、土曜日実施で月曜日発売なのだから、なんとも間の悪い話だ。
結果の出ている選挙について、結果のわかる前にコメントするのだから。
誰かが言っていたが、もう少し時間をかけても良かったんじゃないか。

代表選自体は、事前の予想通り鳩山さんに決まった。
いろいろインタビューを見ていて気づいた違いは、消費税に対するスタンスの違いだ。
鳩山氏が「今は議論すらしない」と切り捨てる一方で、岡田氏はかねてからの自論である
「消費税増税と基礎年金部分の税方式化」を明言。

これが結果的に締まった印象を与えていたと思う。
増税なんて言ったら選挙で勝てない、かといって何も言わないではユートピアだの
宇宙人だの叩かれるし若年層も取り込めない。
そこで鳩山さんを緩衝材としつつ岡田氏でスパイスを効かせるという風に、両者の間で
何らかの役割分担が出来ていたのではないか。
(そういう点では、麻生政権はなんとも締まりのない印象だ)

スピード代表選といい、代表決定後の迅速なポスト配分といい、どうも緩やかな
アウトラインに基づいて動いているような気がする。

それから、国債発行だけは両候補とも強く戒めていたのがとても印象的だった。
この点は与野党問わずコンセンサスが出来ている事項ではあるのだが、
「100年に一度の~」という免罪符で安易に規律を緩めることなく、次世代への
アピールも意識しているということだろう。

ちなみに民主党応援団長の森永卓郎は
「たった15兆しかばらまかないから自民はダメ、50兆ばらまけ」
と断言している(『THE 21』6月号)。こんなバカに応援される民主党もいい迷惑だろう。

新左翼とロスジェネ

新左翼とロスジェネ (集英社新書 488C)
鈴木 英生
集英社

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若手記者の手による新左翼とロスジェネ運動の解説。
全共闘や安保闘争など、新左翼運動の歴史が8割を占める。
それは一言でいえば、迷走と凋落の歴史だ。
戦後民主主義という枠組も、現状維持を望む中産階級も、そして革命を忘れた既存左翼も
否定した彼らは、いろいろなスローガンや地場の運動と結びついて拡散していく。

三里塚に篭るグループがいる一方で、三菱重工を爆破したり、テルアビブ空港で機関銃乱射
したりするグループも出現。そのどれもが、今となってはひどく虚しい。
いや、冷戦真っ只中では何がしかの意味があったのかもしれないが、今となっては
もう歴史である。

さて、こういう思想的な流れとロスジェネにいかなるつながりがあるのだろうか。
著者が提示するキーワードは“自分探し”だ。
家族やムラと言った共同体が崩れる中、居場所の無い個人を受け入れ、目的を与えて
くれる場所。それが新左翼であり、反貧困などのロスジェネ運動だとする。

確かにそれはある。正社員だとなんのかんのいっても職場という名のコミュニティに
強制加入させられ、飲みニュケーションとか言って酒飲まされるわ盆暮れ正月の付き合いは
あるわで、今でも共同体は存在する。
だが非正規雇用労働者は、通常そういった共同体には入れない。
そういうワーカーに属し、実家という溜めもない人間にとって、フリーター系の労組は
一種のヤドリギだ。

読みやすく、良く構成も練っている。
惜しい点は、そういう疎外論的な類似性だけでなく、直接的なつながりにも切り込んで
欲しかったことか。
フリーター系の労組や非正規雇用問題を扱う団体は、たいていどこかしらの政治団体が
バックについている。そして共産党系と新左翼系は、今でもあまり仲がよろしくない。
たとえば、共産系はいわゆる普通の組合的な主張をするが、新左翼系の中には
日本型雇用自体に否定的な組織も少なくない。
(昨年、『世界』で日本型雇用を見直せと提言したグループがこれだと思われる)
もし続編が出るのなら、彼らの方向性や理論について、掘り下げた論を期待したい。

それにしても。
居場所を求めて連帯するのは悪い話ではないが、果たして、従来のままの“左翼”
というフィールドに、それを求めることは正しいのだろうか?
以前、面識のあったフリーター青年の一人に数年ぶりに再会した時のこと。
「最終的に、大企業は解体されるべきだと思います」
と言われて目が点になったことをおぼえている。

以前はごく普通のフリーターの兄ちゃんだったのだが、どこかのユニオンに入って活動
するうちに、革命的気概に満ちた革命戦士に育成されてしまったらしい。
いくら目的を見つけられたといっても、
果たしてこれは、本人にとっていいことなんだろうか?

20年くらい経ってから、今の幼稚園児くらいの世代に「虚しいよね」と言われそうな
気がするのだが。


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城繁幸
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