リストラするにも金はいる

5月号のVoiceで、一部の大手電機の苦境が取り上げられている。ちなみにタイトルは
「事業再編すらできない日立」
内容は日立だけでなく、電機全般の話だ。
(実際には日立は営業黒字だし、もっと危険な会社が他にある)

要約すると、新興国の工業化で総合電機なんて立ち行かなくなるのは明らかだったのだから
とっとと大リストラして選択と集中しておくべきだったのに、バカなトップが手を汚すのが
イヤでやらなかった。リストラしようにももう金が無い。事業売却しようにも買い手がいない。
06年が最後のチャンスだったが、もうお先真っ暗、という話。
もうこれでもかってくらいにこき下ろしている。
余談だが、今週号のダイヤでも同じ筆者が日の丸半導体をばっさり切り捨てていて、
要約すると「エルピーダくらいしか残らない」。
いやもう、明るい光が全然見えないんですけど。
本当の辛口とはこういうものを言うのだ。

でも、まったくもってそのとおりだろう。3年以内に電機は大再編するはずだ。
前回の一連の再編も、00年前後の平成不況の底で行なわれた。
あの時は半導体中心に行なわれただけだったが、今回はより大規模に行なわれるだろう。

付け加えるなら、経営者がアホだったのはそうだろうが、痛みを伴う改革を嫌がったのは
労組も同じであり、結局のところそのツケをみなで仲良く払うことになるのだろう。
あ、でも団塊世代はギリギリ逃げ切れたか。

本書では、終身雇用・年功序列型組織(いわゆる垂直統合型の組織だ)で発展した
日本がいつの間にかガラパゴスと化し、緩やかに衰退していく様が描かれる。
特に電機に就職を希望する若い人にはオススメしたい。
電機だけを取り上げた書ではないが、IT化によって技術蓄積が無力化していく様子が
よくわかる。
「数年前まで下請けメーカーだった台湾企業が、一躍世界シェアトップに躍り出る時代」に
もはや年功序列は何の価値も持たない。




ガラパゴス化する日本の製造業
宮崎 智彦
東洋経済新報社

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民放労連の取り組み

民放労連が下請け格差解消のために配慮を見せ始めたようだ。

最初の一歩ではあるが、最低賃金協定など、目の付け所が良い点もある。
もっとも、課題は多い。
まず、労組の使命である「昇給賞与獲得」とこれら下請け待遇向上は、真っ向から
矛盾するものだ。それをどうクリアしていくのか。

クリアする気がないから「そういうのは全部経営者が悪いんですよ」
なんて誤魔化そうとしているのが連合やその御用政党なわけだ。
少なくともそういう姿勢は見られないので、どうも民放労連は連合とは違う
メンタリティなのかもしれない。

ちなみに、最終的な課題は、同一労働同一賃金の実現である。
というと原資を全人数で頭割りして均等支給するようなイメージがあるが
そりゃ共産主義だ。仕事内容によって待遇差が生じるのは当たり前の話。
格差自体が悪だなんて言ってるやつはとっとと北朝鮮にでも行けばいい。

僕が言っているのは、その業務内容によって生じた格差に、合理的な
理由があるかどうか。なければそれは単なる身分制でしかない。


つまり最終的なゴールとは、担当する業務内容ごとにある程度の相場が形成され、
身分によらずに上下できるシステムの整備だ。
その上で最低賃金を設定するなら、テレビ局なら2000円くらいには設定できるだろう。
(今の最低賃金ラインは身分制の枠内での話なので、抜本的な解決ではない)
そうすれば製作現場のワープア問題なんて解消され、それなりの待遇と
(昇給昇格があるので)やりがいのある業界に再生でき、人手不足も解消するはず。
テレビを再生したいなら、まずは職場に夢を取り戻さないと。
今の時代、既得権防衛だけでなく、そういった前向きな取り組みも必要であるということは
労組自身もよくわかっているはずだ。

『オルタナ No13』


環境やCSR関連のビジネス情報誌オルタナ13号、
「U-40が日本の政治を変える」コーナーに、モノ言う若者の会のメンバーである
寺尾美香嬢が登場しているのでご紹介。
もしも若者の投票率が上がったら…というお話。

留学生が採用されない理由

留学生のエンジニア採用が低調であるとの調査結果。
新刊でも触れていることなので、簡単にフォロー。

留学生、特にアジアからの留学生受け入れについては、国も重要性を認識して
いろいろと支援策をとっている。高等教育の質は、競争と多様性によって磨かれることは
この分野におけるアメリカの一人勝ちの状況を見れば明らかだからだ。
グローバリゼーションの進む中、高等教育の重要性はますばかりだ。

と、ここまではいい。問題はここからで、当の日本企業の側がいまひとつ採用に乗り気
ではないのだ。大きく分けて、理由は2点。

まず、留学生と企業の労働観の違いが大きい。
日本企業、特に製造業は保守的な傾向が強く、今でも終身雇用至上主義な風土を
残している企業が少なくない。要するに、新卒で学校推薦で入社して、30年以上
滅私奉公して、最後は「わが生涯に一片の悔いなし」と言ってくれるような
若者が理想なわけだ。
当然、そんな変態は日本人にしかいないので、そういった企業は留学生を敬遠
する傾向がある。

そしてもう一つの理由は、いつも言っている“年齢”問題。
韓国以外のアジア諸国にはそもそも年功序列と言う発想がないので、いくつかの大学を
遍歴したり、あるいは一時的に企業で働いたりして、博士課程なのだけど30歳
なんて人が結構いる。

「学ぶことそれ自体に年齢は関係ない」というのは世界的常識なのだが、ここ日本
は年功序列というまったく別の価値観が支配する国。人間の価値は年齢で決まるのだ。
「終身雇用までは求めない、若い間だけ頑張ってくれればいい」という寛大な企業でも、
さすがに30近い学生を採ることにはアレルギーを感じてしまう。

まあ、要するに受け入れ側の企業内の流動化を図らずに、いくら高等教育、専門教育
の拡充を叫んでも、効果は限定的ということだ。
日本人の高学歴者がフリーターをやっている現実も、根っこは同じである。


雑感@経済危機対策

10日発表の政府の経済危機対策について。
環境対策、資源政策などで見るべき部分もあるが、全体的にはなんというか、玉虫色である。
とくに雇用は新味がほとんどない。一言で言えば、単なるバラマキだろう。
バラマキが何でダメなのかというと、それが本質的な改革につながらない対症療法に
過ぎないからだ。
火事になっているのに火を消さないでエアコンつけようとしているような
ものだから。それで喜ぶのは、もうすぐ寿命のお爺ちゃんだけだ。

ツケの先送りと言ったほうが、若い人には琴線に触れるか。

たとえば雇用調整金をばらまいて、それが労働市場の流動化につながるだろうか。
はじき出された人はむしろ参入のハードルが上がるだけ。極論すれば、次世代の負担で
逃げ切りたい人の背中を押してあげるようなものだ。
再就職のための職業訓練にしたって、そういうことは日本は以前からそれなりに力を入れて
いる。問題は送り出す側でなく、受け入れる企業の側だ。
価値観が硬直しきっているため、「若くてしかも職歴アリ」みたいなものすごい
ストライクゾーンの狭い球にしか手を出そうとしない点にあるのだ。

ついでに言うが、少子化対策で「子育て応援特別手当を一年間だけ拡大」というのもひどくて
一年間だけばらまいてどれだけ意味があるというのか。
本質的な問題は、日本が先進国中最大の男女間賃金格差があり、非正規雇用比率が
高いこと。
つまりここでも、賃金基準が昭和型に硬直していることが原因なのだ。
今回の対策には、こういった本質に迫るものが(少なくとも雇用・少子化に関しては)
まったく見えてこない。
そういう意味で、個人的にはとても残念に感じている。

我々が二十歳の頃。「公共事業をやればやるだけ社会はよくなるんです」と主張する人達が
大勢いて、実際盛大にばらまいた。気が付いたら財政は危機的状況に陥り、しかも構造的な
課題は何一つ解決しておらず、むしろ悪化している。
勝ち組といえば、そういったバラマキを主張し、そして無事に逃げ切った当時の50代だけだ。

もう日本には後がないのだから、90年代の教訓を忘れるべきではない。
ただのバラマキではなく、次代につながるような構造的改革にこそ、最後のカードは切るべきだ。
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若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来
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城繁幸
コンサルタント及び執筆。 仕事紹介と日々の雑感。 個別の連絡は以下まで。
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