バブル入社組の憂鬱 (日経プレミアシリーズ)
相原 孝夫
日本経済新聞出版社
2017-12-09



本書は衝撃的な一文からスタートする。

バブル入社組はいま、会社内での評判がすこぶる悪い。


まあ知ってはいましたけど。ちなみに著者自身もバブル世代。
理由は、年功序列制度が機能不全を起こす中、ちゅうぶらりんな状態で取り残されているためだ。


40代後半から50代社員に対する会社の評価はすでにほぼ確定していると言ってよく、一部の層を除けば、キャリアは頭打ちになっている。さらに従来の年功序列型の賃金制度の運用により、周囲からは貢献度に比べて給与水準が高すぎるとみられていることも多い。

頑張っても、これ以上職位や給与面で報われることは少ない一方で、多くの日本企業では後の章で述べる「役職定年」などを除けば、降格や降給はめったになく、少しくらい頑張らなかったからといって給与が引き下げられることはない。

そのため、人事処遇面においてポジティブな方向へ動機づけることも、または危機感を抱かせることも難しく、弛緩した状態が続いてしまうことになる。
(中略)
最低限の仕事だけをしながら、手堅くキャリアの終わりを待とうとする、退職前から「セミリタイヤ化」する50代スタッフ管理職は意外と多い。下の世代から「使えない」とか「お荷物」と言われるゆえんである。



とりわけ就職で苦労してきた氷河期世代とは相性が悪いらしい。筆者自身はむしろ気のいいオッチャンが多い印象があるが、確かにバブル世代部長、氷河期世代課長の組み合わせはあまりいい評判は聞かない。ちなみに2012年調査によると40代で係長以上の役職に就けているのは5割程度なので、課長以上の管理職は実質3~4割というところだろう。バブル世代の過半数がヒラのまま放置されているわけだ。

同年次で大きな処遇差は設けず、出世への期待感をあおり続けることで40代まで全員をモーレツ社員として働かせてきた日本型雇用は、完全に機能不全に陥っている状況と言っていいだろう。

「バブル世代は恵まれている」と思っている人も多いかもしれないが、本書ではその受難の歴史がつづられる。

・入社後しばらく新人が入ってこなかったため、30過ぎまで最年少として雑用全般をこなし、後輩のマネジメント経験も未熟
・採用数が多いというだけの理由でポストにつけず、前後の世代から無能扱いされる
・苦労して役職についても、役職定年が徐々に低年齢化しており、元・管理職として飼い殺される
・にもかかわらず年金支給開始年齢が上がって65歳まで働かないといけない
・なまじ終身雇用がワークしているときにゼネラリスト育成されてしまったため転職するスキルもない

最後に、著者はバブル世代の特徴を4つ挙げ、その長短を理解し、強みに変えろとアドバイスする。

・コミュニケーション能力が高い
・「根拠なき自信」がある
・会社への依存心が強い
・見栄っ張り

特に、コミュニケーション能力や自己肯定感といった特徴は、相対的に下の世代が苦手とするものだ。肩書、権力、給料へのこだわりを捨て、自らの強みを生かすことができれば、実は不確実性の増す変化の時代においてバブル世代は十分対応できるだけの地力を持っているとする。

さて、ここからは私見。

本書で強く印象に残ったのは、年功序列が形骸化する中、日本企業の職場がもう無茶苦茶なカオス状態に陥っているということだ。たとえば90年代以前のように55歳定年だったらそこまで全力投球できる人事制度がワークしたろう。57歳で役職定年になっても定年60歳なら3年くらいは職場のご意見番として残っていてもさして問題にはならなかった。

でもね、52歳とかで役職定年くらって65歳まで職場に在籍って、それ本人にとっても年下の元・部下にとっても単なる嫌がらせでしょ(苦笑)

本書には、張り切って存在感を示そうと年下の同僚(ていうか元部下)の提案を全力で否定しにかかる元管理職と、抜け殻にようになってしまってあらゆる職責を放棄した元管理職が登場するが、どちらも現場の士気を大きく下げるだけの存在だ。

年功序列型組織の中で、いかに中高年のモチベーションをワークさせるか、筆者の知る限りいまだ明確な処方箋を提示できている日本企業はない。ないけれども、人生の後半戦、そして老後を豊かなものとするためにも、個人でそれを乗り越えていくしかない。

そういう意味では、本書も言うように、バブル世代は「組織の平均年齢が45歳を超える中、中高年社員がいかにして組織をけん引していくか」を身をもって実演して見せる第一世代だということになる。すぐ下の団塊ジュニア世代はもちろん、その下のゆとり世代以降にとっても、本書の提示する現状と処方箋は示唆に富む内容だろう。







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