週刊文春11月9日発売の16日号に書評を書いたので、ブログでも簡単に概要だけ紹介しておこう。

マニラ在住のノンフィクション作家水谷氏による取材期間5年に及ぶ労作だ。
(なお筆者のコメントも一言だけ採用されている)

「バンコクの日本人向けコールセンター」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。そこでしか働けない可哀想な人たち、と思う人も少なくないだろう。実際、就職氷河期世代でずっと非正規雇用しか経験してない40代など、挫折を経験した人が多いのも事実だが、実は彼らはみな自分の意思でタイに移り住んでいる。この人手不足、贅沢言わなきゃいくらでも仕事はあるにもかかわらず、だ。

筆者は、これは結構すごいことだと思う。普通逆でしょ。いろいろ事情があって困った人やマイノリティって先進国を目指すでしょ。ドイツ人やフランス人が仕事いっぱいあるのに「なんか生きづらいから」とかいって新興国には行かないでしょ。

「そんな社会保障の未成熟な国に行って、老後はどうするんだ」という人もいるかもしれないが、じゃ日本でずっと非正規雇用やってる人は老後安泰なんですかね。ていうか、正規雇用であっても本当に65歳から現役時収入の5割分の年金受け取れるんですかね。筆者はめちゃくちゃ危ないと思うけど(苦笑)

たとえば、地方で時給900円くらいで3Kの仕事を非正規でやりつつ、近所から「あの人いい年なのにずっとパートらしいわよ。ていうかいつ結婚するのかしら」とかごちょごちょ言われるくらいなら、若く成長エネルギーに満ちたタイで、残業とか転勤無しで短パンはいて仕事してた方がよっぽど精神衛生上は健全じゃなかろうか。実際、本書にはネガティブなケースだけではなく、タイに移って10歳以上年下の彼女が出来た人や、起業してそこそこ成功した人たちも登場する。

バンコクの日本人社会やナイトカルチャーのことも分かるけれども、同時に彼らの言葉を通じて日本社会の矛盾もよく理解できる一冊。ぜひおススメしたい。


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