今週のメルマガの前半部の紹介です。先日、筆者も昔連載していた古巣の東洋経済で「新入社員に優しい「ホワイト企業」トップ500 『新卒3年定着率』を徹底解明」という特集が掲載されていて、割と反響もあったみたいです。「3年後もみんな安心して働き続けられる会社に入りたい」「そうした優良企業に息子や娘を入れてやりたい」と考えている人が多いのでしょう。

でも、正直言うと「うわあ、なんというか20年遅れの特集だなあ」というのが筆者の感想です。3年後もみんなで仲良く働き続けられる会社のいったいどこが時代遅れなのか。いい機会なのでまとめておきましょう。


そもそもすべての企業が長期雇用を目指しているわけではない

ところで、勤続年数ってどうやれば引き上げられるんでしょうか。「従業員は家族です」と社長が言って飲み会や運動会や社員旅行なんかをばんばんやればいいんでしょうか。もちろんそういうのも効果はありますが、もっとも効果的かつお手軽なのは、初任給をうんと低くしておいて、給料を毎年チビチビ上げていくことです。いわゆる年功序列型賃金制度ですね。

すると、従業員には「今よりも10年後、10年後よりも20年後はもっと給料が上がっているぞ!」という期待感が生まれ、腰がずんと重くなるものです。冷静に考えれば若いころにもらうべき報酬を中高年になってから払ってもらうようなものなのでお得でも何でもない話なんですが、とにかく早く辞めるより長くいた方が多くもらえることは間違いないので、定着率は確実に上がることになります。

そもそも、企業にとって勤続年数を引き上げるメリットとはなんでしょうか。それは時間をかけてじっくり人材育成し、高い技術やノウハウを持つ職人タイプを育成できることです。そして、そうしたメリットをとても重視してきたのは製造業です。

逆に、小売りや外食といったサービス業は“職人さん”は別にいてもいいけどわざわざ育てる必要はないので、必然的に賃金はフラットな傾向があります。つまり「10年後20年後目指して頑張るぞ!」というムードが従業員の間で薄いのです。

結果、たとえば新卒の3年内離職率でいうと4割や5割を超える企業もサービス業では珍しくないですが、それは良し悪しではなくもうそういうものだと考えてください。小売りの人事部長などで「最近は少しでも新人の離職率が高いとブラックだなんだと言われるけど、製造業と比較されたらかなわんよ」と言っている人がよくいますけど、筆者も同感ですね。

自分の人生を一社に捧げ尽くしたいという人は大手製造業に就職し、もう少し幅のあるキャリアをいろいろ経験したいという人はサービス業に就職する、くらいのスタンスでいいだろうというのが筆者の意見です。「この会社は新人の定着率が低いからブラックに違いない!」という安直な発想は、かえってキャリアの選択肢を狭める結果になるでしょう。


イケてる企業の人事マンは「定着率が高すぎること」の方が問題だと考えている

さて、恐らく賢明な読者の中には、素朴な疑問を抱いた方もおられるはず。
「うち製造業だけど、20年かけて育てないと勤まらない職人なんて見たことないよ」

実際その通りで、実は当の製造業でさえ、いまどき長期雇用のメリットなんて感じておらず、むしろ重荷と考えている企業の方が多数派です。以前述べたように「職人を育てるための年功賃金なのに早期退職でオッサン狙い撃ちで募集する時点で完全にシステムとしては終わっている」わけです。

ここ3年ほどの間に、ソニー、パナソニック、そして日立という錚々たる大手メーカーが相次いで「年功給の廃止」を表明しました。年功ではなく、リアルタイムで果たせる役割に応じて賃金が支払われる仕組みへの移行で、人によっては20代で50代の賃金を上回ることも可能となります。※

もちろん彼らはけして終身雇用そのものは否定しませんが、将来的な賃上げ期待が薄まることで、確実に若手~中堅の定着率は下がることになります。確かに新人研修した後に辞められるとコストがもったいないとか、離職率が上がった分を中途で採用するのはめんどくさいといった問題はありますが、それらを考慮してもなお、脱・長期雇用には譲れない大きなメリットがあると彼らは考えているわけです。

モノ作りの製造業でさえこんな調子ですから、IT企業なんかだとはっきり明言してますね。
【参考】人事の課題は「離職率の低さ」

フォローしておきますが、これからも職人肌の人材をじっくり育てにゃならんという会社は、今まで通りの年功給でいいです。そういう会社に生涯かけて奉公したいという人も、“定着率”にこだわって会社選びをすればいいと思います。

でも、単純に「この会社はホワイトか?ブラックか?」といった善悪二元論的な判断をくだす上での指標としては、もうほとんど意味がないだろうなというのが筆者の意見ですね。




※日立は管理職限定



以降、
もっとも不健全な組織とは、人が辞めない組織である
これからどういう基準で会社を選ぶべきか




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Q:「新人を追い込む研修ってどう思います?」
→A:「精神的に追い込むか体力的に追い込むか能力的に追い込むかの違いだけでしょう」







雇用ニュースの深層

今年の新人は「ドローン型新人」

今年はズバリ筆者の予想が的中しましたが、当てるには簡単なコツがあります。ちなみに来年度は……



だいぶしおらしくなったフランス社会党

最高所得税率75%にしたせいでドパルデューには逃げられてしまいましたが、おかげで彼らフランス社会党も「規制で経済活動は縛れない」という教訓を学んだようです。



他。





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