書評「日本一社員が辞めない会社」






帯にある「介護業界で定着率96%!」というコピーをみてまさかと思い手に取ったが、読み終わった今はなるほどなという納得感の残る良書。

世のオーナー企業の中には、トップから末端の一社員にいたるまで社員一丸となってパワフルに働いていたり、スピード感をもって同じベクトルで動いている企業がある。そして、そうなっている理由はたいてい「経営者にカリスマ性があるから」という一文で片付けられている。

本書はそうしたタイプの経営者自身が「そもそもカリスマとはなにか。どうやってそれを社内に生み出したのか」をわかりやすく解説したものだ。著者によれば、ある程度の有給休暇の取得や賃上げといった待遇改善は社員が辞めない会社づくりの第一歩だが、それだけではとても定着率を100%に近付けることは不可能だという。

では何が必要か。

・会社の理念を確立する

経営理念があって、それに沿った社員の行動指針が明確になっている会社の場合は、会社の目指す方向も物事の判断基準も明確なため、社員が自分で物事を判断できるようになる。「ルーチンワークだけをやらされている」状態から自分で自律的に仕事を生み出していく側に回るわけで、会社にとっても個人にとっても理想的な状態と言っていい。

本書には理念やそれに基づいた行動指針の作り方、ビジョンに落とし込んでいかに組織に浸透させるかといった細かなテクニックも豊富に紹介されている。

・トップや管理職が理念を体現する

むろん、トップやリーダーが口で言うだけでは効果はない。社員はトップやリーダーの「言っていること」より「やっている行動」を見習うものだからだ。トップは自身がそれを体現しつつ、管理職もそうした姿勢が維持できているかを常にマネジメントしなければならない。「管理職はまず自身の管理をしろ」というのはその通りだろう。

・社員のやる気を支援する

組織は往々にして優秀な上位2割、どうということのない6割、ぱっとしない下位2割に分かれるものだが(2:6:2の法則)ほおっておくと上位2割ほど離職する可能性が高い。彼らを飽きさせないよう常に新たなチャレンジやキャリアパスを与えつつ、それ以外の社員に気付きを与えることでやる気を喚起する必要がある。

そして、これら一連のシステムを動かす原動力として不可欠なものが一つある。

・社員との信頼関係を構築する

どんな社員でも、磨けば光ります。もし、まだ光っていない社員がいるとしたら、それは磨いていないか、磨き足りないか、磨き方が間違っているかのどれかでしょう。「人は誰もがダイヤの原石」と信じるということは、言い換えれば「社員の長所も欠点も受け入れる覚悟をする」ということです。

たとえば、外から自分の部署に電話をかけたら部下が出て、ひどいぶっきらぼうな電話の対応だったとします。そもそもこの部下がダイヤの原石で素晴らしい才能を持っていると信じていれば、単純に「そうか、できないのか。なら教えよう」と思えますが、部下の善悪を判断するつもりでいると「こいつ、ダメな奴だ。イライラするなあ」という反応になってしまいます。

人は自分の欠点を受け入れてくれた人の話を聴きます。正しいか、正しくないかではなく、「自分を信じてくれる味方」かどうかで心を開くのです。


人材の定着に苦労しているという経営者はもちろん、現場の管理職向けのマネジメント指南書としても、本書は高い実用性を発揮するに違いない。



高齢者の最低賃金引き下げは悪手か

なんだか国民民主党の玉木代表が左翼の皆さんにバッシングされているようなので何を言ったのかと思えば「人生100年時代、高齢者が最低賃金以下でも働けるようにします」と言ったのがリビドーに触れたみたいですね。

【参考リンク】国民民主・玉木代表「高齢者が同意すれば最賃以下で働ける特例必要」で物議

どうも左翼のお友達たちは高齢者の最賃を下げると「最賃以下で労働市場に殺到する高齢者のせいでコンビニとか他のバイトも置き換えられ、日本が総貧乏になる」と連想しちゃってるようです。でも普通はそんなことにはならないはずです。理由は最賃以下の仕事と時給1200円とか1500円の仕事はまったく別の仕事だからです。

たとえばいま東京都の最賃は985円ですけど、ある日突然、時給1200円でファミレスで働いてる人のところに店長が新人連れてやってきて「紹介しよう、最低賃金で採用した新人の山田くんだ。そしておまえは今日でクビだ」みたいなことになってましたっけ?全然なってないわけです。

東京都の最低賃金985円の仕事で働いてる人はどこかにいるのかもしれませんが、それぞれ別の仕事なんだから置き換わったりはしません。そしてそれぞれの時給は市場メカニズムで決まるわけです。

千歩譲ってそんなアグレッシブな店長がいたとしても、時給985円の山田くんはこう言うでしょう。
「ちょっと待て、だったら俺にも時給1200円払えよ。じゃなきゃ働かないぞ」

どうもリベラルの皆さんは「労働者は鎖につながれていかなる拒否権もない奴隷なのだ」って妄想してるらしいですけどそれって昔のソ連くらいしかありえませんから。お願いですから21世紀にもなってソ連基準で物事を判断するのはやめてください。

それでも「最低賃金は市場メカニズムに勝る」と考える人は、左翼のみなさん大好きな韓国の文政権が体を張って実証してみせてくれているので参考にしてくださいね。韓国の低賃金層はひどいことになっていますが、日本の左翼の皆さんが目を覚ますきっかけになれば彼らも本望でしょう。

【参考リンク】【社説】「所得主導成長」の誤り、文政権内に直言できる人はいないのか

一応フォローしておくと、ものすごい不況がきて若者と高齢者が仕事を直接奪い合うような状況なら、高齢者のせいで時給が下がることもあり得るかもしれません。上の例でいうと、時給1200円のパートが「じゃあ時給1100円に下げてもいいから働かせてください!ほかに仕事なんてないんです!」と食い下がらざるをえないような過酷な状況ですね。

でもだからといって「体力のない老人が普通より安い賃金で働くのは俺ら健康な労働者の足引っ張るかもしれんからダメだ!」っていうのはホントにリベラルなんですかね?筆者には単なる強者のエゴにしか見えませんけど。

年齢にかかわらずだれでも働きたい人は自分が納得した賃金で働けるようにして、その中で賃金の上がる人下がる人がいる社会と、年齢や能力を理由に特定の集団を排除して競争を抑える社会って、どっちが健全なんですかね。後者ってまんま全体主義に見えますjけど。


ちなみに高齢者の就労支援の一環として最賃を見直すという話は以前からいろいろな人が普通に議論していることです。突飛な話でもなんでもないです。

【参考リンク】最低賃金を撤廃すれば、「働きたい」高齢者の社会参加を可能にする


というわけで、結論から言うといつも通り「被害妄想をたくましくして最悪の事態を想像する」という下翼の本領発揮というわけです。下翼の未来予想リストに追加しておきますね!

・PKO法案成立で自衛隊はアジア侵略再開、第三次世界大戦へ
・輸入牛やオレンジで酪農やみかん農家壊滅
・郵政民営化で郵便ネットワーク崩壊、郵貯ぜんぶ米国に取られる
・三角合併解禁で日本企業は外資に買収され放題で日本人は奴隷に
・TPPで日本のカネも雇用も外資に取られ放題
・放射能で東京壊滅
・共謀罪で居酒屋で3人集まって政権批判しただけで逮捕
・高プロで過労死合法化       
・水道民営化で水道代10倍に     
・高齢者の最低賃金引き下げで労働市場に低賃金の高齢者殺到、日本全体が低賃金化  ←New!

書評「ダイレクト・リクルーティング」




「採用」をテーマとした本は少なくないが、たいてい大手の新卒一括採用が中心で、実は中小企業の採用活動では大して参考にならなかったりする。

たとえば大手だとほっておいても自動的にエントリーが集まって母集団が形成されるし、紹介会社や派遣会社に頼めばすぐに人材を紹介してもらえるが、無名の中小企業だとそもそも母集団なるものをどうやって作るかが最大の課題だったりする。

求人誌や紹介会社に頼んでもいつまでたってもノーレスポンスなんてことは珍しくない。

なぜ中小企業には人が来ないのか。中小は大手とどういう風に差別化して採用活動をするべきなのか。非常に泥臭いが実務的な処方箋をバランスよくまとめているのが本書だ。

現在、採用活動は大きな転換期を迎えている。

・紙媒体の存在感低下

特に地方の中小企業はタウン誌などの無料求人誌に依存しているケースが多いが、新聞同様、手にする人の数が減り続けており、費用対効果はどんどん悪くなっている。

・求人サイトの利便性向上による一極集中

リクナビもそうだが、各求人サイトの利便性が向上し、求職者は簡単に複数の求人を比較、検索できるようになったが、結果的に条件の良好な一部企業に人が集中し、普通の企業の求人はクリックすらされにくい状況となっている。

・人手不足深刻化で紹介会社も大口優先に

よく「紹介会社に頼んだのに半年たっても何の音沙汰もない」という中小の経営者がいるが、あまりに人手不足なため、紹介会社も大口で手数料の高い大手を優先して紹介する傾向がある。派遣会社も同様で、数人という案件よりは50人単位で仕事をくれる大手を優先する。

結果として、中小企業が一人採用するまでにかかる採用コストは近年急激に上昇中だ。

そこで本書が提案するのが、間に紹介会社や求人サイトを挟まず、企業と求職者の間で直接やりとりをする「ダイレクトリクルーティング」だ。

社員の知り合いや後輩を紹介してもらう方法などが有名だが、本書では世界最大規模の求人情報専用の検索エンジン「indeed」を使い、自社の求人情報をいかにして効果的に求職者のもとに届けるかを詳細に解説する。

たとえば「歯科医院勤務」と書くだけではクリック数は伸びない。「歯科受け付け(電話対応中心)」「歯科受け付け(窓口業務中心)」といった具合に、具体的な業務内容をイメージしやすいキーワードを使い、応募のハードルを下げることで、検索エンジン表示→実際のクリック数を倍増させることも可能だ。

本書にはそうしたまめなテクニックと実際の成功例が豊富に取り上げられている。

中小企業の経営者や採用担当で「どの媒体に求人出してもぜんぜん応募がこないです」という人は、一読する価値はあるはずだ。




銀行の残業の9割をなくしてバブル世代も憂鬱から解放して日本一学生の集まる企業にするにはどうすべき?と思ったときに読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。そういえば最近、内容的に非常に読みごたえがある人事に関する書評が続いたので、全部まとめて一本のコラムとして解説しておきましょう。賃金制度や採用、残業抑制などピンポイントで理解できても、なかなか全体でリンクさせてイメージするのは難しいでしょうから。

これからの働き方がどう変わっていくかを知ることは、個人のキャリアデザインにとってもとても有益なはずです。

【参考リンク】書評「残業の9割はいらない」
【参考リンク】書評「日本一学生が集まる中小企業の秘密」
【参考リンク】書評「バブル入社組の憂鬱」
【参考リンク】書評「銀行員はどう生きるか」


最優先でやるべきは「職務給への見直し」

まず最初に手を付けるべきは、年功賃金を全廃したうえで職務給に見直すことです。一人ひとり担当業務を明確化し、その内容に応じた賃金にするということになります。というか、他になにもやらなくてもこれだけで残業は10分の1くらいにはなります。

結果、「大した仕事してないクセに高給もらってることが明らかとなったベテラン」は実際の職務内容に見合った給与水準に賃下げします。まあ労組がゴネるなら3年とか移行期間置いてもいいですが。

そのうえで、本社の人間は四の五の言わずに全員高度プロフェッショナル制度対象とし、時給管理を完全に外します。これで少なくとも本社のホワイトカラーは残業しなくなります。なぜなら残業するインセンティブがゼロになるからです。

自分の業務範囲は明確化されており、早く終わらせたら後から仕事遅いやつの分が追加で降ってくるなんてことはもうありません。周囲に合わせて昼間はセーブするなんて必要は完全になくなります。残業代も出ないからちんたらやる理由もありません。みんな頭使って効率的に仕事して明るいうちに帰ることを目標とするでしょう。

でもきっと「高プロはイヤだ!」というオッサンもいるでしょう。仮に山田さんと名付けましょう。

山田「労働者は席に座っていた時間で支給されるべきだ。それに高プロは本人の意思で適用かどうか決められるはずだろう?」

確かにそうですね。じゃあとりあえず山田さんはさっさと店舗に配置転換して心行くまで時給で働いてもらいましょう。当然職務グレードが下がるでしょうから給料も3割くらいダウンですが、ホワイトカラーのくせに成果で勝負したがらないチキンなので当然ですね。

さて、ここで勘の良い人はある疑問を抱くはず。

「でも本社以外の支店は時給残ったままなんだから残業は減らないんじゃないの?」

ここでもやはり職務給による業務範囲の明確化が効いてきます。一人一人の仕事は明確に見える化されているため、誰がテキパキ仕事をし、誰がちんたら生活残業しているかは一目瞭然なわけです。

担当業務を定時前に終わらせて別の仕事を深堀りしている人にはポンっと高額ボーナスを、きっちり定時で終わらせて退社している人には普通のボーナスを払い、山田くんが減った給料を残業代で取り返そうと毎月50時間くらいちんたら残業してたら査定でボーナス3分の1くらいにカットしてあげればOKです。

よく「外国では残業する奴はバカと思われる」という人がいますけど、それって文化の問題じゃなくて賃金制度の差の問題ですから。業務範囲の見える化さえきっちりやれば早晩日本でも「あいつまた残業してるwwwうわだっせぇwww」ってことになりますから。

さて、業務範囲の見える化のメリットはまだあります。長時間残業の必要がなくなるので、体力のある男性中心で職場を固める必要がなくなります。また、勤続年数ではなく担当する職務内容で処遇が決まるため、キャリア途中で休職する可能性のある女性を排除する理由もなくなります。

「家庭の事情で退職します」
「はい、どうぞ。戻れるようになったらいつでも声かけてね」
(2年後)
「家庭が落ち着いたので復帰したいんですが」
「いいね!とりあえず君のスキルが活きるであろう空きのポジションはこれこれで、来年以降の担当業務は様子を見て決定しよう」

くらいのノリです。「会社を腰かけ代わりに利用されても困るんだよ。キャリアに集中するか、後進に道を開けてくれ」と妊娠したら上司に肩たたきされるなんてことはなくなります。

外資なんかだと経営幹部の半数が女性、なんて企業も珍しくありませんが、同様に銀行も優秀な女性を大々的に戦力として活用できる道が開けるわけですね。

【参考リンク】「休職後、マネージャーに昇進しました」女性役員47%、P&Gの働きかた





以降、
インターンは各事業部主導で
たぶん、それはこれから普通のスタイルになる








※詳細はメルマガにて(夜間飛行)







Q:「ニッチな業種で市場価値を意識したキャリアデザインを行うには?」
→A:「異業種に目を向けるかマネジメントの幅を広げましょう」



Q:「ベンチャーの役員経験者の市場価値は?」
→A:「評価してくれる企業とそうじゃない企業がありますね」







お盆特別ショートショート「噂の女」







Q&Aも受付中、登録は以下から。
・夜間飛行(金曜配信予定)





書評「銀行員はどう生きるか」






最近のメガバンクの動きを見て以下のような疑問を抱いている人は、筆者を含めて多いのではないか。

・なぜ、昨年後半に唐突に3メガ足並みをそろえて人員削減を決定したのか
・それを受けて若手が流出しはじめたのはなぜか
・メガバンクはどこに向かうのか

上記の疑問をクリアに解説してくれるのが本書だ。

フィンテック企業による本業の侵食、日銀の超低金利政策等で国内事業がジリ貧に陥っていたメガバンクだが、その分、国際業務に注力することでなんとか全体の落ち込みはカバーできていた。リーマンショック後に金融規制が強化されたことで米国の金融機関は手足が縛られ、相対的に自由な邦銀にビジネスチャンスが舞い込んでいたためだ。

だがトランプ政権がオバマ政権の規制を次々に撤廃したことでボーナスタイムは終了。メガバンクは生き残りをかけてコスト削減とビジネスモデル刷新に取り組まねばならない状態に追い込まれた。これが3メガグループの足並みがそろった理由である。

とはいえ、各メガ共に自然減による人員調整には言及していても、文字通りにリストラはやらないと明言している。なぜ若手~中堅の流出は始まったのか。鍵は銀行業界でかねてから行われていたセカンドキャリア制度にある。50歳あたりで総合職の行員を子会社、取引先に片道切符で転籍させる新陳代謝システムだ。

だが、子会社といっても無限に銀行出身の50代を受け入れられる余裕はない。実際にバブル世代を受け入れる余裕は既になくなり目詰まりを起こしているという。また、取引先と銀行との力関係の変化も大きく影響している。現在、優良企業の多くは銀行融資を必要としておらず、銀行OBを受け入れたがる企業は少ない。逆に銀行OBを受け入れてでも太いパイプを維持したいという企業は崖っぷち企業ばかりで、そんな会社に押し付けられた側はたまったものではない。

おそらくセカンドキャリア制度は近い将来形骸化し、その後は製造業のような早期退職や追い出し部屋が運用されはじめるのではないか。仮に転籍させてもらえたとしてもロクな会社ではなくて大きく処遇は悪化するのではないか……これが、自力で転職できる人材から流動化を始めた理由だ。

では、今後のメガバンクはどこに向かうのか。モデルはリーマンショック後に大きくリテール事業を見直した米国の銀行にあるという。日本の銀行支店は基幹店で40~50人、小型店でも十数名の人員が在籍し、支店長といえば総合職のゴールともいわれる一国一城の主だが、米国では多くても3~4名、小型店舗なら1~2名という店舗が現在は主流だという。

事務作業の多くはデジタル化され、店舗の行員の仕事は、端末操作のアドバイスや個別の相談窓口とのセッティングなど、一日中立って行う仕事が中心であり、どちらかというと金融業というより小売業に近い。給与水準も5万ドル前後が相場だ。三井住友銀行の新型店舗は明らかにその方向性を意識したものだという。他行もそれに続くのではないか。

では、メガバンクの構造改革は成功するのか。著者は明言していないものの、行間からは悲観的なオーラが感じられる。

第三章で詳述したように、欧米の銀行は邦銀の先を走っている。彼らが低コストチャネルへの誘導を図ったのは、単なる低コスト化だけが目的ではない。欧米の銀行はデジタル技術の導入によって顧客の利便性を劇的に高め、信頼回復に努めたからであって、機械化したから信頼を回復できたという話ではない。

そのようなインフラ整備を重ねてモデルチェンジを果たすとともに、店舗の銀行員はカウンターの反対側から顧客に応対するのではなく、カウンターを取っ払って顧客ロビーで立ち続け、来店した顧客に寄り添うように応対するようになったからである。

(中略)

結論をいえば、結局、対面ビジネスの銀行業は、対面ビジネスの高さによって同業者はもとより、非対面のフィンテック・プレーヤーにも打ち勝つしかない。デジタル化の技術を活用してコスト削減をしつつ、最大の武器である顔が見える営業で質の高いサービスを提供してこその銀行なのだ。



その点から見て邦銀は何をしてきたかというと、超低金利による収益悪化という逆風の中、営業現場に過大な目標を課して顧客軽視のセールスに舵を切ってきた。系列アセットマネジメントが開発した商品を高い手数料で販売し、空室リスクを度外視してでもアパートローンを売り込んだ。

そういう状況が改善されたと言えない中、コスト削減だけを最優先して現場の人員削減に突入するのは、顧客とのリレーションシップという銀行最大の武器を持たないまま、丸腰でフィンテック・プレイヤーと同じ土俵に上がるようなものではないか、というのが本書の結論だ。

筆者自身もメガバンク各行はいずれ文字通りにリストラを含む抜本的な業務体制の見直しに追い込まれると予想している。

ただし、著者も予想するように、将来的にはメガバンクの人事制度は地に足の着いたずっと風通しの良いものにあるはずだ。地域に根差したリレーションシップ重視のために「3年ごとの転勤」は廃止され、業務内容も勤続年数も小売業に近いものになるだろう。

横並びの処遇は見直され、自身で目標を立てて成長できる人材と出来ない人材の格差は大きく開くことになる。半沢直樹的なドロドロした世界より、よほど居心地のよい組織だと感じるのは筆者だけだろうか。


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「10年後失業」に備えるためにいま読んでおきたい話


若者を殺すのは誰か?


7割は課長にさえなれません


世代間格差ってなんだ


たった1%の賃下げが99%を幸せにする


3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代


若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来
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城繁幸
コンサルタント及び執筆。 仕事紹介と日々の雑感。 個別の連絡は以下まで。
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