民放労連の取り組み

民放労連が下請け格差解消のために配慮を見せ始めたようだ。

最初の一歩ではあるが、最低賃金協定など、目の付け所が良い点もある。
もっとも、課題は多い。
まず、労組の使命である「昇給賞与獲得」とこれら下請け待遇向上は、真っ向から
矛盾するものだ。それをどうクリアしていくのか。

クリアする気がないから「そういうのは全部経営者が悪いんですよ」
なんて誤魔化そうとしているのが連合やその御用政党なわけだ。
少なくともそういう姿勢は見られないので、どうも民放労連は連合とは違う
メンタリティなのかもしれない。

ちなみに、最終的な課題は、同一労働同一賃金の実現である。
というと原資を全人数で頭割りして均等支給するようなイメージがあるが
そりゃ共産主義だ。仕事内容によって待遇差が生じるのは当たり前の話。
格差自体が悪だなんて言ってるやつはとっとと北朝鮮にでも行けばいい。

僕が言っているのは、その業務内容によって生じた格差に、合理的な
理由があるかどうか。なければそれは単なる身分制でしかない。


つまり最終的なゴールとは、担当する業務内容ごとにある程度の相場が形成され、
身分によらずに上下できるシステムの整備だ。
その上で最低賃金を設定するなら、テレビ局なら2000円くらいには設定できるだろう。
(今の最低賃金ラインは身分制の枠内での話なので、抜本的な解決ではない)
そうすれば製作現場のワープア問題なんて解消され、それなりの待遇と
(昇給昇格があるので)やりがいのある業界に再生でき、人手不足も解消するはず。
テレビを再生したいなら、まずは職場に夢を取り戻さないと。
今の時代、既得権防衛だけでなく、そういった前向きな取り組みも必要であるということは
労組自身もよくわかっているはずだ。

『オルタナ No13』


環境やCSR関連のビジネス情報誌オルタナ13号、
「U-40が日本の政治を変える」コーナーに、モノ言う若者の会のメンバーである
寺尾美香嬢が登場しているのでご紹介。
もしも若者の投票率が上がったら…というお話。

留学生が採用されない理由

留学生のエンジニア採用が低調であるとの調査結果。
新刊でも触れていることなので、簡単にフォロー。

留学生、特にアジアからの留学生受け入れについては、国も重要性を認識して
いろいろと支援策をとっている。高等教育の質は、競争と多様性によって磨かれることは
この分野におけるアメリカの一人勝ちの状況を見れば明らかだからだ。
グローバリゼーションの進む中、高等教育の重要性はますばかりだ。

と、ここまではいい。問題はここからで、当の日本企業の側がいまひとつ採用に乗り気
ではないのだ。大きく分けて、理由は2点。

まず、留学生と企業の労働観の違いが大きい。
日本企業、特に製造業は保守的な傾向が強く、今でも終身雇用至上主義な風土を
残している企業が少なくない。要するに、新卒で学校推薦で入社して、30年以上
滅私奉公して、最後は「わが生涯に一片の悔いなし」と言ってくれるような
若者が理想なわけだ。
当然、そんな変態は日本人にしかいないので、そういった企業は留学生を敬遠
する傾向がある。

そしてもう一つの理由は、いつも言っている“年齢”問題。
韓国以外のアジア諸国にはそもそも年功序列と言う発想がないので、いくつかの大学を
遍歴したり、あるいは一時的に企業で働いたりして、博士課程なのだけど30歳
なんて人が結構いる。

「学ぶことそれ自体に年齢は関係ない」というのは世界的常識なのだが、ここ日本
は年功序列というまったく別の価値観が支配する国。人間の価値は年齢で決まるのだ。
「終身雇用までは求めない、若い間だけ頑張ってくれればいい」という寛大な企業でも、
さすがに30近い学生を採ることにはアレルギーを感じてしまう。

まあ、要するに受け入れ側の企業内の流動化を図らずに、いくら高等教育、専門教育
の拡充を叫んでも、効果は限定的ということだ。
日本人の高学歴者がフリーターをやっている現実も、根っこは同じである。


雑感@経済危機対策

10日発表の政府の経済危機対策について。
環境対策、資源政策などで見るべき部分もあるが、全体的にはなんというか、玉虫色である。
とくに雇用は新味がほとんどない。一言で言えば、単なるバラマキだろう。
バラマキが何でダメなのかというと、それが本質的な改革につながらない対症療法に
過ぎないからだ。
火事になっているのに火を消さないでエアコンつけようとしているような
ものだから。それで喜ぶのは、もうすぐ寿命のお爺ちゃんだけだ。

ツケの先送りと言ったほうが、若い人には琴線に触れるか。

たとえば雇用調整金をばらまいて、それが労働市場の流動化につながるだろうか。
はじき出された人はむしろ参入のハードルが上がるだけ。極論すれば、次世代の負担で
逃げ切りたい人の背中を押してあげるようなものだ。
再就職のための職業訓練にしたって、そういうことは日本は以前からそれなりに力を入れて
いる。問題は送り出す側でなく、受け入れる企業の側だ。
価値観が硬直しきっているため、「若くてしかも職歴アリ」みたいなものすごい
ストライクゾーンの狭い球にしか手を出そうとしない点にあるのだ。

ついでに言うが、少子化対策で「子育て応援特別手当を一年間だけ拡大」というのもひどくて
一年間だけばらまいてどれだけ意味があるというのか。
本質的な問題は、日本が先進国中最大の男女間賃金格差があり、非正規雇用比率が
高いこと。
つまりここでも、賃金基準が昭和型に硬直していることが原因なのだ。
今回の対策には、こういった本質に迫るものが(少なくとも雇用・少子化に関しては)
まったく見えてこない。
そういう意味で、個人的にはとても残念に感じている。

我々が二十歳の頃。「公共事業をやればやるだけ社会はよくなるんです」と主張する人達が
大勢いて、実際盛大にばらまいた。気が付いたら財政は危機的状況に陥り、しかも構造的な
課題は何一つ解決しておらず、むしろ悪化している。
勝ち組といえば、そういったバラマキを主張し、そして無事に逃げ切った当時の50代だけだ。

もう日本には後がないのだから、90年代の教訓を忘れるべきではない。
ただのバラマキではなく、次代につながるような構造的改革にこそ、最後のカードは切るべきだ。

天地人

先日のエントリーに関連して、今月号の「月刊The21」。
大河ドラマ「天地人」などの題字で有名な書道家の武田双雲氏のインタビューが面白い。
氏は新卒で入社した会社を3年で辞めているのだが、きっかけの一つが
「通勤ラッシュがいやだったから」だそうだ。
(最後は自腹でグリーン車で通ってたらしい)

「この軟弱ものめ!」とかなんとか上司に言われてそうだが、その後のご本人の活躍を
みるに、少なくとも上司たちよりは果敢に見える。
ちなみに、氏のいた会社はよりによってNTTである。
いやあ、合わないだろうなあ(笑)

余談だが、氏とは不思議な縁がある。
実は僕の名刺は、氏に書いてもらったもの。
昔、まだそんなに出ずっぱりにならないころに依頼して書いてもらい、気に入って今でも
使っている。もちろん、3年でNTT辞めているとか、3年で辞めた若者~なんて本を
後で書くとか、そんなことは互いに知るよしもない。

たまに「達筆ですねぇ」なんて言われることがあるが、僕自身はかなりの悪筆なので
あしからず。
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著作
「10年後失業」に備えるためにいま読んでおきたい話


若者を殺すのは誰か?


7割は課長にさえなれません


世代間格差ってなんだ


たった1%の賃下げが99%を幸せにする


3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代


若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来
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城繁幸
コンサルタント及び執筆。 仕事紹介と日々の雑感。 個別の連絡は以下まで。
castleoffortune@gmail.com
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