与野党が派遣法改正案の中から「製造業派遣と登録型派遣の原則禁止」の一文削除で合意
したとのこと。まったくもって正しい選択なので全然異論ないけれども、足かけ3年に及ぶ
壮大なパフォーマンスがようやく終わったという点で感慨深いものがある。

08年のリーマンショック後の派遣切りで、当時野党の民主、社民、共産といった政党は、
待ってましたとばかりに小泉時代の規制緩和をやり玉に挙げ、雇用問題を政治の争点として
大々的に利用した。
具体的に言うと「派遣法の改正による再規制」「最低時給千円への引き上げ」といった噴飯もの
の内容で、まあリテラシーのある人ならこれが実現不可能な空手形だということくらい理解していた
と思われる。

もっとも、当の政治家の皆さんも、恐らくは理解していたはずだ。
某党の勉強会で話した際に(所属政党の主張する)派遣規制や最低時給引き上げについてどう思うか
聞いてみたら
「そんなもの実現できるわけがないでしょう」
と即座に言われて面食らったおぼえがある。他の議員もはっきり無理とは言わないけれど、
まあまあそこは察してください、あなたも元勤め人でしょうくらいのスタンスだった。
彼ら自身、それが選挙向けのパフォーマンスに過ぎないことくらい、十分に理解していたわけだ。

仮に民主が単独過半数の安定政権だったとしても、派遣法改正法案はあちこちに抜け穴が作られて
骨抜きになっていたはずだ。空理空論を法案化する時によくある話である。

フォローしておくと、だから現与党はダメだ、というつもりはない。
野党に降りた瞬間TPP反対とか言ってる自民がいい例で、少なくとも日本の政治家とはそういうものだから。
なにより、当の派遣労働者で、真剣に上記のような政策を支持した人がいるとはあまり思えない。
いわば被害者のいない嘘なんだから、誰からも責められる理由なんてないだろう。

では、彼らは誰に対してパフォーマンスをしていたのだろうか。
恐らくは、お茶の間のテレビや新聞のヘッドラインだけをさらりと見て、空気を判断する大多数の
無党派層だろう。彼らを選挙の間だけでも味方につけるためには、とりあえず頑張ってます感を
一生懸命出してアピールしなければならない。

とすれば、過去の自分達の政策と整合性が取れてないとか、政権取った後どうするのかとか、
まして問題をどう解決するのかといった論点はぶっちゃけどうでもよくて、その場その場で
大衆受けする空気に沿ってパフォーマンスすることに意義がある。

そういう視点にたってみれば、ここ数年の政治的混乱というのは、実は一本筋が通っているように思う。
「視聴者なんてバカばっかりなんだから」と言いつつ低レベルなコンテンツで固めるテレビ局と
同じ構図が政治にも垣間見える。

派遣切りという政権交代を後押しした大騒動が
「3年経って一周回って元のスタート地点に帰ってきただけ」という現実から、一人でも多くの人に
現実を直視してもらいたい。大衆の底上げ無しに、政治家もテレビもレベル向上は難しいのだ。



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