なんで経団連って突然『もう終身雇用やめるわ』とか言い出したの?と思った時に読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。
中西・経団連会長が「正直言って、経済界は終身雇用なんてもう守れないと思っているんです」と発言して大変な話題となっています。個人的には徳川慶喜が「正直言って、幕府じゃ日本は守れないと思っているんです」といって大政奉還したのと同じくらいのインパクトですね。

【参考リンク】経団連会長“終身雇用を続けるのは難しい”

これをうけて主にビジネス界隈の人は「よくいった!さすが会長!」や「20年遅いわ」といった声が、左翼界隈からは「労働者の切り捨て宣言だ!」といった批判が乱れ飛ぶ状況となっています。

会長の発言の是非は。そして、これから終身雇用はどうなってしまうのか。いい機会なのでまとめておきましょう。


もともと熱烈な日本型雇用擁護者だった経団連


意外に知らない人が多いんですが、実は経団連は連合と並んで、終身雇用や年功序列を柱とする日本型雇用の最大の擁護者でした。終身雇用見直し論を主張していたのは経済学者や人事系の識者くらいで、今でも経営層の1/3くらいは「え?終身雇用じゃダメなの?」くらいの認識でいると思います。

理由は以前も述べた通り、経営者自身が日本型雇用に勝ち抜いたチャンピオンだからです。会社に行けば同様に出世レースに勝ち上がってきた最優秀人材に囲まれ、痒い所に手が届くような対応をしてもらえます。外資なんかと違っていちいち年俸交渉しなくてもいいし、人生会社一筋、辞令一枚で全国、いや世界転勤してくれる忠誠心に満ちた可愛い部下たちばかりです。

一方、その真逆な従業員と日頃付き合っている人事部の人間はすっかりひねくれて真逆の意見を持つわけですが。

【参考リンク】終身雇用バンザイ宣言したドワンゴに追い出し部屋が必要なワケ

たとえば、経団連の前身の日経連が1995年に発表した「新時代の『日本的経営』」でも、今後は有期雇用を活用して雇用調整手段としつつ、管理職、基幹業務は総合職で固めて従来通りの終身雇用路線を堅持するとはっきり宣言されています。少なくとも最近までは、彼ら自身も日本型雇用が日本企業の強みだと信じて疑わなかったわけです。

そういう意味では、今回の経団連会長、それもモノづくりの雄である日立出身の中西会長の口から終身雇用無用論が飛び出したという事実には、非常に大きな意味があると筆者は考えます。

ではその是非は。少なくとも当事者の一方である企業が「もう終身雇用はムリ」と言っているんだから是非もへったくれもないでしょう。判例がある以上はいきなり放り出したりは出来ないでしょうが、少なくとも中高年の優遇措置は廃止して徐々に流動化していくでしょう。

なんてことを言うと「従業員の生活はどうなるんだ!」と青筋立てて怒る人がいますけど、知ったこっちゃないですね。そもそも企業に従業員の人生の面倒を見る義務なんてありませんから。あるとすればそれは政府の義務です。

日本には失業給付、国民皆保険、生活保護といった素晴らしいセーフティネットがあるので終身雇用の足かせを外された人も安心して再就職活動してくださいね。

最後に。筆者は会長のインタビューで実は一番重要なのは後半の以下の部分だと考えています。


その上で、これまで日本では、4月の一括採用で入社せずに、あとから非正規で入社した場合、たとえスキルを身につけたとしても正社員に待遇で差をつけられるというケースを示し、そうした雇用システムに疑問を呈した。



氷河期世代がまだ現役のうちにこういう取り組みがなされるのは素晴らしいことですね!筆者は(雇用問題については)リベラルなので全面的に支持したいと思います。あ、それと今回の会長発言に反対だという人は、とりあえずリベラルの看板は下ろして「差別主義者」「身分制度支持者」とか名乗ることをオススメしますね。





以降、
このタイミングで方針転換した理由
これから日本型雇用はこう変化する







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Q:「雇用改革が進むタイミングは?」
→A:「今は結構大きなターニングポイントな気がします」



Q:「障がい者採用でもリストラ対象となりうるのでしょうか?」
→A:「聞いたことないですが備えはしておくべきでしょう」



Q:「富〇通の45歳以上リストラについて解説してください」
→A:「〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇」






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どうして新人は転勤を嫌がるの?と思った時に読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。
最近、「転勤を嫌がる若手」が話題に上る機会が増えています。転勤前提だと学生が集まらないため、企業によっては「同意のない転勤はさせない」ことを売りにするところも出てきているようです。

【参考リンク】就活生の7割が敬遠…なぜ「転勤嫌い」が急増しているのか

なぜ若手は転勤を敬遠するようになったのか。上記記事にあるように「甘ちゃんになったから」なんでしょうか。いい機会なのでまとめておきましょう。

そもそも“転勤”とは何なのか

実は末端の従業員も含めて会社都合で全国転勤するシステムというのは日本オリジナルのものです。他国ではそんな慣習は存在しないし、会社が命じても従う労働者は稀でしょう。

この仕組みの存在理由は以下の3つです。

1.終身雇用が維持できる

北海道支社で欠員が生じた時に東京で余っている人を転勤させることで、雇用自体は維持できます。要するに人事部がハローワークの役割を代替しているようなものですね。

2.社内事情に詳しいゼネラリストが育成できる

一つの職場にたこつぼ状態にするのではなく、幅広く社内業務を経験させることで、将来的にどのポストでも務まるゼネラリスト幹部候補に育成できるというメリットがあります。

3.組織の風通しを良くできる

終身雇用型組織では数年おきに人を移動させ、職場の風通しを良くすることを必ずやります。でないと職場や事業所がニッチな運命共同体となってしまい不正隠避などが必ず発生するからです。

【参考リンク】神戸製鋼のデータ偽装 東芝問題と根は同じ「村社会」の弊害

とまあいろいろ存在意義はあるんですがやっぱり1番がもっとも大きいですね。労使ともに恩恵があるわけで。

たまに「全国転勤なんて人権無視だろ!労組は何やってるんだ!」みたいな人もいますが逆ですね。労組に相談にいっても「せっかく会社が仕事を用意してくれてるのに甘えたこと言うんじゃないよ。こんなとこに来る時間あったら帰って引っ越しの準備でもしなさい」と説教されることでしょう。




以降、
なぜ若者は転勤を嫌がるのか
会社に「No」と言える人材だけが生き残る







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Q:「新規事業での人事評価はキャリアにどう影響するのでしょう?」
→A:「枠が無い分いろいろと裁量をもって取り組めるはず」



Q:「官僚はどこまで労働市場改革を理解しているんでしょうか?」
→A:「とっくに既存の制度が限界を超えていることは痛感しているでしょう」




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どうしてオジサンたちはやる気無いの?と思った時に読む話

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筆者は数年前から主にメルマガ内で何度もこんな話をしてきました。

「これから日本企業が直面する最大の人事上の課題は、やる気のない中高年社員をどう扱うかです」

実際、最近はあちこちの会社から悲鳴があがっていて、一般のメディアでもこの問題が取り上げられ始めています。

【参考リンク】ミドル・シニア社員のキャリア自律とは?

いったい、オジサンたちに何が起こってるんでしょうか。オジサンたちには明るい未来はあるんでしょうか。オジサンもオジサンじゃない人にも良い機会だと思うのでまとめておきましょう。


なぜオジサン達はやる気を失ったのか


結論から言えば、キャリアにそれ以上の“上がり目”がなくなったことが、オジサンたちのやる気が無くなった原因ですね。人間は今頑張れば必ず今以上豊かになれるんだという確信があれば歯を食いしばってでも頑張れますが、そうならないとわかった瞬間から極力手を抜いて楽をしようと考える生き物だからです。

以下は、代表的な「やる気を失ってしまったオジサン」たちです。きっと誰でも職場に最低一人は思い当たる人がいるでしょう。

1.万年ヒラ社員が確定したオジサン

多くの日本企業において幹部候補選抜は課長昇格であり、だいたい35~40代前半で実施されます。90年代なら50歳過ぎても「あいつは根が真面目な奴だから」といった役員推薦とかで課長にしてあげてましたけど、今はもう40半ば以降はまずないですね。

40代になって後輩が先に昇格したらチェックメイトと思って潔く諦めましょう。厚労省の調査によれば、既に大卒50代の過半数がなんの役職にもついていないヒラ社員とのデータもあります。この無気力オジサン層は頭数の多いバブル世代を筆頭に、近年は団塊ジュニア世代にも拡大し、社内一大勢力となって人事部を悩ませています。

2.役職定年でポストを失ったオジサン

一方、運よく部課長ポストに就けたからといって安心はできません。いくらでもポスト(とそれを下支えする部下たち)を増やせていた80年代ならともかく、今はむしろ組織をスリム化してポストを減らす方がトレンドですから。

となると事業部長や本部長といったハイクラス管理職に上がるごく一部の管理職を除き、中間管理職の人達をいつまでもポストの上で胡坐をかかせておく余裕は日本企業にはありません。

そこで、多くの企業において“役職定年”という制度が導入され、55歳前後でポストが召し上げられるようになりました。召し上げられちゃったあとはどうするのか。“○○課長”みたいな肩書だけつけてもらうパターンが多いですけど実質的には部下のいないヒラとして現場に残ることになります。

本人も特に担当があるわけでもなく、周囲も元上司に仕事を頼むわけにもいかず、たいていは「名前を呼んではいけないあの人」みたいな微妙な存在と化しているケースが多いです。

ちなみに筆者の知人の元人事部長さんはこんな名言を残されています。

「僕は空気になりきることにしたよ。僕がやる気出したら周囲はもっと困るだろうから」


ちなみに、特に大企業では役職定年が若くなる傾向があり、このグループも勢力拡大傾向にあります。なまじ昔は偉かった分、扱いには細心の注意が必要です。

3.定年後再雇用されたオジサン

年金支給開始年齢の引き上げに伴い、多くの企業では定年後に希望者を65歳まで継続雇用するようになりました。製造ラインの技術者や保守管理業務といったノウハウの活きる職種を除き、これもあまりよい評判は聞きません。

「俺だって好きで働いてるんじゃないんだ、文句があるなら国に言え」と逆切れしてる60代もたまにいます。はっきりいって子育ても一段落し出世とかどうでもよくなった60代は最強だと思います。年下の上司に公然と反抗するオジサンもたまにいます。

以上のように、45歳以降のオジサンの中には相当数の割合でやる気のないオジサンが混じっているということです。現在の大企業の平均年齢は40代前半ですから、下手をすると5割くらいはその予備軍という見方もできます。

ちなみにオジサンだけじゃなくオバサンはどうなんだという疑問を持つ人もいるでしょうが、日本企業はそもそも女性をほとんど総合職としては採用していないので、やる気のないオバサン問題というのは、少なくとも筆者は聞いたことがありませんね。

「幹部候補だから、将来は出世できるから」と滅私奉公してきたオジサンは約束を反故にされるとやる気無くなるけど、最初から会社と適度な距離感をもって働いてきた女性は期待もしてなかった分、失望もしていないということでしょう。




以降、
終身雇用制度、3つの誤算
日本企業がやる気をリブートする方法





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Q:「韓国、台湾、中国へ渡った半導体技術者は、その後どうなったのでしょうか?」
→A:「『使い捨てにされた』って怒ってる人って実際は日本企業に多いですね」



Q:「技術者派遣で専門性を磨くのはアリ?」
→A:「派遣技術者ですごい人がいるかどうかで判断すべきでしょう」




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一般職と総合職って何がどう違うの?と思った時に読む話

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先日、三井住友銀行が一般職を総合職に一本化すると発表して話題となりました。

【参考リンク】総合職・一般職を統合へ 三井住友銀、来年から

簡単に説明すると、これからAI導入等で業務内容が大きく変化することが確実なため、従来のコース別採用を廃して柔軟に対応できるようにする、というのが狙いのようです。

そのこと自体は事実でしょうが、実は一般職の見直しには、もっと人事的に重要なメッセージも含まれています。おそらくこの動きはこれから他行や異業種にも波及するでしょう。というわけで、今回は本件についてまとめておきたいと思います。

一般職とはそもそも何なのか

一般職というのは、主に大企業に導入されているコース別採用の一つで、一般的な事務作業を担当する職種です。学歴は高校卒から大卒まで会社によって様々ですが、基本的に転勤がなく、昇給も出世も限定的といった特徴があります。そして、そのほとんどが女性です。

常々言っているように、終身雇用というのは残業、全国転勤上等という滅私奉公スタイルが要求され、当然ながらその主な担い手は男性総合職となります。

かといって全員男性だけで固められるかと言えばそれも無理なので、負担も出世も限定的な一般職コースをサポート的な位置づけで設置しているわけです。

もともとは日本企業にコースはなく、女性は女性だからという理由だけでお茶くみと事務作業だけやらせて賃上げもせずに使い倒していたんですが、1985年に男女雇用機会均等法で性差別が禁じられたため、処遇の差を“理由付け”するために導入されたのがコース別採用というわけです。

かくして、わが国には「賃金も昇級も限定的で、なぜか女性のみで固められた一般職枠」なるものが21世紀の現在もばっちり存在し、男女間の賃金格差を押し広げているわけです。

【参考リンク】年功賃金、男女格差......収入カーブから見える日本社会の歪み

あ、たまにこの手の話をすると「わが国では女性は昔から家庭を守るのが伝統だった」とかおかしなことを言い出す人が右界隈にいるんですけど、当然ながら専業主婦も一般職もぜんぶ高度成長期以降に生み出されたものなのであしからず。




以降、
一般職が不要になったわけ
実は無くなるのは“総合職”の方







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Q:「あからさまな違法契約がまかりとおるのはなぜか」
→A:「本気に受け取る人がたまにいるせいです」



Q:「東京より地方の方がメリットは多いですよね?」
→A:「人によりますが筆者も地方の方が暮らしやすいと思います」




ショートショート「AIリクルーター」







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書評「残業学」





ネットではしばしば以下のような論調が目にとまる。

「日本の残業時間が長いのは会社が無理やり働かせているから」
「日本人は勤勉だからついつい残業してしまう」
「残業手当を割り増しさせれば、残業を抑制することが出来る」

こういうステレオタイプな先入観にロジカルにダメ出ししてくれるのが本書である。


たまに「日本には労働時間の上限が法で定められていない」という人がいるが、それは間違いだ。労基法にはちゃんと法定労働時間が書いてあるが、労使が特別な協定を結んでそれを超過して残業できるようにしているというのが実情だ。経営側はともかく、労組はなぜ強力するのか。それは“残業”が組合にとっても大きなメリットがあるためだ。

日本企業は景気が悪くなった時、人を切るのではなく労働時間を減らして対応していたのです。つまり「景気が良い時は残業し、悪い時は残業を減らす」といった形で、人員の代わりに残業時間を調整用のバッファとして活用することで、外部状況の変化に対応してきました。



残業に協力することで、終身雇用が保証されるというわけだ。また日本の賃金制度自体にも残業を慢性化させる遺伝子が組み込まれている。

一般に日本以外の多くの国では「ジョブ型」という雇用システムがとられています。これは、雇用契約時に結ぶ「職務記述書」という書類によって一人ひとり、明確に仕事の範囲が規定される仕組みです。まず「仕事」が存在し、そこに「人」をつけています。

それに対して日本型の雇用システムは「メンバーシップ型」と呼ばれ、先に「人」を採用してから「仕事」をわりふります。その結果、「必要な仕事に人がつく」のではなく「職場に人が付き、それを皆でこなす」形になるため、「仕事の相互依存度」も高くなります。自分に与えられた仕事が終わっても「職場のみんなが終わっていなければ終わりにくい」ところがあり、他者の仕事を手伝う、若手のフォローアップを行う、といったプラスアルファが求められます。


有給休暇が取れない、裁量労働でせっかく早く仕事を終えても追加で仕事が降ってくるといった問題の根っこはすべてここにある。

また、本書の調査によれば、調査対象全体の40.5%が「残業代を前提として家計を組み立てている」状態で、全体の60.8%が「基本給だけでは生活に足りない」状態だという。

本来は成果が労働時間に比例しない職であっても時給管理しなければならないため、会社としては基本給を出来るだけ低く抑え、残業代の原資をプールせざるをえないのだが、それが結果として「残業しないと生活できない」現状につながっているわけだ。

「残業割り増しを引き上げさせる」と企業はさらに基本給を抑えることになるから、従業員は減った基本給分を取り戻そうともっともっと残業することになるだろう。

対策としては本書も提示するように、まず残業を見える化した上で、減った残業代を賞与や基本給といった形で還元することが不可欠だろう。

それにしても。本書を読み終えて思うのは、昨年あれだけ経団連、連合で「残業の上限を月100時間にしよう」「いや、まだ長すぎる。せめて100時間未満に」とやりあってたのはなんだったのか、ということだ。

お互い残業のメリットはしっかり理解しつつ(というかホントに嫌だったら最初から36協定なんか結ばなきゃいいわけで)「とりあえず、労働者のために頑張ってるアピール」を何か月もやってたわけだ。いやはや。







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城繁幸
コンサルタント及び執筆。 仕事紹介と日々の雑感。 個別の連絡は以下まで。
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