今週のメルマガ前半部の紹介です。中国武漢発の新型肺炎のウイルス感染者が日本各地で次々と報告される中、日本企業が相次いでリモートワーク導入にかじを切っています。

【参考リンク】GMO、新型肺炎で国内4000人を在宅勤務に
【参考リンク】ドワンゴ、新型肺炎で1000人を在宅勤務に

以前からこうした状況を予測して入念に準備を進めてきたGMOはさすがという感じですね。全社員に即日在宅勤務を指示するドワンゴも素晴らしいフットワークだと思います。

でも筆者が個人的に一番驚いたのはNTTですね。

【参考リンク】新型コロナ対策でNTTが約20万人の従業員に“テレワーク”推奨


“親方日の丸”の本家本元、従業員数20万人の巨象NTTが全従業員にテレワーク推奨ですから。これで追随する企業がかなり増えた印象がありますね。

とはいえ、ほとんどの企業は「あくまでも推奨」という形で実際の運用は現場の事業部レベルに任せているのが実態です。実際に「会社から推奨されて完全無視というわけにもいかないため手探りで運用を模索中」といった話をちらほら聞きますね。

というわけで、今回は現場レベルでテレワークとどう向き合うかを取り上げたいと思います。中間管理職の方にはもちろん、チームレベルでどうコロナ危機を乗り越えるかに関心のあるすべてのビジネスパーソンにとって示唆に富む内容となるはずです。


日本企業にとって“鬼門”だったテレワーク


テレワークそのものはもう30年以上前から存在する言葉ですが、これまで日本ではまったくといっていいほど浸透しませんでしたね。日本企業においてはみんなが同じ時間に同じ場所にそろって仕事を開始するというのが大前提だったためです。フレックス勤務や裁量労働がいまいち評判がよくないのと同じ事情ですね。

「日本人の横並びを愛する国民性のためだ」みたいなことを言う人もいますが、むろんそんなことはありません。ちゃんとした理由があります。それは人事制度がそうなっているためです。

意外と知らない人が多いんですが、日本以外の国では、入社に際して職務記述書という契約書を会社と交わして「〇〇の仕事を担当し、それに対して報酬はいくらもらう」ことを明記します。

これだと最初から業務内容も報酬も明確で、成果評価もクリアになりやすいというメリットがあります。そして、各々の担当業務がはっきりしているから柔軟な働き方も可能です。毎日午後から出社しても「自分の担当業務できっちり成果出してますんで」とバーンと言えちゃうからですね。

一方、われらが日本国の場合「入社時に具体的な業務内容は決めず、会社に与えられる仕事は何でも全力で取り組む。給料は一律からスタートして勤続年数に応じて緩やかに上昇」という独特の風習が一般的です。というかもうこの時点でマトモな外国人は絶対入社しないですが(苦笑)

担当業務がよくわからず成果もわかりにくいため、評価するには実際の働きぶりを目で見て評価するしかないんですね。だから「同じ時間に出社させ同じ職場で働くこと」が大前提なんです。

テレワークが浸透しなかったのもフレックスや裁量労働が馴染まないのもこういう構造的な事情が根っこにあったわけです。


この構造問題こそ働き方改革の本丸である理由


この構造的問題、他にもいろいろなテーマに絡んでくる重要な話なので今回は少し具体的に掘り下げておきましょう。

わかりやすくするため、百科事典をこれから編集するプロジェクトがあったとします。世界標準の職務給方式に従えば、メンバーはあらかじめこんな風に担当を割り振られることになります。

「Aさんは“あ行”、Bさんは“か行”を担当してください。Cさんは“さ行”ですがちょっと業務量が多いのでその分賃金は割増しますね」

といってマネージャーがそれぞれの担当するワードの書かれたカードを配って作業開始。
担当範囲が明確に割り振られているので、出社時間は自由だし在宅勤務もOKです。

一方、日本が世界に誇る終身雇用方式だとどうなるか。管理職がすべてのカードを大部屋の真ん中にどばっと広げてこう言うわけです。

「さあさあみんな仕事仕事!しっかりやってね!」

日本式のマネジメントなるものは、その中で各人の働きぶりを見て行われることになります。リモートワークなんて論外ですね。

くわえて、以下のような諸問題も発生します。

「早く仕事終えて帰ろうとすると管理職が追加で仕事振ってくる問題」

Aさんがデートのためにいつもの2倍集中して作業し、普段の量の仕事を定時で終わらせて退社しようとすると、管理職はこんな言葉をかけてきました。

「あ、きみ暇なんだ。じゃあ遅れてるCさんの作業手伝ってよ」

こうして早く仕事をすればするほどどんどん仕事量自体は増加することになります。査定で評価されることはあるかもですが基本お給料は変わりません。

結果、なんとなく退社が許される20時頃までゆっくり仕事する人が増えるので生産性は下がります。

「有給使うと白い目で見られる問題」

Bさんは連休に有給休暇を2日ほどつけて趣味の海外旅行に行きました。ところが帰ってきてからというもの、なんだか同僚の態度がよそよそしいことに気づきます。

「みんな連休明けで遅れを取り戻そうと頑張ってるのに、なんであいつ一人だけ遊びに行ってるんだよ」
「そういえば去年もあいつだけ有給使ってたな」

職場には「病気や身内の不幸なら有給とってもOK」という“空気”があります。そのうちBさんも空気を読んで、趣味での有給使用は控えるようになりました。


よく日本の有給取得率が低いのはまじめな国民性のせいだ、みたいなことをおっしゃる人がいますが、そんなことないですね。担当範囲を明確に割り振らぬままみんなで一緒に働くスタイルなら、どの国の出身者だって足の引っ張り合いを始めるはずです。これも構造的な問題なんですね。

【参考リンク】日本が最下位?有給所得率の最新国別ランキング

「育休や短時間勤務を利用すると陰口叩かれる問題」

Cさんが出産し、育休を取得したのちに短時間勤務制度を利用し始めました。ところが、復職後にCさんは同僚たちの間でいろいろと嫌味を言われていることを人づてに耳にします。特に同性ほどひどい批判を口にしているとのこと。

「あいつは自分だけ制度にただのりしている」
「組織に対して義務を果たしていないくせに」

2人目を妊娠した時、Cさんはいたたまれずに会社を退職することを選択しました。


これも有給の件と同じですね。みんなで仕事する職場でこうした制度を利用すると、それは他者からはフリーライドに見えてしまうわけです。

よく、わかってない識者が少子化対策として「育休の期間や給付金を拡充しよう!エイエイオー!」みたいなことを言ってますが、上記の構造問題にまったく関係ないどうでもいい政策だというのは明らかですね。現状だといくら金ばらまいたって大手のごくごく一部の高学歴キャリアウーマンが潤うだけの話でしょう。

まとめると、日本の働き方をめぐる諸問題の根っこには、業務を明確に割り振らず無制限に引き受けさせるという構造上の問題があるわけです。

メリットですか?一つだけ思いつくのは、会社が指図しなくても従業員が「あいつは休んでけしからん」みたいな自警団を勝手に結成して風紀(?)を引き締めてくれることですかね。

有給与えても使おうとしない、命じなくても居残って残業するカルチャーは、経営側からすればメリットに思えたかもしれませんね。もっとも、そんな重箱の隅をつついていれば利益の上がった時代なんて高度成長期からせいぜい80年代後半までだと思いますけど。

現在では職場環境を悪化させてむしろ生産性を下げる効果くらいしかないように見えます。

ちなみに筆者はそうした働き方のことを“文化祭方式”と呼んでいます。特に担当を割り振るでもなく、みんな教室で一緒に作業する。手を抜いていると思われると仲間内で悪評がたつので「ぶっちゃけいらないような仕事」もどんどん手を出し頑張ってるふりをする。

そうやって最後は「もう遅いから、今日はおしまい!」と先生に言われてようやくお開き……というアレですね。

まあ10代の頃は仲間同士和気あいあいとやるのも楽しいもんですが、会社でいい年こいたオッサン中心でやってもストレスフルなだけなのでオススメはしませんね。





以降、
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