書評「デービッド・アトキンソン 新・所得倍増論」




政府がばらまいてもダメだし、日銀に色々やらせてもダメだし、いったいどうやったら自分の生活は豊かになるんだとお困りの皆さん。原因がわかりましたよ。本書によれば、それは“経営者”です。


東洋経済オンライン連載で既に各所で話題となっている本書だが、元アナリストらしく、詳細なデータ分析で日本の現状を赤裸々にしていく。なんとなく「日本って世界第二位か三位くらいの経済大国でしょ」くらいのぼんやりしたイメージを抱きがちな日本人にとってはなかなか衝撃的な姿がそこに並ぶ。

・一人あたりGDP=先進国中最下位(世界第27位)
・一人あたり輸出額=世界第44位
・外国人観光客からの売上のGDP比=世界第126位

一人当たりで見れば経済大国でも何でもないレベルで、輸出大国というほどには輸出できておらず、インバウンド需要と言ってる割にまだまだ稼げていないのが現実だ。こんなに頑張ってるのに豊かさが実感できないって?そりゃそうだろう。いまやアジアの中でもトップ集団から落ちかかってる状況なんだから。かつて経済大国の地位に上れたのは、一人あたりの水準の低さを豊富な人口でカバーしてきたためであり、生産年齢人口が頭打ちになった90年代に成長も頭打ちになったということだ。

そして、著者はそうなってしまった原因について「人口ボーナスのある時代の日本的なやり方に固執し、組織の生産性を上げるための変革をしようとしなかった経営者にある」と断ずる。著者の最後の提言の一つは、年金資金突っ込んで政府がじゃんじゃん上場企業の株買って、生産性や時価総額を上げるような改革を断行するプレッシャーをかけろというものだ。

方向性でいえばそうだろう。
ただし、ことはそう単純な話でもない。たとえば、日本にも経営の合理化を進めて生産性を向上させようと努力している経営者はいて、代表は日本IBMなのだが、ローパフォーマーをリストラしようとするたびに裁判でボロ負けして「生産性の低い社員も事業も飼い殺しにしろ」という強力な教訓を日本中の経営者に発している。

日本IBMに三たび勝訴 ロックアウト解雇  第4次も無効判決

正直、現状で社長さんの尻叩いても限界があると筆者は思う。

あと、著者の挙げる「日本の生産性が低いのは女性に付加価値の低い仕事ばかりを与えているためだ」との主張も、全くその通りだろう。でも、その背景には、

・男は残業、転勤いつでも来いの総合職、家庭に入る前提の女性は一般職もしくは派遣
・結婚や出産イベントで女性は退職、再就職は非正規雇用で

という戦後の大きなメインストリームがあるわけで、これもやっぱり社長の尻を金属バットでフルスイングしても限界があるように思う。

というか、本気で女性に男性と同じ仕事を任せるのであれば、とりあえず転勤も総合職という制度もなくすべきだし、男も女性と同程度には家事を負担すべきだろう。あ、ついでに、一時的な離職が不利にならないよう、オジサンたちの大好きな年功賃金も全廃して非正規と同じ役割給に一本化するしかない。この時点で、世の8割くらいのオジサンは「えーーーそんなのイヤだよ」となるのではないか。

そう、結局のところ、著者の指摘は正しいのだが、それは著者の言うように「政府が大企業経営者を過保護にしてきた」のではなく「政府が大企業という箱舟に乗った社長や正社員やその家族を過保護にしてきた」というのが実情のように思う。

とはいえ、著者はそのことをよく理解した上で、あえてそこには触れずにまとめてあるように見える。というのも、本書のラストでさらりとこう述べているから。

経営者にプレッシャーをかけると、リストラによって失業者が増えることを危惧する人もいるかと思います。しかし、短期的にはそうであっても、そもそも人が足りず、移民を増やすべきだと言われているくらいですから、中長期的にはその心配は不要だと思います。



さて、ここからは私見。

意外に思う人もいるかもしれないが、日本人の半分くらいは、「どの政策が合理的か」ではなく「どの政策が自分にとって美味しいか」で政策を決める人たちだ。たとえば「消費税をあと10%くらい挙げて、それでも足りない分は社会保障見直しで対応する」という当たり前の政策よりも「政府の借金は国民の資産!だからどんどんばらまけ!」とか「日銀にじゃぶじゃぶ緩和させればインフレになって給料も税収も上がる!」とかいうのにぱくっと飛びついちゃう困った人たちだ。

まあそういう人たちは自己責任なのでほっとけばいいんだけど、困ったことに民主主義国である我が国ではそういう人たちも同じ一票を持っているので、完全放置というわけにもいかない。ほっとくとヘリマネとかそういうのにパクッと食いついて社会がおかしなことになってしまうかもしれない(ブレグジットとかトランプ大統領爆誕というのは、“困った人たち”をほったらかしにしてきたツケの典型だ)。

そういう意味では「経営者が悪い」で上手く誤魔化してある本書は、ぎりぎりのナローパスを狙ったものとも言える。「そうだそうだ、経営者がなんもしないからだ。でも経営者ってなんで何もしようとしないんだっけ?」という具合に、あるべき方向に議論が発展していくかもしれないから。正しい議論の行われるテーブルの端っこに座ってもらえるくらいの意味はあるだろう。


以下、その他の本書のツボ

「移民政策」は、やるべきことから目を背けるための言い訳

現在、移民を受け入れて経済成長を果たしている国は「移民」だけで成長しているわけではないということです。いずれの国もそれ以外のやるべきことをやっており、生産性の水準が高いのです。
(中略)
日本における「移民政策」議論を聞いていると、この前提が無視されています。これは完全に「移民政策」の本質を見失っています。

入社直前に会社がとんでも慌てて目の前の餌には食いつくな、というお話

先日、「てるみくらぶ」という旅行会社が倒産したが、新卒の内定者が50人いることが分かって騒動になっている。社員80人で内定者50人というのはちょっと聞いたことが無い。というか、中小企業で新卒を10人以上採れるというのもすごい。なかなか新卒って採れないんですよ中小って。

てるみくらぶ、約50人を内定済み…採用取り消し伝える

確かにちょっと無鉄砲すぎる数字だとは思うが、少なくとも会社がつぶれるとは経営陣も予想はしておらず、また、若い世代からみてなにがしかの魅力ある会社ではあったのだろうと思う。

で、こういう時には必ず「普段から新卒を採りたくてうずうずしてるけど採れてない会社」がさも救いの手を差し伸べるかの如く食いついてくるだろうなと思ってたら、もう釣り上げられてましたね(笑)

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とりあえず現在は超がつくほどの人手不足なんで焦って食いつく必要もないでしょう。氷河期とは全然状況が違いますから。1,2か月くらい入社時期が先延ばしになったくらいの感覚でじっくり選ぶといいですよ。そういうイレギュラーな出来事を嫌うのはお役所と大企業くらいのもんだから。

それにしても、SNSって情報が速くていいね!










なんで非正規の賃金は上がるのに正社員は上がらないの?と思った時に読む話

今週のメルマガの前半部の紹介です。春闘シーズンになりましたが、空前の人手不足にも関わらず、賃上げペースが昨年割れする企業が目立っています。

【参考リンク】ベア減速、物価上昇も加わり消費にダブルパンチ


一方で、派遣やパートといった非正規雇用労働者の方は、じりじりと賃上げが浸透しつつあります。昨年の所定内給与月額は、正社員0.2%増に対し非正規雇用は3.3%増となり、比較可能な05年以降では両者の賃金格差は過去最少となっています(賃金構造基本統計調査より)。

従来「不景気の時には非正規雇用が切られ、好況になれば正社員にベアを持っていかれる」という具合に、とかく非正規雇用は正社員の踏み台にされているという風潮がありました。ところが、現在発生しているトレンドはそれとは真逆のようにも見えます。

なぜ、交渉力の強いはずの正社員の賃金が据え置かれる一方、立場の弱いはずの非正規雇用の賃上げがじりじり続いているのでしょうか。その原因を理解すれば、これから先の日本経済の行く末もうっすらと見えてくるはずです。

労使は10年先を見越して今年の賃金を決めている

なぜ正社員の賃金は上がらないのか。それは終身雇用を前提とする以上、将来的なリスクも織り込まねばならないからです。もうちょっとわかりやすく言えば、たとえば10年先20年先に会社の経営状況がどうなっていようと、従業員に滞りなく給料が払えるような水準にしておくということです。日本はいったん賃上げしてしまえば賃下げも解雇もきわめて難しいため、少々景気が良くてもそう簡単には賃上げできません。下手に欲張って賃上げしすぎるとあとでリストラされかねないわけですから、こういうスタンスに労組も協力的です。

「釣った魚に餌はやらない」ということわざがあります。よく夫婦間で使われる言葉ですけど、正社員も同じですね。ただこれは愛情の裏返しでもあって、要するにこれからもずっと養っていけないといけないのだから無計画に大盤振る舞いはしませんよということですね。

一方、そんな将来の心配なんてしなくてよい非正規雇用労働者には、労働市場の需給に応じた賃金が支払われることになります。慢性的な人手不足でどの業界でも需要はタイトですから、彼らについてはじりじりと時給が伸び続けているわけです。

というと、たぶんこんな疑問を持つ人もいるでしょう。
「でも90年代までは、今と違って正社員はガンガン昇給してたぞ」
確かに90年代後半までは毎年ベースアップ分だけで1%以上、定期昇給と合わせると3%以上の賃上げが普通でした。当時と現在でいったい何が違うんでしょうか。

それは、将来に対する見通しです。これから日本経済がどんどん成長し、売上げも安定的に伸びていくだろうと多くの企業が予想すれば、賃上げをためらう理由はありません。むしろ今のうちから賃上げしておいた方がより優秀な人材を囲い込めるメリットもあります。90年代半ばまでは、多くの日本企業がそういう未来像をイメージし、賃上げし、実際に消費も増えるという“良い循環”が存在したわけです。

ところが、少なくとも2000年代以降、多くの企業において、この見通しはまったく逆になってしまっています。人口は減り続け、生産性も上がらず、日本経済はよくて横ばい、下手をすればマイナス成長に陥るのではないか……だとすれば、たとえ現在多少の余裕があったとしても、将来に備えて賃金を抑制しておいた方が合理的ということになります。そして、多くの企業がそうすることで現実に消費も抑制され、予想は現実化することになります。そう、昔と逆の“悪い循環”ですね。

交渉力の強いはずの正社員の賃上げが進まない背景には、こうした労働市場の構造的問題があるというのが筆者の意見です。実はこの問題は、2013年に出版された「デフレーション―“日本の慢性病"の全貌を解明する」という書籍にて正面から取り上げられていたテーマでもあります。デフレの原因は金融政策でも人口減でもなく、賃上げより雇用を優先する日本の特殊な労使関係にあるとした同書は、2013年の週刊東洋経済・年間経済書ランキング第一位にも選ばれ、大きな話題となりました。

その後に成立した安倍政権はアベノミクスの名のもとに大規模な金融緩和でデフレ脱却を試みましたが、結果、非正規の賃金が上がる一方で正社員の賃金は停滞を続けるという現状は、見事に日本の労働市場の特殊性を証明したと言えるでしょう。





以降、
賃上げを実現する2つのアプローチ
拡大する非正規のメリット、縮小する正社員のメリット







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Q:「企業内労組の経験はキャリアにプラスでしょうか?」
→A:「でっかいことが色々経験できる社内部門の一つと考えてOKです」



Q:「40歳以上の社員に何度も転勤させる会社はアリですか?」
→A:「まだアリますね、そういう会社。あんまり心配しなくてOKですけど」







雇用ニュースの深層

・シャープは新卒の就職先としてかなりおススメ


他。



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「残業代が欲しいから残業します」という人を減らすためのシンプルな方法

今週のメルマガの前半部の紹介です。先日、ネットで以下のアンケート結果が話題となりました。

【参考リンク】1万人に聞いた「残業する理由」、1位は「残業代がほしいから」

この結果からは「悪徳経営者に鎖につながれたような状態で長時間労働させられる憐れな労働者」なるステレオタイプとはだいぶ異なる印象を受けますね。なぜ日本人は残業せざるを得ないのか。そして、どこをどう変えれば残業依存体質は変革できるのか。それは現在議論中の働き方改革とも密接につながったテーマでもあります。

キャリアを考える上で非常に重要なテーマなので、今回は深く掘り下げておきましょう。

 残業せざるを得ない日本人

なぜ日本人は残業せざるを得ないのか。それは単純に、基本給やボーナスが低く抑えられているためです。ではなぜ基本給やボーナスを低く抑えねばならないのか。それは、時給で払わないといけないからです。

販売員や飲食店の人は実際に働いた時間に応じて成果があがるので、時間に応じて時給で払って問題ありません。だからこういう案件は実際に払うべきです。

ヤマト、巨額の未払い残業代 7.6万人調べ支給へ

ところがホワイトカラーの場合は少々話が違います。ホワイトカラーの成果は机に座っていた時間に応じて上がるわけではなく、だいたい一人当たりの人件費予算はあらかじめ決まっています。にもかかわらず「とにかく働いた分だけ時給で払え」と強制すると、基本給や成果分が抑えられ残業手当にまわり、トータルで帳じりが合うように賃金が組まれることになります。

たとえば、職場で大きなハムの塊を分配する姿を想像してください。半分くらいを(みんなの基本給やボーナスとして)取り分けて、残りの半分を「一時間残業するごとにスライス一枚配ります」というルールで分けたらどうなるでしょうか。当たり前ですが、席に長く残っていた人がトクをし、早く帰った人が損をします。元を取るには、職場の平均残業時間を越えて残業するしかありません。ではみんなで頑張って遅くまで席に残ったら?別にハムの総量が増えるわけではないので、どんどん極薄スライスになるだけの話です。

時給で払うため、基本給等が低く抑えられている→残業で取り返すしかない→みんなそうするとますます基本給等が昇給しにくくなる→生産性度外視で、ますます残業に精を出す

というスパイラルは大なり小なりどこの職場でも見られるものです。はっきり言って人生の無駄ですね。また、これは日本人の労働生産性が低い原因でもあります。ハムの総量を増やす工夫ではなく、薄くスライスすることに血道を上げているのだから、当然ですね。

働き方改革を巡っては、経済同友会は「残業上限ではなく割増し手当を引き上げるべき」と提言していますが、もっと基本給などの部分を減らして時間外手当のウェイトを増やすだけなので、単に「減った分を取り返さなきゃ」と考えた労働者の残業が増えるだけの話でしょう。

では、残業を減らし、ついでに生産性も向上させるには何をどう変えるべきでしょうか。答えは実にシンプルで、ハムをスライスせずに「はい、これ、君の分」といってブロック単位で配分してしまえばいいんです。要は時間ではなく成果を評価基準にすることですね。

そうすれば、誰も残業なんてしようとは思いません。もっとハムの欲しい人は、頭を使ってハムの総量が増える工夫をするでしょう。それこそ、本来のホワイトカラーがすべきことです。「オレさあ、先月150時間も残業しちゃったよ」と自慢するのはホワイトカラーでもブルーカラーでもなく単なる“おつむスッカラカラー”です。

「でも、成果が挙げられなかったら賃下げになっちゃうじゃないか」って?そんなの当たり前でしょう。成果がないのに長く席に残ってただけでいっぱいお金貰える仕組みの方が異常なんです。

時給管理は外し、成果を評価基準にする。その上で、労働時間そのものは管理して長時間労働チェック体制は残す。そう、それはそのままホワイトカラーエグゼンプションで議論されていることですね。WEは一部の野党の言うような“過労死促進法案”ではなく、逆に「残業依存体質を根底から改めるための法案」というのが正しい見方です。


 これから最大の格差を生むもの

さて、これからの日本でもっとも重要な素養とはなんでしょうか。学歴でしょうか。教養でしょうか。もちろんそれらもある程度は重要ですが、筆者は全く別のものだと考えています。ちょっと長いですが、だいたいこんな感じのものになります。

「リスクや変化を恐れず、常に自身を成長させていける人」

これが出来る人とできない人の格差は、もうどうしようもないくらい拡大するだろうし、それは既に始まっているとみています。

これは“残業”についてもそうですね。上記のロジックをきちんと理解し、時間ではなく成果の質に軸足を置いて働けている人は、成長も昇給もするし、良好なワークライフバランスも実現できるでしょう。たとえ賃金横ばいだとしても、残業時間が半減したり有給休暇が欧米並みの9割つかえるようになるだけでもずいぶん充実した人生になると思いますね。

一方「成果で評価されるのはマイナス評価が怖いからイヤだ、これからも時給で払ってもらう方がいい」という人も、少なからずいると思います。そういう人はそれでいいです。ここから先は全部自己責任なので。

きっと共産党あたりが「痛みを伴う改革なんてしなくても、法律で厳しい残業上限を作り、企業の内部留保で賃上げさせれば、残業減と賃上げを両立できます」とかなんとか、都合のいい(けど実現可能性0%な)言い訳も考えてくれるでしょうから、そういうの読んでストレス発散しておいてください。

でも、その道の先に待っているのは、ますます極薄スライスになっていくハムを同僚たちと奪い合う日々だということ、そして、その結果をもたらしたのは自身の判断だということは覚えておいてくださいね。




以降、
残業代に依存しない組織とキャリアの作り方





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Q:「東芝ってこれからどうなるんでしょうか?」
→A:「ぜんぜんわかりません。中の人たちもわかってないみたいです」



Q:「個人情報を可能な限り晒しますので課長昇格可能かどうかスバリ判定してください」
→A:「たぶんまだ大丈夫。でもタイムリミットは……」








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連合は腹をくくって残業上限を月40時間くらいにすべし

政府の長時間残業規制プランを巡り、労使の綱引きが続いている。

【参考リンク】
月100時間残業「あり得ない」…連合会長
残業規制、脱時間給制の導入を前提に 経済同友会が意見書

というのは表向きで、実際には綱引きというより連合が非常に居心地の悪い状態に追い込まれているというのが正しい。簡単に論点整理をしておこう。


そもそも残業時間に上限なんて作る必要はない


勘違いしている人が多いが、法律で残業時間に上限なんて作る必要はない。というのも、そもそも時間外労働というのは、わざわざ労使が三六協定という協定を結んで長時間働けるよう取り決めして行われているものだから。だから、本当にイヤなら神津連合会長はただこう言えばいいだけの話。

「出来るだけ早期に協定を見直して月60時間以上の残業はやらないよう傘下労働組合に指示する。受け入れられないならストだ」

まあホントにそんなこと言ったら化学総連みたいに連合離脱する労組が続出でしょうけど(苦笑)
要するに、終身雇用を守るためには長時間残業は必要悪であり、だから労使は一緒に協定を結んでそれを受け入れてきたのだ。「極悪な経営者に長時間働かされている哀れな労働者」というのはこと連合についてはフィクションで、現実には「自分たち組合員の雇用を守るため、労使で協力してやりくりしているクレバーな正社員」というのが正しい。

【参考リンク】
残業、カッコ悪い、と偉い人が言い出した時に読む話

とはいえ、本音では残業は必要悪だと理解しつつも、国民の長時間残業に対するバッシングがあまりにも強いことにビビッて、「お、おう、残業月100時間なんぞ飲めんわい」と勢いで言っちゃって引っ込みがつかなくなっているというのが今の連合である。


労働時間=カネにこだわった結果、残業減=収入減となってしまう

ついでにお金の話も。当たり前だが、残業を大幅にカットするということは、残業代も大幅にカットされるということだ。さっそくその点を指摘する報道もチラホラ出てき始めている。

「働き方改革」で残業代減少、政府部内にも消費減退の懸念
過労死撲滅に向けた働き方改革は、日本経済に悪影響か


その責任は、時間ではなく成果に対して払うというホワイトカラーエグゼンプション(以下WE)のような改革に根こそぎ反対し、労働時間=お金という基準に固執し続けてきた連合にある。残業上限がどうなろうがとりあえず企業の残業抑制方針は当面継続するだろうから数年間は減収が続くのは間違いない。



連合に残された道

これから連合はどうするのか。
筆者の予想だと、もうちょっと引っ張ってから経団連会長とトップ会談して「言うべきことはしっかり伝えた」とか何とか言って繁忙期100時間OKという形でこっそり土俵を降りるような気がする。

でもこれだけ引っ張っといてホントに降りたら赤っ恥である。みんなで盛大に笑ってやろう。連合自身が「長時間残業は終身雇用の必要悪であり、わたしたちはこれからも経営と一心同体、残業に精を出してまいります」と宣言したようなものだから。

メディアもよくおぼえておいて、これから過労死が発生するたびに経営だけじゃなくて労組もきっちり吊し上げていただきたい。


一方、ただ流れに身を任せることも考えられる。厳しい世論に流される形で、たとえば「残業は月60時間を上限に」と、かなり厳しい規制を受け入れるケースだ。その場合は、残業手当減による実質賃下げと(持ち帰り等による)サービス残業化が蔓延することになるだろう。

まあどっちでもいいですよ。連合さんのお好きなようにやってください。

個人的には後者の方が面白いことになりそう気がする。
だって、賃金カットとサビ残だけが残るというオチには、さすがの連合も重たい腰を上げざるを得ないだろう。

必要なのは、時間ではなく成果で支払う賃金制度。成果をきっちり評価するための評価システム。もちろん、それらを実現するためには各人の業務範囲を明確化し、裁量もセットで与える必要がある。

そうしたテーマは、これまでWEの議論などで連合が避け続けてきたものだが、リアルで厳しい残業上限が設置されてしまえば、連合は正面から取り組まざるをえなくなる。付け加えるなら、成果をきっちり評価し、賃金に反映させる以上、それは柔軟に上下する流動性の高い処遇となる。組織内の序列が流動化すれば、必ず労働市場全体も一定程度は流動化するはずだ。

というわけで、筆者も厳しい残業上限の導入に賛成しておこう。

とか何とか考えていたところ、話の分かるリベラル駒崎氏が確信犯的に煽っておられる(笑)

全国の働くみなさん、残業100時間OKになりそうです
(意訳「ねーねーなんでれんごーは過労死認定基準以上の残業を認めるのなんでなんでー?」)


月80なんてみみっちいことは言わず、ここはひとつ、上限月40時間の例外無しなんてどうだろう?わくわくするような社会になるかもね!そんじゃーね。



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3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代


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城繁幸
コンサルタント及び執筆。 仕事紹介と日々の雑感。 個別の連絡は以下まで。
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