緊急事態宣言の今だからこそ見えてくるものを大事にしよう

今週のメルマガ前半部の紹介です。4月6日、とうとう東京都と全国6県に緊急事態宣言が出され、16日には全都道府県へ拡大されました。コロナウイルスとの戦いは新たなステージへと突入したと言ってもいいでしょう。

外出自粛、休校、ソーシャルディスタンスの徹底、リモートワーク等、多くの人たちがこれまで経験したことのない“非日常”の中で過ごしているはずです。

そんな中で、これまで気付かなかった新たな気付きがいろいろと得られていることでしょう。実は個人のキャリアを考えるうえで、こうした気づきはとても重要なヒントを与えてくれるものです。

今回は、非常事態宣言の中でいろいろと見えてきたものについて考察したいと思います。


コロナが丸裸にする人と仕事の本当の価値

経団連加入の大企業の7割がすでに在宅勤務導入にかじを切っていますが、現場の評価は概ね上々のようです。当たり前ですが“働きぶり”とか“残業時間”みたいなわけわからんアナログな目安ではなく、純粋にアウトプットで評価される方がホワイトカラーはストレスが少ないものなんです。

【参考リンク】約7割の企業でテレワーク推奨 経団連調べ

いい年こいて「上司が席にいる間はたとえ暇でも頑張って残業してるふりしないといけない」なんてやってても虚しいだけですから。

一方で、以下のような辛口な意見もあちこちから聞こえてきます。

「これまで会議でそれらしいことを言って存在感を出していた人が、実はそれ以外になにも仕事がないことが丸見えになってしまった」

「課長や部長と何度も会議して最終的に決裁権のある事業部長と会議をしていたが、情報共有を徹底して最後の一回だけに減らしたら資料作成業務が1/5くらいに減った。でもほとんど仕事の無くなった管理職もいる」

「リモートワークを頑なに拒んでいた人が職場にいた。コロナ危機で強制的に導入が決まり上司の指示で各自の担当業務を整理してみたが、その人だけこれといって持ち帰る仕事が無かった」

木を隠すなら森の中、じゃないですが「仕事をしてるふり」というのは、特に担当業務を明確化せずに大部屋で机並べてみんなでわーわー仕事する時にこそやりやすいんです。

リモートワークで担当業務を切り分けてしまうと、誰が何を担当して、どれだけアウトプットをたたき出したのか、白日の下にさらされてしまうわけです。

くわえて、できるマネージャーであればもう一段踏み込んで、業務の効率化まで進めるはずです。たとえば業務プロセスを見直して従来は複数回行っていた打ち合わせを一度で済ませるといったケースが典型ですね。

すると、そうした予備ミーティングを仕切っていたりそこで使われる資料作成で食っていた人たちの作業がやはりごっそり消滅するわけです。

過去30年以上にわたり日本の労働生産性は先進国中最下位レベルに低迷し続けていましたが、その理由は終身雇用でまず人ありきで業務プロセスや組織を構築していたためです。仕事しているふりをしている人や、本当は必要ないんだけどそこに人がいるから仕方なく続けられていた仕事がかなり存在していたわけですね。

コロナ対策としてのリモートワーク推進を通じて、そうした不都合な真実が色々とあぶりだされてきたということですね。





以降、
人脈、取引先を見直す契機に
“10年後”より今この瞬間が重要なわけ





※詳細はメルマガにて(夜間飛行)







Q:「資産課税の強化は有効でしょうか?」
→A:「大きな期待はしていませんが、とりあえず始めてみることには反対ではありません」



Q:「〇〇〇に関する〇〇と〇〇の論争をどう見ますか?」
→A:「論争になってないと思います」






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どうして日本はみんなに直接現金支給しないの?と思った時に読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。コロナ危機に際し、米国が国民への支援策として早々と一人当たり1000ドルの振り込みを行うことを決定しました。

一方の日本では一人12,000円だの10万円だの議論された挙句、所得等の条件付きで世帯当たり最大30万円の支給に落ち着きそうな雰囲気ですが、まだ確定ではありません。とりあえず政府から個人への支給が決まったのは「マスク2枚」だけ。

これを受けてSNS上では「国民を思う気持ちの差だ!」といきり狂う中高年の姿も目に付きます。本当に日本政府は渋ちんなんでしょうか。国民のことなんて何も考えちゃいないんでしょうか。




国と国民の関係を考えるいい機会なのでまとめておきましょう。


なんでも間に企業を挟むのが日本流

結論から言えば、米国並みとはいかずとも少なくとも欧州諸国以上には、日本政府は(雇用対策としては)手をうってはいるな、と言うのが筆者の見方です。

じゃあなんでマスク2枚しか貰えないんだと思う人もいるでしょうけど、それは社会のシステムが全然違うからです。

米国は世界で最も解雇のハードルが低く、余剰人員はあっという間に解雇され、今回のような危機に際しては燎原の火のごとく社会全体にクビの嵐が広がります。

【参考リンク】米新規失業保険申請件数、過去最多の328万件-桁外れの急増

くわえてもともと国民皆保険すらない小さな政府なので、解雇されたら医療機関にも行けず、家賃も払えずに生活が詰んじゃう人もたくさん発生するわけです。

で、たとえば「父ちゃん腹減ったよ」「しょうがねえなあ、ちょっと待ってろ」と言って家にあるショットガン抱えて近所のスーパー襲いに行っちゃう人なんかも大発生しかねないわけです。

それを防ぐために、ここ一番で速攻で個人に大盤振る舞いするわけですね。

一方の日本は、正規雇用の解雇は世界で一番ハードルが高い国の一つであり、OECDやILOからは「あまりにも正規雇用が保護されすぎているから非正規とバランスとるために規制緩和しろ」と勧告までされている国です(左翼はガン無視ですが)。

【参考リンク】Japan could do more to help young people find stable jobs



言い換えると、労働者の生活の面倒をすべて民間企業に丸投げしているわけですね。筆者はこれを“民営化社会保障”と呼んでいます。つい最近も70歳終業法が成立しましたが、あれなんか社会保障と雇用がパッケージ化している典型ですね。

そんな日本国では、危機に際しても米国ほどには失業率は上がりません。筆者の感覚でいうと米国で失業率10%ほどの不況に突入したとしても日本ではせいぜい失業率は5%程度でしょう。それは企業が頑張って雇用を死守しようとするからです。

余談ですが、ここで活躍するのがあの“内部留保”なわけです。それを勝手に国民で分配しようと言ってる共産党なんて連合から見ればコソ泥みたいなわけで、野党共闘なんて100%実現するわけないですね(苦笑)

だから、政府がまず手始めに支えなければいけないのは、頑張って従業員を守ろうとしている企業なわけです。これが米国と違って個人がありがたみを実感しにくい点でしょう。

どうしても雇用対策は直接個人に給付しろというのなら「企業は自由に余剰人員を解雇してください。労働者の面倒は政府が直接みますから」というロジックになるんですが、誰もそんな話はしてないですよね(苦笑)

その意味でいえば、政府は取り急ぎ雇用調整助成金の拡充を通じて、企業に休業手当の最大9割助成(大手は75%)を打ち出しているので、企業に対してはやることはやっているなという印象ですね。

一点フォローしておくと、「マスク2枚だけ」と同様に、SNS上では「政府が給料の9割を保証してくれるらしい」という情報が駆け回っていますが、これもやや正確さに欠けますね。

正確には休業手当の最大9割を助成というものであり、事業主が申請して事業主に支給されるものです。休業手当は平均賃金の6割なので、その9割、一日あたり上限8330円なので、まあ給料の9割からはだいぶ下がると思います。

【参考リンク】厚労省/新型ウイルス「雇用調整助成金」助成率最大90%に拡大

まとめると、個人から見ると日本政府から直接受け取れるのはマスク2枚なのでブチ切れたくなる気もわかるんですが、上記のように企業を通じて最低限やることはやっているというのが実際ですね。米国は例外としても、すくなくとも欧州以上には頑張っていると言っていいと思います。

「欧米と違い日本政府はマスク2枚だけだ!」ってイキってる人はたぶん「放射能で東京壊滅!」とか「TPPで日本はアメリカの植民地に!」とか言ってたバカなので今回もスルーしといてOKです。







以降、
企業任せの“見えないコスト”
日本に立ちはだかるポストコロナの大きな壁






※詳細はメルマガにて(夜間飛行)






Q:「上司がリモートワークを許可してくれません」
→A:「たぶん存在感がうすくなるのが怖いんだと思いますよ」



Q:「年収1.5倍のオファーは受けるべき?」
→A:「ワクワクするんならそりゃもう行くしかないでしょ」




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どうして労組って初任給一万円上げるだけで怒ってるの?と思ったときに読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。先日、2020春闘で富士通が初任給の引き上げを発表し、その額のつつましさが波紋を呼びました。

【参考リンク】富士通、初任給1万円上げの波紋 デジタル人材に危機感


個人的には富士通よりも「抜け駆けだ!」と怒ってる他社労組幹部の器の小ささっぷりが泣けてきますね。まさに“コップの中の嵐”状態です。

米国なら優秀者には一年目から10万ドル超は当たり前と言われる現在、日本の電機というコップの中でいったい何が起こっているんでしょうか。いい機会なのでまとめておきましょう。


オッサン化する労組


先述の記事のスケールの小ささを笑う前に、まずは労組の現状を理解しておく必要があります。実はこの20年ほどの間に、日本企業の労組はものすごく大きな変化を遂げています。

それは一言でいうと“オッサン化”です。手元に資料がないので記憶ベースですが、筆者が在籍していた90年代は各社の平均年齢は30代前半~半ばだった記憶があります。

それが、20年経ってどうなったか。

日立: 42.1歳
東芝: 45.0歳
パナ: 45.6歳
三菱: 40.4歳
富士通: 43.2歳
NEC:  43.4歳

ソニー: 42.4歳

(四季報より。ソニーは電機連合非加盟)

もう完璧にオッサンだらけになっちゃってますね(苦笑)

だいたいバブル盛期の90~91年あたりに後先考えずに各社1千人前後採りまくる
→バブル崩壊後、92年、93年あたりに新卒採用見送る企業が続出
→その後、細々と採用数絞って氷河期世代爆誕
→そんな一方で定年だけは年金の都合で55→60→65歳と伸び続ける
→気が付いたら総オッサン化

という実に日本型雇用らしい流れですね。

筆者の同世代の知人にも「入社以来ほとんど後輩が配属されないもんだから45歳の今もずっと年下。永遠の若手状態だよ」とこぼしている人間、複数いますね。

と書くと「女性もいるんじゃないの?」と思う人もいそうですが、もともと日本型雇用は女性をあまり採らない上に結婚や妊娠を機に退職される(あるいはさせられる)方が多いので、年齢が上がるほどオッサン純度があがるわけです。

さて、この40代というのは日本型雇用的にいうと実に微妙な年代でもあります。日本企業の幹部候補選抜(要するに出世競争)は40歳までにほぼ終了します(順調に課長→部長と出世していく人も少数いますが彼らは組合を抜けるのでここでは無視します)。

日本型雇用には「すごい成果上げたからボーナス200%アップ!」みたいなアップダウンはほとんどないので、そこからは一種の無風状態が続くわけです。とはいえ、むしろ社会人的には40代以降に出費は増えるもの。

こうなると人材的には「新しいもの、リスクのあるものはやりたがらず、自分の賃金が減ることに対しては異常にセンシティブになる」傾向が強く出ます。

まとめると、グローバル化やGAFAの台頭で環境は激変しているのに、組合という存在は逆に保守化の度合いを強めているということです。電機は特にそうですが、これは他業種の労組にも程度の違いはあれ見られる傾向ですね。





以降、
オッサンたちは何を恐れているのか
初任給を100万円上げるより重要なこと








※詳細はメルマガにて(夜間飛行)








Q:「某社の初任給1万円はどのくらい効果がありますか?」
→A:「初任給引き上げ競争がスタートすれば、意義はあったんでしょう」



Q:「在宅勤務で生じる業務量の差はどうすべき?」
→A:「本人がどういう人材かで判断します」






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在宅勤務で一人働き方改革を実現する方法

今週のメルマガ前半部の紹介です。コロナウィルスのせいでなし崩し的にリモートワーク態勢に突入しつつある日本企業ですが、現場レベルでは概ね好評のようです。

【参考リンク】「アドビ システムズが発表したテレワーク勤務の利点や課題についての調査結果によると、8割以上が業務の生産性が上がったと感じ、9割以上が定期的にテレワークを実施したいと回答した」



ホワイトカラーの仕事なんて労働時間で評価できるわけないんだから、さっさと切り分けて各人がベストと考えるやり方でやった方が絶対いいに決まってるんですよ。

前回のメルマガでも述べた通り、このメリットを知ってしまった以上、企業も個人も以前の“文化祭方式”の働き方にはなかなか戻れないでしょう。リモートワーク、ひいては日本人の働き方はポスト・コロナで大きく進化するはずです。

とはいえ、どう働き方を見直せばいいのかわからないという人もまだまだ多いはず。というわけで、今回は個人が従来のワークスタイルを見直すべきポイントについてまとめておきましょう。


リモートワークはこう使え

従来の日本企業の働き方は、明確に業務の切り分けを行わず、全員で同時に取り組むというものでした。これには変化する状況に対して職場単位で流動的に取り組めるというメリットがありました。

一方で、デメリットとしては個人の裁量が限定的、できる人に仕事が集中するので皆ほどほどにやるようになるといったものが挙げられます。これが生産性低迷の要因ですね。

リモートワークを前回述べたような形である程度運用できていれば、ビジネスパーソンの手元には以下の3つの武器がそろっているはず。あとはそれを駆使して上記のデメリットを打破していくのが基本となります。

1.優先順位を付けられる

完全にパラレルに仕事が切り分けられるケースは少なくて、実際には同僚と連携しながら進めることが多いでしょうが、それでも一日の中で業務を進める優先順位くらいは付けられるはず。

もっとも脳が元気で体力も満タンな午前に重要度の高い仕事を持ってきて、事務作業や打ち合わせは午後に回すだけでずいぶん生産性は上がるはずです。

「これ絶対誰かが仕事してる風に見せるために作った仕事だよね?」みたいな仕事、きっと誰でも一つや二つは抱え込んでいると思いますが、もちろんそういうのは優先順位最下位でOKです。

筆者ならいっそのことやらないまま放置して実際に損害が発生するか実地試験してみますね。誰も困ってないようだったら業務廃止の根拠になりますから。

2.効率的に働ける

日本人は定時(それも会社によっては定時30分前とか変なルールがあったりする)に出社するのが正しい働き方だと子供のころから叩き込まれていますが、もちろんそんなことはありません。

効率的な働き方は人それぞれ。筆者の知人には朝4時起床で9時までに重要な仕事はすべて終わらせるという人も、ランチの後にジムワークを入れてそのまま退社、夜に2時間だけ復帰、という人もいます。聞くと「それが自分にとってもっとも効率的な働き方だからそうしている」とのこと。

もちろん世帯全体の効率も考えてOKです。たとえばパートナーのことを考えて幼稚園の送り迎えをしてから仕事、というのもありです。

要するに、今まで職場という制約があってできなかった柔軟な働き方をすることで、自身やパートナーの生産性を向上させるわけですね。

3.ミッションが明確なので新しい課題に取り組める

そして、とりわけ重要なのが「自身で新たな課題を見つけ取り組める」ということです。

従来の働き方だと手の空いた人間がパッパッと作業に取り掛かるので一見すると合理的に見えるんですが、各人のミッションが曖昧なので深掘りする人が少ないんですね。

むろん全員ではありませんが、ミッションが明確になっていれば、仕事そのもののボトムアップを考える人が必ず出てくるわけです。

たとえば採用チームで担当者が「君のミッションは早慶、東大東工大クラスの優秀層の母集団形成だ。頼んだぞ」と言われた場合。

もちろん指示に忠実にせっせと母集団形成の方法を考えるだけでもOKなんですが、きっと中にはこんな課題を見つけ出す人もいるはず。

「そもそも早慶、東大東工大OBってうちでホントに継続的に成果を上げているの?優秀層の定義はそれで正しいのか?」

で過去10年分の採用者の入社後5年のパフォーマンス調査をやってみたりした結果(たとえばですよ→)「早慶は人によってピンキリ、東大は理系修士以上は優秀と言えるが文系はそうでもない」みたいな結果が出たりするわけです。結果、採用活動そのものがレベルアップするわけですね。

昨年より、働き方革命の旗のもとに「重要なのは時間ではなく成果!」「仕事の付加価値を高めよう!」みたいなことが散々言われてきましたが、さて実際に何をどうするのかとなると具体的な話がなかなか出てこないような状況が続いていました。

でも幸か不幸か、それを実現するための3つの武器は、リモートワークによってビジネスパーソンの手に入ったわけです。それを活用できるかどうかで人材レベルに大きな差が生まれることでしょう。





以降、
無駄な仕事を一気に切り捨てるチャンス
仕事の少ない人はこれがラストチャンスと考えるべし!





※詳細はメルマガにて(夜間飛行)






Q:「社内の匿名アンケートは信用しても大丈夫ですか?」
→A:「問題ないと思いますが……」



Q:「『大学なんて行かなくていい』という子供になんというべき?」
→A:「とりあえず『大学出ておけばなんとかなる』という時代が終わったのは確かです」





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会社にリモートワーク推奨されたんだけど何から手を付ければいいの?と思ったときに読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。中国武漢発の新型肺炎のウイルス感染者が日本各地で次々と報告される中、日本企業が相次いでリモートワーク導入にかじを切っています。

【参考リンク】GMO、新型肺炎で国内4000人を在宅勤務に
【参考リンク】ドワンゴ、新型肺炎で1000人を在宅勤務に

以前からこうした状況を予測して入念に準備を進めてきたGMOはさすがという感じですね。全社員に即日在宅勤務を指示するドワンゴも素晴らしいフットワークだと思います。

でも筆者が個人的に一番驚いたのはNTTですね。

【参考リンク】新型コロナ対策でNTTが約20万人の従業員に“テレワーク”推奨


“親方日の丸”の本家本元、従業員数20万人の巨象NTTが全従業員にテレワーク推奨ですから。これで追随する企業がかなり増えた印象がありますね。

とはいえ、ほとんどの企業は「あくまでも推奨」という形で実際の運用は現場の事業部レベルに任せているのが実態です。実際に「会社から推奨されて完全無視というわけにもいかないため手探りで運用を模索中」といった話をちらほら聞きますね。

というわけで、今回は現場レベルでテレワークとどう向き合うかを取り上げたいと思います。中間管理職の方にはもちろん、チームレベルでどうコロナ危機を乗り越えるかに関心のあるすべてのビジネスパーソンにとって示唆に富む内容となるはずです。


日本企業にとって“鬼門”だったテレワーク


テレワークそのものはもう30年以上前から存在する言葉ですが、これまで日本ではまったくといっていいほど浸透しませんでしたね。日本企業においてはみんなが同じ時間に同じ場所にそろって仕事を開始するというのが大前提だったためです。フレックス勤務や裁量労働がいまいち評判がよくないのと同じ事情ですね。

「日本人の横並びを愛する国民性のためだ」みたいなことを言う人もいますが、むろんそんなことはありません。ちゃんとした理由があります。それは人事制度がそうなっているためです。

意外と知らない人が多いんですが、日本以外の国では、入社に際して職務記述書という契約書を会社と交わして「〇〇の仕事を担当し、それに対して報酬はいくらもらう」ことを明記します。

これだと最初から業務内容も報酬も明確で、成果評価もクリアになりやすいというメリットがあります。そして、各々の担当業務がはっきりしているから柔軟な働き方も可能です。毎日午後から出社しても「自分の担当業務できっちり成果出してますんで」とバーンと言えちゃうからですね。

一方、われらが日本国の場合「入社時に具体的な業務内容は決めず、会社に与えられる仕事は何でも全力で取り組む。給料は一律からスタートして勤続年数に応じて緩やかに上昇」という独特の風習が一般的です。というかもうこの時点でマトモな外国人は絶対入社しないですが(苦笑)

担当業務がよくわからず成果もわかりにくいため、評価するには実際の働きぶりを目で見て評価するしかないんですね。だから「同じ時間に出社させ同じ職場で働くこと」が大前提なんです。

テレワークが浸透しなかったのもフレックスや裁量労働が馴染まないのもこういう構造的な事情が根っこにあったわけです。


この構造問題こそ働き方改革の本丸である理由


この構造的問題、他にもいろいろなテーマに絡んでくる重要な話なので今回は少し具体的に掘り下げておきましょう。

わかりやすくするため、百科事典をこれから編集するプロジェクトがあったとします。世界標準の職務給方式に従えば、メンバーはあらかじめこんな風に担当を割り振られることになります。

「Aさんは“あ行”、Bさんは“か行”を担当してください。Cさんは“さ行”ですがちょっと業務量が多いのでその分賃金は割増しますね」

といってマネージャーがそれぞれの担当するワードの書かれたカードを配って作業開始。
担当範囲が明確に割り振られているので、出社時間は自由だし在宅勤務もOKです。

一方、日本が世界に誇る終身雇用方式だとどうなるか。管理職がすべてのカードを大部屋の真ん中にどばっと広げてこう言うわけです。

「さあさあみんな仕事仕事!しっかりやってね!」

日本式のマネジメントなるものは、その中で各人の働きぶりを見て行われることになります。リモートワークなんて論外ですね。

くわえて、以下のような諸問題も発生します。

「早く仕事終えて帰ろうとすると管理職が追加で仕事振ってくる問題」

Aさんがデートのためにいつもの2倍集中して作業し、普段の量の仕事を定時で終わらせて退社しようとすると、管理職はこんな言葉をかけてきました。

「あ、きみ暇なんだ。じゃあ遅れてるCさんの作業手伝ってよ」

こうして早く仕事をすればするほどどんどん仕事量自体は増加することになります。査定で評価されることはあるかもですが基本お給料は変わりません。

結果、なんとなく退社が許される20時頃までゆっくり仕事する人が増えるので生産性は下がります。

「有給使うと白い目で見られる問題」

Bさんは連休に有給休暇を2日ほどつけて趣味の海外旅行に行きました。ところが帰ってきてからというもの、なんだか同僚の態度がよそよそしいことに気づきます。

「みんな連休明けで遅れを取り戻そうと頑張ってるのに、なんであいつ一人だけ遊びに行ってるんだよ」
「そういえば去年もあいつだけ有給使ってたな」

職場には「病気や身内の不幸なら有給とってもOK」という“空気”があります。そのうちBさんも空気を読んで、趣味での有給使用は控えるようになりました。


よく日本の有給取得率が低いのはまじめな国民性のせいだ、みたいなことをおっしゃる人がいますが、そんなことないですね。担当範囲を明確に割り振らぬままみんなで一緒に働くスタイルなら、どの国の出身者だって足の引っ張り合いを始めるはずです。これも構造的な問題なんですね。

【参考リンク】日本が最下位?有給所得率の最新国別ランキング

「育休や短時間勤務を利用すると陰口叩かれる問題」

Cさんが出産し、育休を取得したのちに短時間勤務制度を利用し始めました。ところが、復職後にCさんは同僚たちの間でいろいろと嫌味を言われていることを人づてに耳にします。特に同性ほどひどい批判を口にしているとのこと。

「あいつは自分だけ制度にただのりしている」
「組織に対して義務を果たしていないくせに」

2人目を妊娠した時、Cさんはいたたまれずに会社を退職することを選択しました。


これも有給の件と同じですね。みんなで仕事する職場でこうした制度を利用すると、それは他者からはフリーライドに見えてしまうわけです。

よく、わかってない識者が少子化対策として「育休の期間や給付金を拡充しよう!エイエイオー!」みたいなことを言ってますが、上記の構造問題にまったく関係ないどうでもいい政策だというのは明らかですね。現状だといくら金ばらまいたって大手のごくごく一部の高学歴キャリアウーマンが潤うだけの話でしょう。

まとめると、日本の働き方をめぐる諸問題の根っこには、業務を明確に割り振らず無制限に引き受けさせるという構造上の問題があるわけです。

メリットですか?一つだけ思いつくのは、会社が指図しなくても従業員が「あいつは休んでけしからん」みたいな自警団を勝手に結成して風紀(?)を引き締めてくれることですかね。

有給与えても使おうとしない、命じなくても居残って残業するカルチャーは、経営側からすればメリットに思えたかもしれませんね。もっとも、そんな重箱の隅をつついていれば利益の上がった時代なんて高度成長期からせいぜい80年代後半までだと思いますけど。

現在では職場環境を悪化させてむしろ生産性を下げる効果くらいしかないように見えます。

ちなみに筆者はそうした働き方のことを“文化祭方式”と呼んでいます。特に担当を割り振るでもなく、みんな教室で一緒に作業する。手を抜いていると思われると仲間内で悪評がたつので「ぶっちゃけいらないような仕事」もどんどん手を出し頑張ってるふりをする。

そうやって最後は「もう遅いから、今日はおしまい!」と先生に言われてようやくお開き……というアレですね。

まあ10代の頃は仲間同士和気あいあいとやるのも楽しいもんですが、会社でいい年こいたオッサン中心でやってもストレスフルなだけなのでオススメはしませんね。





以降、
今すぐリモートワークを始めるには
トンネルの先に待つ明るい未来







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Q:「転職に対するカウンターオファーは日本でも有効?」
→A:「非公式には既に始まっています」


Q:「副業をどうやって見つけるべき?」
→A:「ずばり、今持っている人脈を活用することです」





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コンサルタント及び執筆。 仕事紹介と日々の雑感。 個別の連絡は以下まで。
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