40歳以降のメンタルコントロールって何をどうすべきなの?と思った時に読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。
先日書いた「告白」の書評が意外と反響があってちょっと驚いています。書いたときには気づかなかったんですが、どうやら41歳で引退した後に迷走を続ける清原氏に、自身のキャリアを重ねる人が少なくなかったことも反響の一因のようです。

【参考リンク】書評「告白」

実は日本型雇用においては40代というのはいろいろな意味で重要な分岐点だったりします。というわけで、今回は40代についてまとめておきましょう。

魔の四十代

日本企業における幹部候補選抜は、一般的に言って30代半ば~40代前半のタイミングで課長ポストに上がれるかどうかで決まります。

それでどのくらいが課長級以上に上がっているかというと、最新の調査では15%にも満たないという数字も出されています。運よく課長に上がれたとしてもその先の部長以上をイメージできる人は超少数でしょうから、ほとんどの人が40代で打ち止め感を感じているに違いありません。

【参考リンク】出世遅れ転職少なく 動けない40代、賃金伸びず

ちなみにわたくし、8年ほど前に「7割は課長にさえなれません」という著作を出した際には「オーバーに煽りすぎだ」とか「日本型雇用はずっと安泰だろ」とか色々言われたもんですが現実には「7割どころか8割以上ヒラ」という恐ろしい状況が出現したわけです。

日本型雇用の報酬というのは突き詰めれば“将来の出世”につきます。そのバーターとして「会社が指示した仕事は徹夜でも何でもしてやり遂げろ、全国転勤もしろ有給はあんまし使うな」的な働かせ方をされることになります。

そうやってがむしゃらに働いた挙句、40代になったら梯子外されて放置されるわけです。

なんてことを書くと外資の人なんかは「別にマネージャーに昇格しなくてもプレイヤーでボーナスがんがん稼げばいいだろう」と思うかもしれませんが、少なくとも毎年春闘で労使交渉してるような企業は、そんなメリハリのついた賃金制度じゃありません。

せいぜい頑張っても同期より100万円増えるくらいの可愛いらしいボーナスです。それも業務範囲の切り分けが曖昧な現行の評価制度では、きちんとワークしているとはとても言えない状況でしょう。

「日本企業の評価制度はほぼ形骸化している」というのは筆者だけではなく、多少とも俯瞰的な視野を持っている人事担当なら同じ意見のはずです。

【参考リンク】「企業の人事担当者の中で「わが社の成果主義はうまくいっている」と胸を張って言える人は皆無なのではないでしょうか」

まあそんなわけで、出世もボーナスも期待できない状況で、なんのために働くか、何を目標としてキャリアを形成するか、そういう動機付けは全部自分で考えださないといけないわけです。

これは結構大変なことだと思います。その大変さは数字にも表れています。「心の病の最も多い年齢層は40代」と回答した企業は35.8%とトップであり、2位の30代32.6%と合わせ40歳前後で展望が描きづらくなっているのがよくわかります(第8回「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケート調査・日本生産性本部)。

ちなみに上記の調査では3年前の調査と比較して20代が18.4%→27.9%と急激に伸びている点も注目されました。単線型キャリアパスの限界はいまやどの年代に対しても明らかとなりつつあるということでしょう。


以降、
メンタルの踊り場は3度ある
会社に居場所がなくなった時にどうすべきか




※詳細はメルマガにて(夜間飛行)





Q:「労働市場流動化のプロセスとは?」
→A:「たぶんパラパラと崩れ落ちるイメージです」



Q:「マネージメントより現場という選択肢はアリ?」
→A:「もちろんアリですがキャリアの幅は意識した方がいいです」



Q:「アベノミクスのつけってどういう意味でしょうか?」
→A:「安くて度数の強い酒が売れる代わりに税収が増えるわけです」





雇用ニュースの深層


退職希望者にカウンターオファー65%も!

むろんすべての従業員が交渉できるわけではありません。普段から交渉するに値する人材になるべくたゆまぬ努力が必要です。


取れるところから取りすぎちゃったもんで健保組合がもう死にそう


「消費税はみんな反対するから取りやすいところから取っちゃえ」とやってきたツケで健保組合が瀕死です。



他。




Q&Aも受付中、登録は以下から。
・夜間飛行(金曜配信予定)





書評「負けグセ社員たちを『戦う集団』に変えるたった1つの方法」




営業成績で落ちこぼれだったキリンビール高知支店を数年で全国一の営業成績にまで向上させ、その後の同社の復活の礎を築いたマネージャーによる“敗者復活マネジメント”の極意が本書だ。

半分くらいはマーケティングの話だが、組織論、マネジメントの実務書としても面白い。

著者が高知支店に支店長として赴任した95年、キリンはアサヒのスーパードライの一大攻勢を受け全国的にシェアを奪われている最中であり、高知は全国の支店でも最下位レベルの状態にあった。

その時の本社と営業現場の関係はこのようなものだったという。

業績が芳しくなく、計画が未達となると、企画部門は新しい施策を考えます。上司からはもちろん、現場からも計画達成のための「さらに良い」施策を期待されるからです。
(中略)
こうして企画部門は、自分たちの考えた施策が会議で通ったことで一応満足する。「自分たちは常に正しい施策を考えている。それでも予定が未達なのは現場が実行できていないからだ」という立場に立てて、責任を回避できるので、安心します。
(中略)
営業現場は本来自分で判断できること、判断すべきことを一つひとつ本社にお伺いを立ててくる。本社の企画部門は、似ているケースがないか全国を調べ、部門で議論したうえで上司に相談し、許可が下りれば現場に指示している。これは現場の責任回避です。

これでは本社も現場も責任感が芽生えず、戦略立案能力や現場力が向上するわけがありません。



あー、あるある(笑) ちょっと大きな会社に勤めたことある人なら誰でも経験あるはず。やたら変な指示ばっかり出されて一生懸命こなすのに精いっぱいで頭がマヒしちゃってる現場って、日本の風物詩と言ってもいいんじゃないか。最近だと文科省vs大学で似たような構図がヒートアップしているような気もする。

では、その負のスパイラルを抜け出すために必要なものとは何か。それは現場が自らの手で“理念”を再確認することだという。何のためにこの仕事をするのかという理念を明確にすれば、「あるべき姿」と現在のギャップは明らかとなる。あとはそのギャップを埋めるための戦略を自分たち自身で考えだし、実行するだけだ。

高知支店が見出した理念は「高知の人たちにおいしいキリンビールを飲んでもらい、喜んでもらい、明日への糧にしてもらうこと」であり、その実現のためのあるべき姿とは「どの店に行ってもいちばん目立つ場所にキリンビールが置いてあり、欲しい時に飲んでいただける状態を営業がつくる」ことでした。



こうして「本社から次々に送られてくる指示に従うだけだったチーム」は、自分で考えて主体的に動く真の営業マンに再生することになる。やっぱり「やらされてる状態」だと人って十分の一くらいの能力しか発揮できないんですよ。そのことはほとんどの人事部も気づいてはいて、いかにして仕事にコミットさせるかを知恵を絞って考えてはいるんだけど、やはりそこはマネジメントでカバーすべき問題なのかもしれない。

面白いのは、高知支店のV字回復に目を付けた本社が、その行動スタイルだけを真似て他の支店に指示を出すくだりだ。「高知は日に20件の営業先回りをしているそうなので、他支店も同水準を回るように」という指示を出しても一向に業績は上向かない。「なんのためにやるのか」という理念が欠けたままやっても、全体のマップを持たずにトレッキングしているようなものだから疲れるだけで長続きしないのだ。

著者はまた「平等の原則」にも言及する。ひとつ前の書評で「組織内のギャップを是正することが高い業績に結び付く」という世界的なトレンドに言及したが、著者は自分でその重要性に気づき、既に実践していたことになる。

社長も、管理職も、第一線の社員も、契約社員も役割が違うだけで会って、各々が自分の役割を100%全うするという点ではみな平等である。だから、社長であろうと、第一線の社員であろうと、自分の考えを率直に話す義務があり、そこで出た結論に対し一人ひとりが主体的にかかわる。


本社と地方の位置づけもクリーンに整理されている。著者曰く、地方は本社の指示に従うのではなく、顧客目線に立ったうえで活用出来るものは積極的に活用すべきだとする。そして本社と現場のギャップを埋めるために、積極的に現場の得た暗黙知をフィードバックすることが現場の役割だとする。

特に中央集権的な体質の管理部門には耳の痛い内容かもしれない。
だが営業マンはもちろん、本社とのやり取りに悩む現場の管理職にもお薦めの一冊だろう。





世界標準の働き方改革 書評「働きがいのある会社」

世界でいちばん働きがいのある会社
マイケル C. ブッシュ & GPTW調査チーム
日経BP社
2018-09-06



米国の調査会社GPTW社は20年ほど前から世界58ヵ国で「従業員の働きがい調査」を実施してきた老舗である。同社による最新の働きがいについてのレポートが本書となる。

同社は過去、年一千万人近い従業員にアンケートを実施することで“働きがい”度を調べ、働きがいと企業業績に正の相関関係があることを示してきた。今回はさらに指標を絞り「全員型働きがいのある会社」こそ業績をさらに向上させ、流動的な世界で真価を発揮できる組織マネジメントだと説いたのが本書である。

“全員型働きがい”とは何かというと、たとえば経営陣と一般社員、男性と女性、人種的なマジョリティとマイノリティを比べて、やりがいや組織からの評価、意思決定プロセスへの参画、業務経験の質といった項目でギャップが無い状態を指す。

2017年フォーチュン誌「働きがいのある会社100」の調査では、働きがい指標下位25%の企業の年間売り上げの伸びは3.8%であるのに対し、上位25%企業のそれは13.7%にも達する。

例えば、男性と女性、正社員とパートタイマー、管理職と一般従業員など、カテゴリーによって働くことへの意識にはかなりの差がある。差があるということは、誰もがポジティブな経験をしているわけではなく、組織のために最善を尽くさない人もいる可能性があるということだ。

同時に、私たちはビジネスの新規開拓が求められる時代に突入している。このほぼ未知の領域では、働く人の潜在能力を余すことなく開発することが求められる。なぜなら、人の絆、イノベーション、情熱や性格、協力などの人間的資質を重視する経済では、一人ひとりの従業員が重要だからだ。


従業員である以上は誰であれチームの一員として働いていることに変わりはないわけで、“ギャップ”を放置することはその潜在能力を発揮してもらう機会をみすみす放棄しているようなものなのだ。

またSNSで周囲とつながり多様化した世代と融和するうえでもダイバーシティは無視できない。従業員を罵倒する動画が流出したことでウーバーCEOを辞任することになったカラニックは、90年代までならありふれた「やんちゃな起業家」の一人にすぎなかったろう。過去には普通であってもこれからのルールではそうはいかない。

特にミレニアル世代は、仕事の意義や自己の成長、ワークライフバランスに関して、様々な考え方を持っている。人材開発に注力し、あらゆる背景や経歴の人材を歓迎するという評判は、最高の人材を集め、定着させるのにますます重要になっている。つまり新しいビジネス環境の中で、組織はすべての人にとって優れた文化をつくっていくことが求められる。


と書くと「多様だから成長したのではなく、成長中だから結果として多様になっただけだ」と思う人もいるかもしれない。本書にはちゃんと「従業員間のギャップ」を埋めることで業績を向上させることに成功した複数の企業例も引用されている。一例をあげるなら、先日、CEOのタイム誌買収で話題となったセールスフォースは、社内の男女間賃金格差の是正に率先して取り組むことで同業他社より高い成長を実現している。

【参考リンク】セールスフォースCEO夫妻、タイム誌買収 212億円

非常に興味深いのは、そうしたギャップの是正により目先は損をしそうな側(男女間であれば男、白人とマイノリティなら白人)の側もそうした組織を誇りに思い、組織のために積極的に貢献したいと考えるようになる点だ。

そして恐らく、この流れはAI化により急加速することになる。産業革命により「手を雇う」ことが「頭を雇う」ことに置き換えられたように、今後は「心を雇う」ことが主流となるためだ。

サンフランシスコのハイアットで、ルームサービスのスタッフが、滞在中のある夫妻のもとへ食事を運んだ際に話をした。その夜、二人が部屋にいたのは、小康状態の癌を抱えていた夫人が疲れてしまい街に出かけられなかったからだという。

アンディーというそのスタッフは、自分と夫人の音楽の趣味が同じだと知り、その場でフランク・シナトラの歌をうたった。夫妻はアンディーの静かな歌声に感激し、アンコールを求め、別れ際には抱き合い、翌日の夜も来てほしいと頼んだ。アンディーは翌晩も夫妻の部屋を訪れ、今度はトニー・ベネットの歌を披露した。


経営陣と従業員のギャップが埋められることで従業員自身が組織のために貢献したいと願うようになり、そのために自身に何ができるかを創意工夫する意識が生まれ、それを認めるカルチャーが育つことでサービスのものが強化された形だ。これは管理職や経営陣がトップダウンでマネジメントできる話ではない。

本書では、従業員がそうした自律的に動く状態のことを“フロー状態”と呼ぶ。課題に没頭すると同時に能力が高まっている状態だ。「働きがいのある会社」でこのフロー状態が起こりやすいのは、自由に自分の能力を試すことができ、組織に認められていると感じられるためだとする。

要するに働きがいのある会社というのは、各人が潜在能力をフルに発揮できる環境を実現している会社、ということになる。これが同業他社より圧倒的に業績の良い理由である。

読み込めば読み込むほどに示唆に富む箇所が見つかる良書。人事担当はもちろん管理職なら必読の一冊だろう。

以下、私見。

本書はいうなれば「世界の働き方改革の最前線」についての話だ。それから比べると我が国の働き方改革は「19時に一斉消灯」とか「プレミアム(以下略)」とか、もうなんというか3周くらい周回遅れの観がある。

そもそも日本の大企業なんてそこら中ギャップだらけだ。正社員と非正規雇用のギャップ、氷河期世代とバブル世代のギャップ、男女のギャップ……etc

日本の働き方改革にはそうしたギャップに対する具体的なアプローチが一つも含まれていないのだから空恐ろしくなる。


同業のギャラップ社の調査では惨澹たる結果に終わっているから本書の元データでもすごいことになっているのは予想できる(気を使ってか日本国内については「世界標準には遠い」とさらりと流しているが)。

【参考リンク】「熱意ある社員」6%のみ 日本132位、米ギャラップ調査


ただし、日本で実現できないわけではない。最近レビューしたケースで言えば「日本一社員が辞めない会社」がそうで「会社の理念を徹底的に共有することで自律的に動ける人材を育てる」「すべてのベースとして社員との信頼関係を構築する」というのは、まさに全員型働きがいのある会社だと言っていいだろう。

「町工場の全社員が残業ゼロで年収600万円以上もらえる理由」の吉原精工もそうで、売り上げやコストといった数字を毎月張り出すことで経営者と従業人の意識の差を無くし、自律的に働いてもらうことで生産性を向上させている点はそのまま本書に収録してもよいレベルの話だ。

メガバンクのフットワークの悪さを見てもわかるように、やはり会社のために体を張って当たり前のオーナー経営者の有無が企業改革のスピードの差につながるように思われる。




書評「告白」

清原和博 告白
清原 和博
文藝春秋
2018-07-27



まあ今では割と有名な話ではあるが、有名人とかスポーツ選手の著作というのは9割は本職のライターが書いているのは公然の秘密だ。勝〇さんなんて「2時間喋れば本が一冊出来上がる」と言われるほど大変生産性の高い方として有名である。

けれども彼らライターの名前はクレジットされることはなく、あくまで喋った本人の名義で出版されることになる。

最初に手に取った時、筆者はてっきり本書もそういうスタイルだとばかり考えていた。ところがしょっぱなからこれである。

序 「告白」の始まり

目の前にいたのは、私たちの知っている清原和博ではなかった。変わり果てた、英雄の“抜け殻”だった。その衝撃はインタビューが進むにつれて、イメージとの落差を浮き彫りにし、さらに深く我々を打ちのめした。

(中略)

かつての英雄を別人に堕としたのは覚せい剤だ。アンフェタミン系の精神刺激薬。白い粉末や結晶という形のある、目に見える、現実に存在する物質だ。

だが、それに手を伸ばした心の病巣には実体がない。清原氏の胸のうち深くに潜んでいるものが何か、いつ芽生え、いつから蠢き出したのか、本人すらわかっていない。

それを探す。沈黙の車内で、3人がほとんど同じことを考えていた。それが、1年にわたる「告白」の始まりだった。

2018年 春 鈴木忠平




もうこの時点で文面から異様な緊張感が漂う。本文も変わっていて、清原が語った言葉がほぼそのままの状態でつづられる。そしてその合間に取材したライターの思いが挟み込まれる。

なぜライターは編集を抑えてそのままインタビューを載せたのか。疑問を感じつつ読み進めていくうち、次第にその意図が見えてくる。

ライターが取材対象の話を編集して一冊の本にするということは、取材内容を自分なりに消化吸収して一つのストーリーを紡ぎ出すということだ。たとえば「ワシは本当はとても繊細で小心で、せやからずっと番長言われるんがプレッシャーやったんや」とかなんとか書けばロジックは分かりやすいし万人受けもするだろう。

でも、それでは清原の抱え込む闇の深さはとてもとても描けない。いや、たぶん誰にもこの闇の底は見通せない。だったら出来ることはただ一つ。ありのままの言葉を記録し、闇の深さを読者に感じさせることだ。

筆者は読み進めるうちに、なんだか部屋の中に清原がうなだれたように座り、本文を語っているような印象すら浮かぶようになった。

告白は初めて野球に出会った小学生時代から始まり、西武編、巨人編、オリックス編と続いて現在に至るのだが、全編通じて強く感じるのは、とにかく清原はメンタルが弱いという点だ。

いや、弱いといっても甲子園決勝や日本シリーズといった大舞台で本塁打打つんだから常人よりははるかに強い。問題は清原自身に、自分でメンタルを調整したり、自分の中から自力でモチベーションを生み出すといったセルフコントロール力が完全に欠落している点にある。

ライバルとの真剣勝負で奮い立ったり球場で応援されると火が付くが、そうでないとヒットすら打てなくなるほど湿っぽくなり、それを個人ではどうしようもないのだ。

85年ドラフトにしても、巨人が清原を一位指名するはずだったという話は、おそらく氏の思い込みではないか。仮に匂わせるような発言があったとしても、ずっと引きずるような話なのか。本人もその点に違和感は抱いているようだが、でも自分で自分のメンタルをコントロールできない。

巨人に対しても、そして元チームメイトの桑田に対しても、いつまでも解けないわだかまりを抱え込んでしまったままだ。

そういう、普通の人なら日々払い捨てている「人間関係の屑」のようなものが、十代のころからずっと清原の中に降り積もり続けた結果、気が付いたら底知れない闇が出来上がっていたように思える。

キャリアのピークを越えてから急に肉体改造に取り組んだのも、メンタルと違い筋トレは必ず成果を伴うためだ。興奮剤の使用も同じ理由で、そしてそれが薬物依存への道を開くことになったのだろう。

引退後、普通の人間なら第二のキャリアを見つけるか、趣味に没頭することでメンタルを前向きにする。でも氏にはそれもできず、薬物依存が加速してしまった。

意外だったのは、清原自身は自身の弱点をきちんと分析できていた点だ。


松井は年々、進化していましたし、技術もすごいんですけど、一番の僕との違いはメンタルの強さだったと思います。いつも同じように球場に来て、同じように球場を去っていく。そういう姿に「こいつすごいな」と思っていました。

例えば大チャンスに打てなくてチームが負けても、淡々としているんです。松井とはロッカーが近かったのでわかったんですけど、あいつはホームランを打った日もまるっきり打てなかった日も同じように淡々と着替えて、同じようにスパイクを磨いて帰っていくんです。感情を見せないんです。
(中略)
松井は悔しくなかったんじゃなくて、感情をうまくコントロールできる人間なんだなと思います。僕とは根本的に違うんです。



イチローや松井というのはお客さんが一人もいなくても、同じパフォーマンスを出せるタイプの選手だと思うんです。僕は逆にファンの人たちとの一体感がないと力を発揮できなかった。だから応援のボイコットは本当につらかったし、それを取り戻すために、何だってやったんです。


ifを言っても仕方ないが、FAの時に巨人ではなく阪神を選んでいれば、闇はそこまで深くはならなかったのではないか。「巨人の外様の4番」と違い阪神の4番だったら別にそんな打たなくても大丈夫そうだし。

清原ファン必読の一冊だが、人間というものを考える上でもよいきっかけになる一冊だろう。

以下、なぜか印象に残った氏の発言。なんとなくだが、清原は西武時代について語っている時が一番気楽に話せているような(あくまでも文面からの推測だが)印象を受けた。なぜ憎んですらいた巨人に移籍したのか。これも闇がそうさせてしまったのだろうか。

たまの息抜きは久信さんの車に乗せてもらって、青梅街道沿いのリンガーハットに行くことでした。そこで長崎ちゃんぽんを食べながら、ああだ、こうだと話している時間が一番楽しかったような……。


生まれ変わったらまた野球をやるのか……。そうですね……。やるでしょうね。やりたいですね。
(中略)
今の野球界では野球したくないですけど、僕がプロに入ったばかりの頃のような、あの頃の人たちがいるような、昔の野球界でなら、もう一回野球がしたいという気持ちなんですよ。




就活ルールを廃止したら何がどう変わるの?と思ったときに読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。
先日、経団連会長が就活ルールの見直しを表明して話題となりました。

【参考リンク】経団連会長、就活ルール廃止に言及「日程采配に違和感」

意外だったのは、テレビから新聞、週刊誌まで、多くのメディアが競って取り上げたことです。筆者自身、テレビやラジオや週刊誌などトータル10社近くにお話ししましたから。おそらく多くの人が「いよいよ来るべきものが来た」と直感したからでしょう。

いったい就活ルール廃止は、これまでの就活時期見直しと何がどう違うんでしょうか。そしてこれから就活はどのようにその姿を変えていくんでしょうか。

就活ルール廃止がゆくゆくは新卒一括採用廃止に行き着くわけ

たぶん半分くらいの人は、今回の就活ルール廃止するかも宣言について「過去もいろいろ就活時期を見直したことはあったのでその延長線だろう」くらいに考えていると思います。でも、今回のは過去の見直しとは本質的な違いがあります。それは「時期を動かすんじゃなくて、そういう区切りそのものを無くす」という点です。

就活時期がどうあれ、経団連とは関係ない新興企業や外資は昔から好き勝手に採用活動を行ってきました。それを経団連が黙認してきたのは、なんだかんだいっても優秀層は最後には外資や新興企業を蹴って大企業の総合職に収まる道を選択してきたためです。就活の時期を後にしようが前倒ししようがどっちみち自分たちのところに来るんだから、そんなのどうでも良かったわけです。

でも10年ほど前から旗色が変わってきました。エリート層の中に外資系や新興企業を第一志望にする人間が急増し、サイバーエージェントやDeNAが東大修士の間で“新・御三家”などと言われるようになりました。最近だと直接スタートアップに流れる東大生も珍しくありません。

【参考リンク】「開成→東大→起業」東大生の成功パターン変わる

また(経団連未加入の)ファーストリテイリングみたく1年生に内定出してじっくりバイトを経験させた上で入社と同時に店長ポストに登用、なんて荒業を繰り出す企業も出現するようになりました。

ここにいたってようやく経団連も重い腰を上げ「もう就活ルールそのものを廃止する」宣言したわけです。だからその裏にある本音は「外資や新興企業に流れている優秀層をガチンコで奪りにいく。採用時期および戦略は各社の都合に合わせて決める」ということになります。

というと「採用活動の時期が早くなるだけでは?」と思う人もいるでしょう。でも時期を前倒ししたところで現状のままなら経団連側に勝ち目はありません。優秀層が経団連離れした背景には「例外なしの一律初任給で配属先も不明、全国転勤とか残業とかいっぱいこなしてくれたらたぶん将来出世とかするんじゃない?知らんけど」という終身雇用、年功序列カルチャーが、彼ら優秀層に絶望的に不人気である、という現実があるためです。

ちなみに以前書評を書いた「日本一学生が集まる中小企業の秘密」は、その新卒一括採用の弱点を巧みに突くことで無名ながら大手内定者を自社に取り込むことに成功している企業の話ですね。

だからまあこれから試行錯誤はするだろうけど、最終的には日系大手も、事業部に数週間放り込んでインターンさせた上で配属約束付き内定出したり、インターンの評価で初任給+100万円にしたりといった個別待遇で、人材獲得競争に突入することになるというのが筆者の予想ですね。事実上の新卒一括採用の終焉です。

ああ、それから最後に、この話になると必ず「若者の就職率が下がるからダメだ」みたいなことを言う人がいるんですが、スルーしといてOKです。なぜって?今回の話は優秀層と大企業の話なんで、それ以外の人は関係ないから。文句があるんなら一生懸命勉強して企業に必要とされる人材になるか、政府に職業訓練とかしてもらってください。

というかはっきりいって優秀層からすると新卒一括採用なんて迷惑極まりない仕組みなんですよ。「ったくなんで東大出てるのに〇〇大の奴と同じ初任給なんだよ」って99.9%の東大生は腹の中で思ってますから。

で、今までは我慢してきたけどさすがに我慢しなくなって、採用する大企業の側も「よしじゃあ新卒一括採用見直すわ」と歩み寄りを見せようとしている時に、関係ない外野が「就職率ガー」とか騒いでも、エリートも企業も知ったこっちゃないというのが正直なところでしょう。

というわけで、もう「下に寄せる」時代は終わったんです。これからは「上を満足させるコースを作る」ことがどの組織にも不可欠です。それができない組織は淘汰されることになります。






以降、
新卒採用はこう変わる
そして、社会はこう変わる







※詳細はメルマガにて(夜間飛行)









Q:「転職を認めない会社に対し退職代行サービスはアリ?」
→A:「普通にアリです」



Q:「仕事してないのに年上というだけで高給取りのいる職場に我慢の限界です」
→A:「まずは上司と交渉→転職活動の流れをオススメします」



Q:「上司が自分の年齢の半分以下です」
A:「プレイヤーとして成果を上げられればポストにこだわる必要はありません」





雇用ニュースの深層

・「派遣社員は同一労働じゃないから同一賃金にしなくていい」と労組が言うための3年ルール

気づいていない人が多いんですが、非正規の雇用期間を短くするというのは低スキルのままにして同一労働同一賃金を骨抜きにする効果があります。


・さすがに2倍に盛っちゃダメでしょ

役所の障がい者採用水増し問題ですが、どういう人が誤って認定され、どういった感じで働いていたのかをしっかり調査すべきでしょう。





Q&Aも受付中、登録は以下から。
・夜間飛行(金曜配信予定)







スポンサーリンク


ENTRY ARCHIVE
著作
「10年後失業」に備えるためにいま読んでおきたい話


若者を殺すのは誰か?


7割は課長にさえなれません


世代間格差ってなんだ


たった1%の賃下げが99%を幸せにする


3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代


若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来
MY PROFILE
城繁幸
コンサルタント及び執筆。 仕事紹介と日々の雑感。 個別の連絡は以下まで。
castleoffortune@gmail.com
RECENT COMMENT
SEARCH
QRコード
QRコード
お問い合わせ
お問い合わせはこちらまで