大手メディアの年功序列の崩壊

朝日のボーナスがなんと4割も減るらしい。
勝ち組の朝日でこうだから、毎日産経あたりはボーナスなくなっちゃうんじゃないか。

とはいえ、この不況の最中。そんな会社は珍しくもない。
景気が良くなった時に、大盤振る舞いを期待すればいいのだから。
そういう意味では、新聞業界にはとても同情している。
というのも、たとえ景気が回復したとしても、恐らく新聞業界の
パイ自体は、以前の水準には回復しないだろうから。

これは構造的な問題なのだ。

たとえば自動車の場合、需要が回復すれば以前に近い水準までは戻れるかもしれない。
電機にしても、サムソンや台湾企業に勝てれば、90年代のような水準にまでは
戻せるだろう(きついとは思うが)。
新聞の場合、地盤沈下しているので競争しようにも相手がいない。
あえていえばネットか。

こういう時、職務内容を基準に賃金が決まっているのなら、不要な業務を見直すか
全員の水準(業績連動分)を引き下げるかして人件費をカットできる。
要するに、その職務の相場が訂正されるわけだ。
どちらにせよ、世代間格差は発生しない。

ところが日本企業の場合、ただなんとなく毎年少しずつ積み上げてきて、しかも突然
積み上げ作業を中断するわけだから、若い世代ほど不利になる。
東大出て○○新聞社に入って勝ち組になれるはずだったのに
やってられるかよ、となってしまう。


似たようなケースでは、テレビ局もそうだ。
既にTBSが数年前から、新人は別会社扱いとして給与体系を別物にしていたが
日テレも昨年より給与体系を切り替えて抑制し始めている。
ちゃんとルール化している分、銀行や新聞より真面目であるが、ツケの先送りと
言う意味では変わらない。

とにかく、“最後の昭和的楽園”であったメディアでも、
いよいよ年功序列のレールが 崩れ始めたということだ。


余談だが、どうして新聞はネットの有料サービスを充実させないのだろうか。
日経が始めるらしいけど、「あらたにす」みたいな変なサイトではなく、3社分の
全紙面および20年分のバックナンバー読み放題なんてサービスがあれば、
いくらでもお金は払うんだけど。

古舘伊知郎にダメ出しされる野党三党


先週金曜日、報道ステーションを久しぶりに見ていたら
(嫌いと言うわけじゃなくて、テレビ自体をあまり見ないから)、
終了直前に古舘さんが
「郵政民営化自体は必要です、早く進めて貰いたい」
と締めていてビックリ。
いや、何ということはない正論なんだけど、この人が言うとそれだけでサプライズな印象が。

現在、かんぽの宿売却を巡って、実に不毛な政治闘争が行なわれている。
こんなのは製造業なら当たり前の話で、たとえば民間企業がリストラの一環として
不採算事業を売却する際、製造ラインに100億円かかっていようが、二束三文で
譲渡するのは普通のことだ。
現時点で赤字垂れ流している以上、企業側としては一刻も早く処分したいわけで
さらに高給取りの正社員という固定費もぶら下がっているわけだから、逆に一部費用を
負担するなんてこともある。

この問題は、そういう世事に疎い大臣を、郵政利権が無くなると困る官僚が担ぎ出して
騒いでいるに過ぎない。
彼らの言う郵政文化とは「郵政関連会社219社への天下り」のことだ。
余談だが、先週のダイヤに鳩山さん(アルカイダの友人の友人の方)のインタビューが
載っていたが、なんべん読んでも言ってることがよくわからない。
減損処理で収益性を高めたから売値が下がるという大臣の発想こそマジックだ。

本来なら、こういう大臣の存在は格好の攻撃材料のはず。
日本国民にとって最大の不幸は、同じように世事に疎そうなお兄ちゃんが野党第一党の
代表に就いてしまっていることかもしれない。
友愛もいいけど、もっと大事なこともあるでしょう。
国民新党と社民党には1gの期待もしていないが、一緒に騒いでいる姿をみると、
民主党もたいがいである。
こういうバカ騒ぎで有権者が喜ぶと本気で思っているのなら、民主党の体質は案外、
古い自民党そのものなのかもしれない。

郵政選挙でなぜボロ負けしたのか。一度くらい真摯に反省会でもしてみたらどうか。

「貸せない」金融

「貸せない」金融―個人を追い込む金融行政 (角川SSC新書)
小林 幹男
角川SSコミュニケーションズ

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自己責任という言葉がある。お酒を飲むのもタバコを吸うのも、もろ手を挙げて
褒められたものではないが、とりあえず自己責任ということで認められているものだ。
もちろん、一定の規制はある。未成年は手を出してはいけないし、酒を飲んだら
車の運転もNGだ。要するに自己責任といっても万能薬ではなく、社会との関わりを
考慮したバランスこそ重要なのだ。

06年、金融業でバランスの見直しがされた。貸金業法の改正により、
ノンバンクは利用者の年収の3分の1を上限とする総量規制及び、上限金利の引き下げ
(いわゆるグレーゾーン金利の撤廃)を課されることとなった。
「サラ金なんて、借りるやつの自己責任」という無為無策から、法による適正化へ
踏み出したわけだ。これで、
�@善良な市民がサラ金に手を出し、高利に苦しむ状況
は消えて無くなるはずだった。

ところが。
昨年より、全国のノンバンクの倒産が相次ぎ、急速に無担保融資という市場が縮小し
続けている。代表例は、沖縄県下No1シェアを誇った信販会社オークスの倒産だろう。
きっかけは、過去のグレーゾーン金利に対する過払い金請求だった。

僕は別にサラ金を使ったことも今後使う予定もまったく無いので、業界がどうなろうと
知ったこっちゃないのだが、一つだけ気になったことがある。
というのは、この規制によって、いったい誰が得をしたのかということだ。
まず、融資の利用者は本当に救われたのだろうか?
確かに、パチンコで負けて、ふと隣をみるとサラ金のATMがあって、思わず借りて
しまって、なんて人は減るだろうし、これを気にギャンブルから足を洗えるだろう。
実際に沖縄では、07年に39万人いた貸金業利用者が翌年には22万人に減ったという。

だが、この17万人は、本当にギャンブル地獄から開放された幸運な人々なのだろうか。
仮にそうだとしても、なぜ08年において、ヤミ金との接触者および利用者ともに
増加しているのか。結局、借金の理由はどうあれ、借りたいという人はノンバンク
規制程度で減るわけではなく、彼らはヤミ金に流れるだけではないのか。

「ヤミ金のような非合法なモノに手を出すほうが悪い」
という人もいるだろうが、その自己責任論は�@段階での自己責任論とどう違うのか。

そして根本的な疑問は。仮に徹底した摘発と厳罰化で全国からヤミ金すらも一掃
したとして、それで利用者は幸せになれるのだろうか。

著者は商工ローン(中小零細企業向けの無担保融資)のメリットを上げつつ、新規の
融資が激減し、干上がっていく中小企業の実態にも言及する。
銀行には相手にされない、政府系の融資や保証は一ヶ月以上の時間がかかるという彼らに
とって、緊急の資金を融資してくれるのはノンバンク以外になかったのだ。
彼ら中小企業は喜ぶどころか、規制を呪いつつ店を畳むか、ヤミ金に手を出す他ない。

そもそも、オークスは完全な悪であり、東京から出張してきて過払い請求原告団を組織した
弁護士は本当に正義の味方なのだろうか。というのも、この改正で唯一自信を持って
「得をした」といえるのは、彼ら弁護士だから。

かつてリーマンに勤務した著者がたじろぐほど、過払い金の分捕り合戦は凄まじいという。
本書を読むと、ハゲタカとは一体誰のことなのかわからなくなる。

著者は経済の動脈を干上がらせる愚を避けるべきだとして、総量規制及び上限金利の緩和を
提案する。そして過払い金の請求などは、多重債務者に限るべきだとする。
規制と自己責任のバランスを考える上で、優れた良書だ。
シンプルな文章に良く練られた構成も万人向けである。

派遣規制で問題は解決しない その2

以前、サンプロに出演した時のことをふと思い出した。
CM中に連合事務局長、モリタク、奥谷さんと話していたのが、マージンの話だ。

派遣労働者のマージンの比率は全国平均で32.1%(厚労省07年度統計)。
これを高いと見るか低いと見るかは人それぞれだろうが、参入障壁の低い業界なので
ここから大きく合理化するのは難しいだろう。
それよりは、直接雇用の流動化を保証すれば、大手の製造業は直接雇用に切り替える
だろうから、不毛なマージン議論を続けるより合理的だと話すと、連合と奥谷さんが
ムッとしていた(モリタクは意味が分かっていない様子だったが)。

派遣会社と言うのは企業にとって、パートなどの直接雇用より、むしろコストが高い
ケースが多い。
たとえば同じ時給1500円としても3割増しで派遣会社に払っているわけだ。
そうまでして派遣会社に頼る理由と言うのは、
�@募集、労務管理といったコスト
�A直接雇用に関するリスク回避

があるため。
このうち厄介なのは�Aで、たとえば有期雇用のパートであっても、直接雇用では
様々なリスクが存在する(複数回更新している、該当業務が恒常的に存在している等、
更新への期待が合理的だとすると、無期契約とされる判例がある)。
特に大手ほど、このあたりのリスクは非常に気にするので、そういったリスクを請け負って
くれる派遣会社に頼ることになる。

だから、契約期間中であっても、たとえば2か月分の上乗せで解除できるような金銭解雇
ルールを作ってクリアにすれば、このあたりのリスクを消せることになり、企業は喜んで
直接雇用に切り替えるだろう。当然、32%から受け入れ時の仲介料、金銭解雇分の
リスク料を引いた分は、労働者に支給されることになる。これらは期間に関わらず
ほぼ固定なので、長期的には限りなく「32%に近い賃上げ」が実現するはず。

となると�@のコストは採用時のものだけになり、
人材派遣会社は紹介料を貰う人材紹介会社に近づいていくと思われる。

実際、派遣業から紹介業にシフトさせるべきだという意見は、八代先生も述べている。
(中央公論3月号座談会)
リクルートが派遣大手スタッフサービスを買収したのは、それをにらんだ布石かもしれない。

さて。
冒頭に話を戻そう。
解雇ルールの流れはいったん認めてしまうと必ず正社員にも波及するだろうから、連合
としては面白いわけがない。
派遣会社は淘汰が進むだろうから、こちらも面白くない。
彼らは雇用規制の強い国でしか生き残れない存在で、
いわば連合とはコインの裏と表の関係だ。


たまに、「奥谷さんはネオリベだ」なんていう人がいるが、とんでもない。
あれほど強烈な日本型雇用の信奉者はいない。
そういう意味では、あの席順はそもそも間違いで、日本型雇用をよしとする側に
彼ら3人とも並べるべきだったろう。

問題は、上記のようなロジカルな議論を野党三党がしているとはとても思えないことだ。
とりあえず99年以前に戻すだけなら、問題の本質を無視した対症療法でしかない。
企業はお人好しではないので、トータルで見れば職自体が減るだろう。
今年に入ってからの工場の海外移転は、表向き円高が理由となっているが、
仮に円安となっても戻ってくるかどうかはわからない。
ただ前回書いたように、日本には幸い、内需を中心とした求人がまだまだ存在するので
そちらに吸収されることになるだろうが。

派遣法を改正しても問題は解決しない

今月に入り、チラホラとこんなニュースが漏れ聞こえてくる。
はったりだろうと思っていたが、どうやら野党は本気で派遣再規制するらしいが…。
最悪、やるにしても正社員側の規制緩和とセットでなければ意味が無い。
これは既存社員の賃下げというよりは、一定の条件で金銭解雇などを認めることで
流動化を促すことが狙いだ。平たく言えば、
「正社員にしてくださいね、変わりに賃下げも解雇もしやすく法改正しますから」
という流れだ。

まあそれでも今やるのはかなり冒険だし、そもそも社民党が正社員の規制緩和に賛成
するとはとうてい思えない。
とすると、負担増を嫌う企業による一層の派遣切りが進み、需要が回復しても職自体が
戻ってこないだろう。

「雇用を守れ」と対案を示さずに口で言うだけなら勝手だが、社民党が言うと
ジョークにしか聞こえない。
民主党には期待しているのではっきりいうが、社民党だけは切った方がいい。
目先の数議席が欲しいのだろうが、政策議論で足を引っ張られ、長期的には必ず票を減らす
ことになる。そもそも彼らは日本を良くしようなんてこれっぽっちも思っちゃいないだろう。

ところで、社民党と国民新党はなんでそんなに一生懸命なのだろうか。
僕には、彼らに対して派遣規制を強く求める支持層がいるとはどうしても思えないのだ。
たとえば連合は本音では規制に反対のはずだし、派遣労働者の過半数も派遣禁止には
反対だろう。※

とすれば、いったい彼らはなんのためにいらぬおせっかいを焼いているのか。
ひょっとすると、有権者の一部、特に地方の高齢者などにそういった空気が醸成されていて
その空気を読んでいるのだろうか。

だとしたら、メディアは実に罪深い存在だ。
彼らは面白がって派遣切りというオモチャに飛びついて、今では飽きて放り捨てて
しまったが、後には“規制”という空気だけが残ってしまった。
そしてその空気が今、派遣労働者自体を追い詰めようとしているわけだ。

まあそれでも、そんなに悲観的になる必要などないのかもしれない。
「製造業のライン」や、企業の一般事務といった仕事がこの国から減るだけのこと。
介護や一次産業では求人を続けているわけだから、そちらに吸収されるだけかもしれない。
モノは考えようで、無機質な工場のラインから開放され、
お爺ちゃんの体を洗ったり、養豚場で豚さんの世話をしたりと
ある意味、より人間らしい仕事に移れるわけだ。

疎外された労働者の手に、再び労働の喜びを取り戻せるではないか!

ただ、ほんとうにそれは、彼ら派遣労働者が望んだことなんだろうか。
ほんとうに彼らは工場から開放されたことを喜びつつ、介護や農場を目指すのだろうか?
というか、それって「仕事なんて他にいくらでもあるだろ。贅沢言わずに働け」
という自己責任論と何が違うんだろうか。
「仕事を選ぶなではなく、選べる権利こそ重要だ」と誰かさんが言っていたが、彼らはどんどん
選べない立場に追い込まれているように思えてならないのだが。※2

まあ、なんにせよ。
「小泉改革で格差が拡大したのだ、だから派遣法廃止ですべて解決!」
なんて言っていた連中は、ご自分の発言に責任を持っていただかないと。
これから実現する現実が何であれ、それは彼ら自身が熱望した理想なのだから。



※電機連合の一部及び人材サービスゼネラルユニオンは製造業への派遣禁止に反対 を表明している。
 本来、派遣規制よりも正社員の規制緩和と待遇差是正を求めるべきなのだが、
 反政府活動に流れを持って行きたいグループが政治利用しているのだろう。
 
※2 そうなったらそうなったで、今度は「正社員として雇うべきである」とか
  言い出しそうだが、それよりはまだ革命おこす方が現実味があるだろう。
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若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来
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城繁幸
コンサルタント及び執筆。 仕事紹介と日々の雑感。 個別の連絡は以下まで。
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