霞が関脱藩官僚の一人であり、現政権や大阪市のブレーンも務める著者が、役所の最大の武器である“規制”について解説する。

多くの場合、規制は既に事業を行っている集団を新規参入から保護するために作られ、その既得権集団からのロビー活動を政治や官が受ける形で定着する。タクシ―の新規参入規制や農業漁業の株式会社参入規制、ネットにおける医薬品販売規制がその代表だ。

時には政治を介さず、官が直接業界と癒着するケースすらある。自治体が保育所の運営を特定の社会福祉法人のみに認可し、株式会社の参入は排除→自治体OBが社会福祉法人本部に多数天下り、というケースはその典型だろう。

病院や学校、保育所といった規制でがんじがらめの領域を規制緩和しようと言うと、きまって出てくる「利益本位で質が低下してしまう」という反論に対しても著者は明快に否定する。

株式会社の運営する高級ホテルは「利益本位で顧客サービスがおろそか」になっているだろうか。むしろ、利益を得ようとすることこそサービス向上の源泉になるのだ。

民営化以前のかんぽの宿とか、昔の高速のサービスエリアとか旧国鉄の駅員とか「あっちの方が利益本位じゃないからサービスが良かった」と言える人はまずいないだろう。

もちろん、規制脳なら我らが厚労省も負けてはいない。
2012年、「日雇いの派遣さんはかわいそうだから規制してしまえ♪」とばかりに、民主&厚労省は「30日以内の派遣」を禁止。ただし、規制したいのはあくまで“かわいそうな派遣さん”だけなので「年収もしくは世帯年収500万円以上の人が副業としてするのはOK」という規定もつけた。余裕のある人が趣味で短期の派遣として働く分には構わないというロジックだ。

結果、何が起こったか。たとえば2012年末の総選挙において、自治体は開票作業用のスタッフとして、そういう規定を満たすような人を(当然そうした条件を満たす人は少ない&自治体同士で奪い合いになるから)割高なコストで派遣会社にオーダーせざるをえなかったという。

乳飲み子を抱えて困窮するシングルマザーとか年収300万未満の労働者を排除しつつ、夫の年収500万以上の専業主婦や年収500万以上の本業を持つ人を割高な賃金で雇ったわけだ。

「地獄への道は善意で~」を地で行く厚労省のおバカっぷりである。

さて、著者はこうした規制を“おバカ規制”と呼び、「ビジネスや労働の現場を知らない連中がよかれと思って規制を作るからこうなる」と述べているが、筆者自身は少し違う見方をしていて、そもそも彼らはその規制で生じる結果そのものに関心がないのだと考えている。

国交省や農水省が規制強化するときに、排除される株式会社や割高なコストを負担させられる消費者のことを考えているだろうか。同様に厚労省も、路頭に迷うシングルマザーや職を追われる派遣労働者のことなぞまったく関心がないというのが実情だろう。彼らにとって重要なのは、今現在、既得権を持っているグループをいかにして守るか、そしてその中で天下り先などの利権をいかに確保するかといった点でしかないはずだ。地獄への道は確信犯的に舗装されているというのが筆者の意見である。


『岩盤規制』という言葉は聞いたことあるけれども、具体的にどんなものなのか知っているという人は意外と少ないのではないか。だから「岩盤規制を緩和すれば経済成長できますよ」と言われても、いまいちハートに響かないという人も多いはず。

本書はそういった人向けに、いかに我々の生活が官僚の手による規制によってがんじがらめにされているか、そして、その中で誰がトクをしているかを分かりやすくまとめたものだ。たぶん、これ一冊読むだけで、アベノミクスの第三の矢(規制緩和による成長戦略)がなぜ内外から最重要視されているかがよくわかるだろう。



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